ドラえもんの役に立たないひみつ道具シリーズの1つ『けんかてぶくろ』。
手にはめると、自分1人でけんかすることができます。
けんかといっても、手にはめたグローブが自分の顔をひたすら殴るというもので、危険極まりない道具です。
けんかてぶくろの存在意義
転んでポケットの中身が散乱したドラえもん。
山のように出てきた道具の片隅にけんかてぶくろがありました。
それをつけたのび太は1人でけんかしてボコボコになってしまったという短い描写で終わりました。
ドラえもん10巻「ねがい星」P139:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
果たしてけんかてぶくろはどういう目的で存在しているのでしょうか?
色々と考えてみましたが、どれもしっくりきません・・・。
殴られ慣れするため
顔をボコボコにして人から殴られることに耐性をつけるのでしょうか?
でも普通に考えたら、いつも殴られ続ける人なんてほとんどいないでしょうし、あまり現実的ではないかもしれません。
顔を変形するため
自分の顔が嫌いな人がボコボコの顔で別人に生まれ変わるために使うのかもしれません。
しかし、ドラえもんの世界には優秀な整形技術も確立していると思われるため、これも現実的ではないかもしれません。
ボクサーの練習用
プロボクサーが反射神経をやしなうため、自分のパンチをかわす練習に使うのかもしれません。
自分の手と顔の距離がとても近いので、完璧にかわすことができれば相当な力が身につくのではないでしょうか。
いじめっこをこらしめるため
例えばジャイアンにけんかてぶくろを渡せば、ジャイアンは自分で自分を殴ることになります。
ジャイアンもこれに凝りてのび太をいじめなくなる?・・・なんて甘いことはないでしょう。
火に油を注いだかのごとく、ますますのび太をターゲットにする可能性が高まります。
余白がドラえもんを構成する
ひみつ道具を上手に使いこなせば、それこそ世界制服だって簡単にできてしまいそうなほどに完璧なものたちばかり。
それを取り扱うドラえもんも卓越した思考力や判断力が伴います。
ところが今回のように、どうしてドラえもんはこんな意味不明の道具を持っているんだろう?という疑問だったり、どこか間抜けな行動や言動を見るたびに、あぁこれがドラえもんなんだなと一定の理解を示すことができます。
なんでも完璧にこなす人よりも、ドジな一面を見せたり愛嬌があるほうが親しみを感じますよね。
藤子先生がそこまで先を読んで無駄な道具を登場させたかどうかは定かではありません。
しかし、わざとツッコミどころを残し、そこから読者の想像力をつかって自分だけのドラえもんワールドを作ることができれば、百人十色のドラえもんが存在することになります。
そういう『余白』が、ドラえもんの不動の人気の秘密なのかもしれませんね。