うつしぼくろ

うつしぼくろは赤と黒のほくろで構成されるひみつ道具です。赤いほくろを付けた人の性質を、黒いほくろを付けた人にコピーすることができます。性格だけでなく行動や仕草までそっくりになるという、非常に強力な変身効果を持っています。コミックプラス6巻「うつしぼくろ」に登場し、ジャイアンのミーティングから逃れようとしたのび太が使い始めるエピソードです。

ジャイアンをおとなしくさせろ

ジャイアンズ(ジャイアン率いる野球チーム)の成績不振を受けて2時間みっちりミーティングが始まります。

殴られることを恐れたのび太はドラえもんから「うつしぼくろ」を借り、おとなしい乙梨さんの性格をジャイアンに移そうとします。

うつしぼくろ
自分の性格を移せばよかったのに。

出典:ドラえもんプラス6巻「うつしぼくろ」P83:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ところが片方のほくろがいろいろな動物に付いてしまい、ジャイアンはタコのようになってしまったのでした。

うつしぼくろ
恐怖の動きである

出典:ドラえもんプラス6巻「うつしぼくろ」P88:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ジャイアンをおとなしくしようとしたはずが、逆に動物の性質が混入してしまうという予想外の展開です。正確に使えば強力な道具が、少しの不注意で取り返しのつかない状況を生むという点は、うつしぼくろの扱いの難しさを示しています。ほくろを正確に目的の人物に取り付けるという、一見シンプルな使い方に高い精度が求められる道具です。

もし乙梨さんの性格がジャイアンに完全にコピーされていたとすれば、2時間のミーティングはどうなっていたでしょうか。普段の乱暴さが消えておとなしくなったジャイアンというのは、チームメンバーにとっても驚きの光景だったはずです。しかし動物のほくろが混ざったことで、ジャイアンがタコのようにぐにゃぐにゃになってしまったのは、のび太の計画が完全に崩れた瞬間でした。

性格をコピーします

うつしぼくろは赤いほくろと黒いほくろのセットです。

赤いほくろを付けた人の性格が黒いほくろを付けた人にコピーされる効果があります。

一番のネックはほくろを相手に取り付けるところですね。

性格をコピーする道具という意味では、コピーロボットが外見まで丸ごとコピーするのとは対照的です。コピーロボットは外見・性格・記憶すべてが複製されますが、うつしぼくろは性格という内面的な要素だけを別の人に移すという、より繊細なターゲットを持った道具です。全部コピーするのではなく、性格だけを選んで移せるという点では、コピーロボットより用途が限定的ながら、逆にその限定された用途においては非常に使いやすい設計といえます。コピーロボットを使うには本人が鼻を押す必要がありますが、うつしぼくろは相手に知られずに使えるという点でも性質が異なります。

行動や仕草もそっくりに

うつしぼくろを使うと性格だけでなく行動や仕草までそっくりになります。

特に動物にほくろが渡ってしまった時はそれが顕著になり、ネコのように毛を逆立てたり、タコのように体がぐにゃぐにゃになるなど、身体的特徴まで変化してしまうのです。

これは道具の効果が予想以上に深いところまで影響を及ぼすことを示しています。性格だけが変わると思っていたら、その性格を持つ生き物の身体的特徴まで変化するという副作用は、使い手にとって予測不能な危険をはらんでいます。あべこべクリームのように性質を逆転させる道具と比べると、うつしぼくろはコピー元とコピー先が明確に分かれているため、使い方はより計画的に見えますが、実際にはコントロールが難しい道具です。

動物の性格が混入すると身体的特徴まで変わるという点は、ドラえもんのひみつ道具の中でも特に奇妙な副作用のひとつです。人間の性格と動物の性質が同じメカニズムで処理されるという設計思想は、生命を構成する何らかの本質的な要素を変化させているということを示唆しています。22世紀の技術がどのように性格をコピーするのかは謎ですが、その仕組みが動物にも適用可能なほど汎用的であるということは、生き物の本質に関わる技術を使っているのかもしれません。

うつしぼくろは使い方次第では非常に有用な道具にもなります。例えば優秀なリーダーの性格を自分にコピーすれば、その人の判断力や統率力を短期間で身につけられるかもしれません。しかし自分が変わることで生じる周囲との関係の変化や、元の自分に戻った時の違和感など、性格を変えることの倫理的な問題は残ります。便利な道具ですが、人の本質に関わるだけに慎重に扱うべき道具でもあります。

目立たない場所に取り付けるのが効果的

のび太は「うつしぼくろ」を乙梨さんの顔に取り付けてしまったため、鏡ですぐにバレてしまいました。

うつしぼくろ
ネコというよりトラである

出典:ドラえもんプラス6巻「うつしぼくろ」P87:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

皮膚に直接取り付けないと効果が出ないとすると、例えば首の後ろ側に取り付けて自分では気づかない場所にするなど工夫が必要です。

赤いほくろ(性格のベースとなる人)は黒よりも目立ってしまうため、特に注意深く取り扱うべきですね。

こっそりと使うためには相手に気づかれずにほくろを貼り付けるという技術が必要で、のび太のような不器用な人間には向かない道具かもしれません。使う側のスキルと判断力が結果を大きく左右するという点で、うつしぼくろは道具の性能よりも使い手の力量が問われる稀な道具といえます。

また、赤いほくろをつけた人は自分の性格がコピーされていることに気づいているのかという点も気になります。赤いほくろをつけられた乙梨さん自身は、自分の性格がジャイアンに移っていることを知らないわけですが、何らかの違和感を感じるのかどうかは描かれていません。性格をコピーされる側にとっての影響が不明なのは、うつしぼくろの謎の一つです。

回収が困難

ほくろを取り付けた人を身近で観察できるならまだいいですが、動物や普段付き合いのない人に取り付けてしまった場合、回収は非常に困難です。

ほくろに気づいて捨てられてしまったり、延々と気づかないまま生活が続いたり、それはケースバイケースですが、どうせ使うなら何が起こっても即対応できる近い場所に相手がいることが理想的でしょう。ほくろが動物に渡ってしまったジャイアンのケースでは、まず動物たちを捕まえてほくろを回収するという手間が生じます。野良猫やタコなど、動き回る生き物を相手に回収作業を行うのは相当な苦労を伴います。

同じコミックプラス6巻のガチガチンも性格を変える道具ですが、ガチガチンは飲ませることで効果が出るのに対し、うつしぼくろはほくろを貼ることでコピーが起きるという違いがあります。また、ガチガチンが飲んだ人を真面目な方向に変えるという一方的な変化であるのに対し、うつしぼくろはコピー元とコピー先を選べるという自由度があります。ガチガチンが使った人を真面目にするという一方向の変化であるのに対し、うつしぼくろはコピー元となる人物を選べるという自由度があります。標本採集箱と同様、この巻には人間の性質に関わる道具が充実しており、コミックプラス6巻のテーマの多彩さが感じられます。

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