うそ発見器は、マイクを向けるだけで相手のことばがうそか本当か瞬時に判定できる道具です。診断結果がマルかバツかの2択しかない潔さが、この道具の魅力のひとつです。
パパとママのプロポーズ大作戦
コミック1巻「プロポーズ大作戦」のエピソードに登場します。結婚記念日に起こった出来事で、パパとママはのび太に昔のプロポーズの様子を教えてほしいとせがまれ、思い出話を始めます。場所や日にちは合っていたのですが、問題はプロポーズしたときのお互いの様子でした。
それぞれが泣いて求婚したと言い張りますが、泣いたのはキミだという言い合いになり、ケンカが始まってしまいます。そこでドラえもんとのび太は、タイムマシンでプロポーズの現場に行って真相を確かめることになるのです。
ところが、タイムマシンで過去に向かう前の場面でうそ発見器が登場します。ドラえもんが取り出したうそ発見器を使うと、なんとどちらも正しいことを言っているではありませんか! どっちかがうそを言っているはずなのに、わけがわかりません。
律儀に肩ひもをかけるドラえもんがかわいい ドラえもん1巻「プロポーズ大作戦」P143:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
声の波長を分析しているんでしょうが、さすが未来の世界、お手軽に判断できるようになっているんですね。
さすが未来のひみつ道具
うそ発見器は現代でも使われていますよね。警察の捜査で使うような本格的なものから、友達と盛り上がるためのおもちゃに至るまで、幅広く存在するうそ発見器。
そのいずれも、人間の体の一部にセンサーを取り付け、心拍数や発汗からうそをついているか判断するのが基本です。
ところがドラえもんが取り出したうそ発見器は、対象者にマイクを向けて声を拾うだけで簡単に分析しています。声の波長を分析しているんでしょうが、さすが未来の世界、お手軽に判断できるようになっているんですね。
現代の技術で言えば、声紋分析や音声バイオメトリクスという研究分野がこれに近いです。声の周波数や抑揚のパターンを解析することで、感情や緊張状態を推定する技術はすでに研究されていて、一部では実用化も始まっています。ドラえもんが1970年代に描いたうそ発見器のコンセプトが、50年後の現代に少しずつ近づいてきているというのは、改めて藤子先生の先見性に驚かされるところです。
似た方向性の道具として、ソノウソホントという道具もあります。あちらはうそをついた瞬間に自動的に反応するという仕組みで、うそ発見器とは少し異なる使われ方をします。また、うそをついた相手に直接はたらきかけるうそつきかがみも面白い存在です。
診断結果はマルかバツか
うそ発見器で導き出される結果はマルかバツの2択のみです。
相手がうそを言っているか、そうでないかの究極の判断です。子どもでもわかりやすいハッキリした表示方法ですよね。
現代のうそ発見器
今でも使われているうそ発見器ですが、正しくいうとこれはうそを言っているかを見分けるための機械ではなく、記憶の有無を見分ける機械です。
診断を受ける人はセンサーを取り付けられ、全ての質問に対して否定の回答をします。その中に本当の犯人でしか知り得ない答えが含まれていた時、本当は肯定なのに否定と答えることで起こる心拍数の増加や緊張感をセンサーが感知します。
犯人の記憶を1つ1つ辿っていくための機械がうそ発見器なので、ドラえもんのひみつ道具のようにマルバツで単純に答えが出るものではないんですね。
探偵活動に使う道具としては、正直太郎やショージキデンパなども同じ方向性の道具です。うそと本当を見極めるテーマで比べてみると、それぞれの設計思想の違いが見えてきます。また、ホームズセットと組み合わせれば本格的な探偵ごっこができそうです。
実現するとおもしろくなりそう
ドラえもんのうそ発見器が実現すると、色々とおもしろくなりそうなことがあります。
マイクを向けるだけでうそか本当かわかるのであれば、例えばテレビに出ている人の声を拾えば診断できてしまうんですから。
ゴシップネタ
政治家の本音、芸能人の隠し事、コメンテーターの腹の底など、今まで雑誌のゴシップネタになっていたようなことが、うそ発見器を使うと手に取るようにわかってしまうわけです。
恋人の本音チェック
カップルが付き合う前、結婚する前なんかにこっそりお互いの本音をチェックするのにも使えそうです。
ペットの気持ち
動物に対して有効かわかりませんが、動物の気持ちを理解するのにも役立つかもしれません。
うそ発見器と似た道具の比較
ドラえもんにはうそや正直に関わる道具がいくつか登場します。うそ発見器と比べてみると、それぞれの個性がよく見えてきます。
ソノウソホントはうそをついた瞬間に自動的に反応するという仕組みで、うそ発見器とは異なる受動的な検知の仕方をします。その場でリアルタイムに反応するという意味では使い勝手がよく、うそ発見器のようにマイクを向ける手間がない分シンプルです。
うそつきかがみはうそをついた相手に対して鏡が反応するという仕組みで、物理的なリアクションがあるぶん、うそを見破られたことが相手にも明確に伝わります。
正直太郎やショージキデンパは逆に相手を正直にさせてしまう方向性の道具で、うそを検知するのではなくうそをつけなくする、という発想の違いがあります。
この中でうそ発見器は、使い方によって相手に気づかれずにうその判定ができるという点では最もスパイ的な使い方ができる道具です。ホームズセットと組み合わせれば、本格的な証拠収集と並行して言動の真偽も確認できます。
うそ発見器が描かれた意味
コミック1巻というドラえもんの一番初期のエピソードでうそ発見器が登場しているのは、藤子先生が早い段階からこのテーマに関心を持っていたことを示しています。うそと本当という普遍的なテーマは、子どもにも大人にも通じます。
パパとママのどちらが本当のことを言っているのか、というエピソードのシチュエーションは絶妙です。どちらも正直に思い出を語っているのに答えが食い違うという現象は、人間の記憶の曖昧さを突いています。うそ発見器を使ったら両方がマルになるというオチは、うそをついているかどうかと記憶が正確かどうかは別の問題だという深い示唆を含んでいます。
うそをつこうという意図がなくても、人は間違ったことを本当だと信じて話すことがある。そういう人間の認知の限界を、コミック1巻の時点で軽妙に描いていた藤子先生のセンスは、ドラえもんをよく読んでいる人ほど気づくと思います。
タイムマシンで過去に戻って確認するというオチも絶妙です。うそ発見器ではどちらも正直だとわかったので、真相は別の手段で確認しなければならない。ひみつ道具1本で解決するのではなく、別の道具を組み合わせて解決するという展開は、ドラえもんのひみつ道具が万能ではないことを自然に示しています。どんな優れた道具にも限界があるということを、エピソードの構造で描いているのがさすがです。
小型化して実現して欲しい
コミックのコマを見る限り、ドラえもんが肩からぶら下げるほどの大きさがあるうそ発見器。
これが手の平サイズに小型化するか、もっといえばスマホのアプリになってくれれば画期的ですね。
しかし使う場面はよく考えておく必要があります。相手の本音がわかる一方、こちらの本音も相手に筒抜けになってしまうんですから……。



