ペタリ甲板

ペタリ甲板は、イルカの背中にペタリとくっつけるとボートや潜水艦のような役割を果たすひみつ道具です。取り付けた状態で人が近づくと体が縮小してボートに乗り込む仕組みになっており、イルカの行くままに海の探検を楽しめます。

新しい乗り物登場

スネ夫のヨット自慢を聞いたのび太はヨットに乗りたくて仕方ありません。

ドラえもんはイルカを探す機械でイルカを見つけ、ペタリ甲板を取り付けます。

ペタリ甲板
シュールな絵である

出典:ドラえもんプラス6巻「ペタリ甲板」P57:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

斬新な乗り物を楽しんでいたドラえもんとのび太ですが、実はこのイルカが群れからはぐれてしまった迷子であることを突き止めます。

空からイルカの群れを見つけ、無事に仲間のもとへ返すことに成功したのでした。

乗り物として楽しんでいたはずのイルカが実は寂しい思いをしていたと知り、のび太たちがその悩みを解決しようとするという展開は、ドラえもんのエピソードの中でも特に心温まる部類に入ります。乗り物として使いながらも生き物の気持ちに寄り添うという、ひみつ道具の使い方の理想的なあり方を示しています。

スネ夫への対抗心という些細な動機から始まった海の冒険が、群れからはぐれたイルカを助けるという大きな目的に変わっていく展開は、のび太の本質的な優しさが表れています。道具を使って自分が楽しもうとしていたのに、いつの間にか困っている生き物を助ける方向に向かっていく。これがドラえもんの物語の魅力であり、ひみつ道具を通じて人間としての成長が描かれています。

イルカを乗り物にします

ペタリ甲板はイルカの背中にペタリとくっつけるボート型のひみつ道具です。

取り付けた状態で人が近づくと体が縮小してボートに乗り込み、イルカの行く海の探検を楽しむことができます。

甲板でのんびり海の旅を楽しむことができますが、イルカは海に潜りますので、基本的には室内で過ごしたほうが安全です。船の旅と違い風は感じられませんが、イルカの移動速度で海の中を進む感覚は通常の船とは全く異なる体験でしょう。

ペタリ甲板
中から楽しむのが安全

出典:ドラえもんプラス6巻「ペタリ甲板」P59:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

イルカが潜水すると潜水艦のような状態になるため、外にいると海中に引き込まれてしまいます。しかし中にいれば潜水艦の乗客のように海中の景色を楽しめるわけで、水族館ではなく本物の海の中を移動しながら観察できるという、この上ない体験が待っています。ペタリ甲板の内部は気圧が一定に保たれていると考えられますが、作中では詳細は描かれていません。

エサで進路を誘導

イルカの進路を決めるにはエサで誘導します。

進みたい方向にエサを出現させ、イルカを海中で意のままに操ることができます。

エサは海水の成分を合成した特別なものを使っています。

エサで生き物を誘導するというシンプルな方法は、高度な技術を使わなくても機能するという点で合理的です。22世紀の道具でありながら、生き物との関係は古典的な方法で築くというのは、藤子先生の自然と技術のバランスへの感覚が感じられます。ハーメルンのごきぶりふえのように音で誘導する方法とは対照的に、ペタリ甲板はより生き物の自然な行動を尊重した設計になっています。

エサを使った誘導は、イルカが自らの意志でエサを追いかけるという形を取っているため、強制的に動かすのとは根本的に異なります。イルカは自分の判断でエサに向かって泳ぐわけで、その延長線上に乗客を運ぶという行為が生まれます。この設計の巧みさは、ひみつ道具の開発者が生き物の心理と行動をよく理解していることを示しています。

イルカの意思を尊重する

イルカ虐待のようにも思えるひみつ道具ですが、もしイルカが不快な気持ちを感じるとペタリ甲板は機能しない仕組みになっています。

また、デッキからはイルカが何を考えているのか思考を覗き見ることも可能で、イルカに配慮した設計になっています。

生き物の意思を尊重するという設計は、単なる乗り物道具を超えた倫理的な配慮を感じさせます。乗り物として動物を使うという行為は一歩間違えると動物虐待になりますが、ペタリ甲板はそのリスクを設計段階で排除しています。イルカが嫌がれば機能しないという仕組みは、使う側と使われる側の双方が合意した状態でのみ機能するということを意味しており、22世紀の道具の成熟した倫理観を示しています。

さらに、デッキからイルカの思考を覗き見ることができるという機能は、人間とイルカのコミュニケーションを一方的でなくする効果があります。イルカが何を考えているかを知ることで、イルカが不快に感じているサインを早めに察知し、適切な対応ができます。これは乗り手とイルカの双方にとって安全で快適な旅を実現するための重要な機能です。一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションを前提にした設計が、ペタリ甲板の先進性を示しています。

安全性も(おそらく)確保されている

イルカは深くて100mほど潜水するといわれていて、ペタリ甲板に入った人も同様に水圧の影響を受けるはずです。

おそらく未来の技術によりペタリ甲板内部の気圧は一定に保たれ、内部の安全も確保されているものと推測されます。

ペタリ甲板がイルカのみを対象としているか定かではありませんが、仮にクジラに取り付けようものなら彼らは深度3,000mまで潜ることもあるため、水圧の影響はイルカの比ではありませんよね。クジラの旅に同行できるとすれば、それはそれで夢のような体験ですが、安全面のリスクも相応に大きくなります。ひみつ道具は使い方の自由度が高い反面、リスク管理は使い手に委ねられている部分もあり、それが面白みでもあり危うさでもあります。

同じコミックプラス6巻に登場するプカリクリームは水に沈まなくなるクリームで、海遊びという同じテーマを持ちながら全く異なるアプローチの道具です。プカリクリームが体そのものを水の上に浮かせるのに対し、ペタリ甲板はイルカという生き物を通じて海中を移動するという違いがあります。どちらも水との関係を変えるひみつ道具ですが、その方向性は対極にあります。

イルカを探す機械と組み合わせることで初めて使える道具であり、単体ではイルカがいなければ何もできません。こうした道具間の依存関係は、ドラえもんのひみつ道具の世界観に深みをもたらしています。ペタリゴンドラはペタリ甲板と名前が似ていますが、空飛ぶイルカに取り付けるという全く別の道具です。同じペタリという名前を持つ道具が複数存在するのは、このシリーズが貼り付けるという発想を軸にした道具群を展開していることを示しています。

通常の乗り物道具、たとえばタケコプターやフワフワオビが個人の移動手段であるのに対し、ペタリ甲板は複数人が乗れるボート型というスケールの違いがあります。生き物と協力して旅をするという体験は、単純な移動手段を超えた特別な価値を持っており、この道具ならではの魅力といえます。コミックプラス6巻のエピソードの中でも、特に海と自然の雄大さを感じさせる道具として印象的な存在です。

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