動物や植物が人のように意思を持って話したり動いたりするように見える『ファンタグラス』。
心優しいのび太の成長が見られるエピソードです。
のび太の内面的な成長
虫かごに自生していたタンポポを無慈悲に捨てようとするのび太にドラえもんは『ファンタグラス』を出します。
これをかけると、動物や植物がまるで人のように見え、童話の世界にいるような錯覚に陥るのです。
もちろん動物や植物が本当に話しているわけではなく、『ファンタグラス』をかけている人が心で思っていることが言葉として聞こえてくる仕組みなのです。
ドラえもん18巻「タンポポ空を行く」P178:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
タンポポとの空想の会話を楽しむのび太は、ジャイアンやスネ夫の野球の誘いを断り続け、だんだん仲間はずれにされます。
自分にはタンポポさえいればいいとまで考え始めたのび太。
ところがタンポポの子ども(=綿、種子)が外の世界に恐怖心を持ちながらもがんばって巣立つ姿に感動し、自分ももっと成長する必要があることに気付きます。
『ファンタグラス』を通じ、のび太は内面的な成長を果たすのでした。
ファンタグラスは心を映す鏡
『ファンタグラス』を通して見える世界はグラスが作り出した世界観であり、使う人の心を反映します。
動物たちが実際に話しているわけじゃないですし、植物が実際に語りかけてくることもありません。
ドラえもん18巻「タンポポ空を行く」P180:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
あくまでものび太の心で考えていることが起こっているのにすぎないのです。
水を欲しがる庭の木々や草花は、のび太が心の奥底で考えていることです。
タンポポから一生懸命飛び立とうとしている種子の懸命さも、のび太が実は心ではちゃんと独立したいという気持ちの現れなのでしょう。
のび太の心が作り出す世界は、のび太のやさしい心そのものが作り出した世界観なのです。
成長するのび太
のび太は自分自身の心と対話しながら成長を続けます。
それが今回はたまたまタンポポを通して描かれているのですが、これがジャイアンに立ち向かう強い勇気であったり、弱い立場のものを懸命に守るのび太の優しさでもあります。
庭のタンポポからたくさんのことを学んだのび太は、今までの彼とは少し違う成長を遂げたのではないでしょうか。