おとぎ話の本の中にバッジが入っていて、バッジをつけることで、その話を実体験することができるひみつ道具『おはなしバッジ』の紹介です。
のび太の子孫であるセワシが未来からタイムマシンで送ってきました。
物語を追体験できる
おはなしバッジの題材となるのは「桃太郎」や「花咲じいさん」など、誰もが知っている昔話ばかり。
そのバッジを身につけるだけで、物語そっくりの事象が現実で起こり、物語を追体験することができるという画期的なひみつ道具なのです。
子孫に馬鹿にされるのび太
おはなしバッジと一緒に送られてきた手紙に「未来の幼稚園で流行っているから、お爺さんにピッタリかも」とセワシが書いています。
ドラえもん3巻「おはなしバッジ」P174:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太を軽く見ていると思われますね、これは。
のび太の知性がそれほど高くないから、ひみつ道具を通して少しでも教養を身に付けて欲しいという子孫の願いも同時に込められているのでしょう。
奥が深いおはなしバッジ
お話バッジは水田わさび版のドラえもんにおいて「一寸法師」や「おむすびころりん」など、原作では取り扱われていない題材をもとにし、6年の間に2回もアニメ化されてます。
紙芝居が廃れて民話を知る機会が少なくなっている21世紀生まれの子どもたちに、少しでも伝統的童話に触れて欲しいというテレビ局側の意思もあるように見えます。
しつけにも使えるかもしれない
おはなしバッジは幼稚園向けのひみつ道具とされています。
つまり、バッジを使う対象として小さな子どもを想定しているということですね。
となれば、それほど危険な効果が出ないよう開発側で調整されているのだろうことが、随所で見られます。
コミックではおとぎ話に沿ってジャイアンが懲らしめられるシーンがありましたが、重大な怪我や事故になることはありませんでした。
素行の悪いものにしつけができるひみつ道具だと思います。
ここが変だよ、おはなしバッジ
桃太郎のバッジをつけると、猿・犬・キジの役割を果たす者が登場するはずですが、コミックではキジの代わりに洋服の生地(きじ)が登場しました。
キジは鳥を意味するので、ジャイアンのペットであるポチが犬の役割を担当したのと同様に、コミックの登場人物がインコなどの小鳥を飼っているシナリオにし、登場させた方がよかったのかもしれません(となると、しずかちゃんが適任か?)
猿の役目をジャイアンのおばさんが担当します。
ドラえもん3巻「おはなしバッジ」P175:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太がジャイアンから物を取り返せたのも、そのほとんどはジャイアンのおばさんの威厳によるものだったので、猿・犬・キジのパワーバランスがバラバラですね。
また、終盤において「浦島太郎」のバッジをつけて童話とよく似たような展開をたどるシーンがあります。
竜宮城を喫茶店に例えているのはいささかこじつけがあるように思えますね。
竜宮城は海の底にあるのに対し、喫茶店は海を連想させる場所ではないからです。
最後のケーキの意味
浦島太郎のバッジを使っていたところ、最後にプレゼントをもらうシーンがありました。
開けると煙が出てきてお年寄りになっちゃうかも!?とビクビクしていたのび太でしたが、実は中身はホワイトクリームケーキ。
ドラえもん3巻「おはなしバッジ」P181:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
なぜケーキなんでしょうか。
白い煙を使わなかったことは、何か意味があるんでしょうか。
これについては、作者の藤子先生の優れた想像力がなせるわざだと思われます。
本当の浦島太郎は、最後に煙を浴びてお爺さんになってしまう結末ですよね。
これがホワイトクリームケーキでは、童話の結末と何の関連性もないと考えてしまう人も少なくないでしょう。
ただ、ホワイトクリームケーキを眺めている時に、背後から頭をケーキに押し付けられてしまうと、顔がホワイトクリームで真っ白になり、髪の毛が真っ白なお年寄りを連想させられると思います。
そう、想像の域を脱しませんが、これが最後にケーキが描かれていた理由だと思われます。
物語を楽しもう
おはなしバッジをつけると、童話の中の世界観を楽しむことができます。
そのため、「桃太郎」や「浦島太郎」みたいなメジャーな話はともかく、「お菊の皿」や「おいてけ堀」みたいな比較的マイナーなおとぎ話を聞いたことない人にはピッタリ!
本を読んで話の内容を掴めなくても、おはなしバッジを身につけさえすれば疑似体験できちゃうんです。
学習用教材としても優れているひみつ道具と言えるかもしれませんね。