夢をかなえる道具を出すことでお馴染みのドラえもんですが、実をいうと結構怖い道具もあったります。
今回はそんな道具のひとつ『のろいカメラ』を紹介します。
ドラえもんでさえ使うのをためらうカメラ
のろいカメラは写真を写す機械ではありません。
シャッターを切ると、雷が落ちる時の轟音とともに写した人の人形を作り出します。
これだけでも不吉な空気が全体に漂ってきますね。
ドラえもん4巻「のろいのカメラ」P9:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
しかも実はこの人形、何らかの方法で人形を傷つけたりすると、そのまま被写体となった人に同じ傷や症状が伝わってしまうという恐ろしい代物なんです。
始めこそ、ドラえもんがスネ夫への仕返しのために出したひみつ道具でしたが、出したドラえもん本人ですら使うことをためらってしまうぐらいの恐ろしい道具です。
そうとは知らないのび太が、勝手にカメラを使って人形を作り(自分を含めた野比家4人)、しかもそれををしずかちゃんにプレゼントしてしまいます。
その人形はやがて、近所の乱暴な女の子、ガン子ちゃん(別作品「パーマン」からの客演)とジャイアンの妹・ジャイ子の手に渡り、のび太がカメラの本当の恐ろしさを知った時にはすでに手遅れとなり・・・
ブラックなドラえもん作品の1つ
ドラえもんの中でもとりわけカメラをモチーフにした道具は多いのですが、その中でも極めて異質なひみつ道具です。
人形が受けたダメージが本人に行ってしまい、命にもかかわってしまうというのもまた恐ろしく、色々と実験的かつ、作風にもまだブラックな部分も多かった原作初期ならではの道具とも言えます。
ドラえもん4巻「のろいのカメラ」P12:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
写真でなく立体物を作るカメラという点では「ポラロイドインスタントミニチュアせいぞうカメラ」や「バッジ製造カメラ」がありますが、こちらにはもちろん呪い的要素はありません。
ミニチュアの建造物をつくり、夢の町を創造しよう
ドライなしずかちゃんも見もの
ドラえもんの道具を勝手に使ってしまうのび太はいつものパターンですが、プレゼントされた人形たちを「かわいくない」の一言で、あっさりとジャイ子たちにあげてしまうしずかちゃんも見ものです。
現在の心優しいしずかちゃんのキャラからは考えられないほど、ドライな感じに描かれています。まぁこれはまだキャラが固まってない初期だからともいえますが。
ドラえもん4巻「のろいのカメラ」P11:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
しかし、人形を返してもらいに来たのび太に対し、「もう(ガン子ちゃん達が)壊してるかもしれないわよ」とサラリと言ってしまうあたりは、流石に冷たすぎないかとも思えますよね。
体がバラバラになる恐れもあった
コミック中盤でガン子ちゃんとジャイ子による無邪気な「お医者さんごっご」で、人形に与えられるダメージが野比一家に行ってしまう描写は、ギャグ的な表現ではあるものの、かなり怖く描かれています。
この「お医者さんごっこ」は話が進むにつれどんどん過激になり、終いには「ばらばらにちよう!」と包丁で人形を解体しようとするシーンまであります。
ドラえもん4巻「のろいのカメラ」P16:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ギャグ描写でドラえもん達があわや命を落としかけたりするなど、ちょっと狂気が入ってきますね。
最終的には、ジャイアンの母ちゃんから「子供が刃物いじっちゃダメ!」と至極まっとうな理由で止められ、一安心です。
人形の行く末は?
この恐ろしい呪いの人形たちはドラえもんたちの手で何とか回収され、騒ぎは収まり事件は解決・・・なのですが、回収後の人形はどうなったのでしょうか?
下手に捨てて処分が出来ないし、存在している限り安心はできませんよね?
おそらく何らかの処分方法があるとは思いますが、コミックではそこまで触れられていません。
そういった部分も含めてこの「のろいカメラ」の話は、ほんのりと怖い仕上がりの話になっています。
ちなみに藤子F先生の作品に「丑の刻禍冥羅(うしのこくカメラ)」という、同じくカメラを使って呪いをかける短編がありますが、こちらは写真そのものにダメージを与えるもので、ストーリーも若干後味が悪い仕上がりとなっています。
興味がある人は「ビッグコミック×藤子・F・不二雄 SF短編集 (下)」をぜひ読んでみてください。