自分そっくりの風船をつくり、身代わりとして動かすことができるあやつりそっくりふうせん。遠くから安全に操作できる身代わり道具ですが、自分の行動がすべてそのまま反映されるという油断できない特性も持っています。見た目は完全に本人そっくり、でも実体はただの風船というギャップが面白い道具です。
のび太の風船、一大事!
自分の姿をした風船に寒空の下どら焼きを買いに行かせていたドラえもん。それを見たのび太も自分の風船を歩かせてみることにします。風船とはいえ見た目はのび太そのものなので、街中でもまったく違和感なく動き回ることができます。
頭にミラーを取り付ければ風船が見る景色を自分で確認しながら操作することが可能です。風船が殴られても痛くも痒くもないのび太でしたが、自分の行動と風船の行動が連動していることを忘れ、うっかりトイレに行ってしまったのです。その姿を見てしまったしずかちゃん!果たしてどうなるのか・・・
かんたん操作です ドラえもんプラス3巻「あやつりそっくりふうせん」P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドッペルゲンガー参上
あやつりそっくりふうせんは膨らませた人そっくりの姿になります。かつ、頭にミラーを取り付ければ風船が見る景色を自分で確認しながら操作することが可能です。風船になにかあっても本人は痛くも痒くもなく、遠く離れた場所から安全に身代わりとして使えます。
コピーロボットが自分の意識を完全にコピーして動くのと違い、あやつりそっくりふうせんはあくまでも遠隔操作で動かす仕組みです。意思疎通はできませんが、見た目は完全に本人そっくりになります。コピーロボットが意識や記憶まで再現する精密なコピーであるのに対し、あやつりそっくりふうせんは外見と動作だけを模倣する割り切ったアプローチといえます。
またかくれマントのように姿を消して隠れるのではなく、むしろ堂々と自分そっくりの姿で場に存在させる点がユニークです。透明になることで危険を回避する道具が多いなか、あやつりそっくりふうせんは逆に存在を見せながら身を守るという発想の転換が面白いところです。
視界は狭いが状況の把握は可能 ドラえもんプラス3巻「あやつりそっくりふうせん」P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
行動が全て反映される
あやつりそっくりふうせんを操っている自分の操作はすべて風船に反映されてしまうので注意が必要です。のび太はうっかりトイレに行ってしまい、のび太の姿をした風船が道のど真ん中で、しかもしずかちゃんの目の前でオシッコをする大失態を犯してしまったのです。
頭のミラーを適宜とりはずして使い分けることが必要ですが、トイレのような場面では当然ミラーも外してあるため、風船がどんな状況に置かれているかも把握できていません。遠隔操作の難しさと盲点がよく表れているシーンです。
ヒトマネロボットが持ち主の動きをそのままコピーして動く道具であるのと近い発想ですが、あやつりそっくりふうせんは姿まで完全に本人そっくりになる点がより高度です。また、ヒトマネロボットは物体が動きを真似る設計なのに対し、あやつりそっくりふうせんは本人が動くことで風船が連動するという逆方向の仕組みになっています。
この特性は使いようによっては面白い活用法もあります。自分が安全な場所にいながら、風船を使って危険な場所の様子を探ることができます。とうめいマントと組み合わせれば、風船を囮にしながら自分は見えない状態で様子をうかがうという高度な戦術も可能かもしれません。
会話はできません
あやつりそっくりふうせんの欠点は会話ができず、相手の声も聞こえないことです。ボディランゲージを駆使すれば意思疎通は図れますが、相手の声も聞こえないのでは完全な身代わりとして使うにはちょっと難しいシーンもあるでしょう。
会話できればいいのだが・・・ ドラえもんプラス3巻「あやつりそっくりふうせん」P110:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
声のやり取りができないとなると、人間関係が絡む複雑なシチュエーションでは使い勝手が大きく制限されます。授業中に席を埋めておく程度の用途であれば十分機能しますが、会話が求められる場面では本人が出向く必要があります。
遠くに身代わりを置きながら安全に操るという発想は、かげとりもちで影だけ動かすのとは異なり、立体的で実在感がある点が優秀です。影はどこまでいっても平面的ですが、あやつりそっくりふうせんは立体的な風船として存在するため、周囲から見て違和感が少ないというメリットがあります。
使いどころを誤ると大変な目に遭うことになりますが、うまく活用すれば危険な場面での身代わりとして大きな力を発揮します。自分の行動が全て反映されることを忘れずに、風船の現在地と自分の行動を常に意識しながら使うことが、あやつりそっくりふうせんを活かす最大のポイントです。身代わり系の道具のなかでも、見た目のリアルさと操作の手軽さを兼ね備えたユニークな一品といえます。
あやつりそっくりふうせんの活用場面
身代わりとして使える場面は意外と多く存在します。例えばジャイアンに呼び出された時、本人の代わりに風船を送り込んで様子をうかがうことができます。殴られても痛くないし、ジャイアンが怒りをぶつけている間に本人は安全な場所で次の対策を考えられます。
ただし、会話ができないという欠点が大きく響く場面もあります。ジャイアンが何かを話しかけてきた場合、風船は何も答えられないため、すぐにバレてしまう可能性があります。それでも物理的なリスクを最小化できるという意味では、危機管理ツールとして一定の価値があります。
未来の世界ではこうした分身技術が当たり前になっている可能性もあります。遠隔地にいながら本人そっくりの存在を送り込み、会議やイベントに参加させるといった用途も将来的には現実的かもしれません。ドラえもんのひみつ道具の多くが現代技術の先取りをしているように、あやつりそっくりふうせんも遠隔プレゼンス技術の原型とも見ることができます。ヒトマネロボットと組み合わせれば、見た目だけでなく動作の精度もより高められるかもしれません。
そもそも、自分そっくりの存在を外に出して自分は安全な場所に隠れているという発想は、身代わりという文化に根ざした非常に人間的な欲求から来ています。歴史的にも影武者や替え玉という概念は古くから存在しており、あやつりそっくりふうせんはそのひみつ道具版といえます。違うのは、自分がリアルタイムで操作できるという点と、バレた場合でも実際の身体的被害がないという点です。風船なので殴られてもへこんで終わりですが、本人には何のダメージもありません。現実の影武者が身体的リスクを負うのとは大きく異なる点です。





