コベアベ

『コベアベ』は、笛から出る音波で相手の神経に作用し、頭で思っていることと逆の行動を取らせるひみつ道具です。見た目は普通の笛ですが、鳴っている間だけ相手の行動を反転させる強力な効果があります。

音色はそこそこ。知らない人が見ても、ただの笛にしか見えません。

思ったことと逆の行動をする

コベアベの音色を聞いている間、人は頭で考えていることと全く逆の行動を取るようになります。

例えば、のび太は部屋の片付けが出来てないことを理由にママからガミガミ怒られています。

そこでママに向かってコベアベを吹くと、今まで怒り狂っていたママは逆にのび太をほめちぎるようになります。

よくお母さんの言うことを聞かなかったわね

お掃除なんかいいから早く遊びにいってきなさい

普段のママからは決して出てこない言葉ばかり。

怒ることと褒めることは真逆の行動です。ママはコベアベの音波により、頭で考えていることと逆の行動を取ってしまったわけです。

この場面の面白さは、言葉だけでなく態度まで変わるところにあります。ママは本心では怒っているはずなのに、口から出る言葉と行動はのび太を甘やかす方向へずれます。相手の本心が残ったまま体の反応だけが逆になるため、見ている側には不自然さがはっきり伝わります。

演奏者には影響なし

コベアベを演奏する人は、コベアベの影響を受けません。

おそらく特殊なフィルターが演奏者の周りに作られ、コベアベから発生する音波を遮断する効果があるものと思われます。

この性質があるから、のび太は道具を使う側として動けます。もし演奏者にも効果が出るなら、吹きたいと思った瞬間に吹けなくなるなど、道具として成立しません。使用者だけが影響から外れる設計になっている点は、かなり都合がよく、同時に悪用しやすい部分でもあります。

演奏中のみ効果がある

音波で行動を制限するため、常にコベアベを吹き続ける必要があります。

コミックの中でのび太は、コベアベをしずかちゃんに見せようと家を訪問します。

ところが強盗がしずかちゃんの家に押し入っている現場に偶然遭遇してしまい、のび太はコベアベを使って強盗を警察まで連れていくわけです。

コベアベを吹いている間は強盗は素直におとなしくなりますが、笛にツバがたまって音が出なくなった途端、のび太に襲いかかるシーンが描かれています。

このことから、コベアベの音波を聴いた人は音波の影響が残っている間のみ行動が制限され、音波が遮断されると正常な状態に戻ることがわかります。

効果が持続しないのは弱点ですが、道具としてはバランスが取れています。いつまでも相手を支配できるわけではなく、使う側が演奏を続けなければなりません。のび太のように体力も集中力も長く続かないタイプが使うと、途中で失敗する危険が高くなります。

行動は意識下・無意識下の両方

コベアベの音色を聴くと、ほとんどの人は無意識のうちに真逆の行動を取ります。

しかしドラえもんは自分の体が意思に反して動いてしまうことに抵抗を示しています。

お風呂に入ろうとしたドラえもんにコベアベを聴かせるのび太。

お風呂に入りたい気持ちとは逆に、体が勝手にドブに向かって走り出す状況になったドラえもんは、やめろと抵抗を示しています。

ひみつ道具のコベアベ
体が勝手に反応する

ドラえもん1巻「コベアベ」P61:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄著

この差はどこからくるのか、作中では明確に解説されていませんが、その時に意識している意思の強さなどが影響しているのかもしれません。

人間のママや強盗は、かなり自然に反対の行動を取っています。一方でドラえもんは、体が動いてしまっても違和感を自覚しています。ロボットだから抵抗できるのか、意思が強いからなのかは断定できませんが、コベアベの効果が完全な洗脳ではないことは読み取れます。

強盗相手に使える危険な道具

コベアベは、のび太が強盗を警察へ連れていく場面で役に立っています。逃げたい、暴れたい、のび太を襲いたいという相手の考えを逆転させれば、結果としておとなしく連行できるからです。

ただし、これは相当危険な使い方でもあります。笛が止まれば効果が切れ、相手はすぐ通常の行動に戻ります。強盗のような相手に使うなら、警察へ引き渡すまで一瞬も音を切らせません。笛にツバがたまるだけで破綻する作戦なので、実用性は見た目ほど安定していないです。

また、相手が何を考えているかを正確に読む必要もあります。逃げたい相手なら逆に近づいてくるかもしれませんが、すでに相手が別のことを考えていれば予想外の行動になる可能性があります。反対の行動を取らせる道具は、単純に見えてかなり扱いが難しいです。

似た道具と比べる

コベアベは、相手の行動を操る道具として見ると『人間あやつり機』や『人間ラジコン』に近いところがあります。ただし、直接命令するのではなく、相手の意思を反対方向へずらす点が違います。

命令型の道具なら使用者が具体的な行動を決めますが、コベアベは相手の頭にある考えが出発点です。そのため、相手の内心に依存するぶん結果が読みにくいです。のび太が便利に使っているように見えて、実際にはかなり不安定な制御方法です。

また、音で作用する点では『ムードもりあげ楽団』のような音楽系の道具とも比べられます。ムードを変える道具は場の雰囲気を動かしますが、コベアベは行動そのものを逆転させます。音の力で人を変えるという意味では同系統でも、危険度はかなり高いです。

同じ行動操作でも、コベアベは命令を覚えさせたり、遠隔操作したりする道具ではありません。相手が今まさに思っていることを材料にするため、使用者が相手の内心を誤ると結果もずれます。怒っている相手をなだめるには便利ですが、相手が何をしたいのか読めない場面では予測しにくい道具です。

その点で、コベアベはのび太向きのようでいて、実はのび太には扱いづらい道具でもあります。のび太は目先の困りごとを解決するために吹きますが、効果が切れた後のことまでは深く考えません。強盗の場面のように、途中で音が止まるだけで状況が一気に悪くなるため、使う側の計画性がかなり問われます。

もし実現すると?

コベアベが実現すると画期的な発明になることは間違いありません。

行動を支配することができるようになるため、例えば大型スピーカーでコベアベの音色を増幅させ、戦争をしている地域に流すと争いをストップさせることができます。

音色が続く間だけ効果が持続するため、争いが収まっているスキを狙って武器を取り上げしまえば、それ以上戦うこともできなくなりますね。

笛の形状にこだわる必要もありません。

重要なのは音波だけなので、将来的にはボタンを押すだけでコベアベ音波が発生する道具に進化するかもしれません。

一方で、現実に近づけて考えるほど問題も大きくなります。本人の意思と反対の行動を強制する道具なので、たとえ平和目的でも自由な意思を奪うことになります。犯罪の抑止に使えるとしても、誰がどの範囲で使うのかを決めなければ、簡単に支配の道具になってしまいます。

コベアベの面白さは、笛という身近な形に、人の意思を反転させる怖い効果が入っているところです。短い話の中でも、のび太のずるさ、道具の便利さ、効果が切れた時の危険がはっきり出ています。

道具名も独特です。意味を知らないまま聞くと不思議な響きですが、効果を知った後は、普通の笛ではない異物感が名前にも残ります。ドラえもん初期の道具らしく、見た目はシンプルでも、使うと日常のルールがひっくり返るところに味があります。

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