エネルギー節約熱気球

ライターの小さな炎だけで人間を乗せて空を飛ぶことができる、それがドラえもんのひみつ道具エネルギー節約熱気球です。普通の熱気球に比べて熱源がライター一本という驚異的な省エネ設計が特徴で、名前の通り節約にとことんこだわった空の乗り物です。

熱気球の旅

コミックスのドラえもんプラス4巻に登場するエピソード、エネルギーせつやく熱気球で、のび太はスネ夫が乗る熱気球に対抗してドラえもんからこの道具を借ります。スネ夫の熱気球に対して貧弱に見えても、ライターの火があれば十分に飛べるとドラえもんは言い張り、のび太としずかちゃんを乗せて空へと旅立ちます。

普通の熱気球は大量のガスバーナーで熱した空気を気球内に送り込みますが、エネルギー節約熱気球はライター一つの炎でそれを賄ってしまうのですから、省エネ性能は群を抜いています。ドラえもんが129.3kg、のび太が35.0kgとして合計約160kgという体重を、あの小さな炎で支えてしまうわけです。

エネルギー節約熱気球
ライターの火で浮かびます

ドラえもんプラス4巻「エネルギーせつやく熱気球」P131:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ところがのび太としずかちゃんが気球を使っているとうっかり海に出てしまい、ライターのガスが切れそうになるのです。スネ夫の熱気球を追いかけて夢中になっているうちに方向感覚を失い、気づいたら大海原の上という状況は、楽しい旅がいつの間にか命がけの遭難に変わってしまうドラえもんらしい展開です。燃料残量という現実的な問題が空の旅に立ちはだかる、なんとも節約らしいハラハラ展開です。

エネルギー節約熱気球
絶体絶命!

ドラえもんプラス4巻「エネルギーせつやく熱気球」P135:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

2人は着ている服を少しずつ燃やしながらなんとか家に戻ることができました。省エネの代償として、服を燃料にしてしまうというまさかの展開が待っていたわけです。笑えるようで、実は節約という概念のアイロニーをうまくついたエピソードです。道具の名前通りのエネルギー節約を追求しようとした結果、最終的に洋服という代替燃料を消費してしまう顛末は、藤子F不二雄先生の発想の豊かさを改めて感じさせます。

小さな熱源で節約空の旅

エネルギー節約熱気球はライターの小さな火で浮かび上がります。熱気球の原理は気球内の空気を温めて軽くすることですが、通常はかなりの熱量が必要です。それをライター一本で実現してしまうところに、未来のテクノロジーが詰まっています。

同じように空を自由に飛ぶ道具として、タケコプターは頭に装着するだけで空を飛べる定番道具ですが、エネルギー節約熱気球はタケコプターと違って複数人を乗せられるのが大きな特徴です。しずかちゃんとのび太が一緒に乗って空の散歩を楽しめるのは、この道具ならではの魅力です。タケコプターは一人用のため、誰かと一緒に空の旅をするなら気球のほうが圧倒的に適しています。

空を飛ぶ道具としては空とぶじゅうたんも複数人乗りが可能で、開放感のある空の旅が楽しめますが、あちらは燃料切れの心配がないぶん節約感はやや薄いかもしれません。また、空飛ぶワッペンのように体に貼り付けて飛ぶタイプの道具もありますが、景色の見え方という点では気球に乗って上空から眺める体験には敵わないでしょう。

火のキープは工夫が必要

ドラえもんが気球に乗りながら、常に片手でライターを持っている様子から、エネルギー節約熱気球は普通に乗ると手首が疲れ、手元が熱くなってしまうことが予想されます。

エネルギー節約熱気球
腕が痛くなるだろう

ドラえもんプラス4巻「エネルギーせつやく熱気球」P132:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

また、今のライターは安全を考えて着火ボタンが硬くなっているため、長時間押しっぱなしにするのは強い握力が必要です。簡易的な台を作ったり、火が消えないように周りに小さな囲いを作るなどすれば安心でしょう。飛行中に強風が吹いた際にも炎が消えないよう風除けを用意しておくことも重要です。

旅行中に火が消えて一気に降下してしまうリスクを考えると、空の旅に出る前に入念な準備が求められる道具でもあります。燃料の確認や予備のライターを複数用意しておくのは最低限のマナーです。またライターのオイル残量を出発前にしっかり確認し、余裕を持った燃料を確保してから乗り込むことが大切です。のび太のように夢中になって飛び続けると、気づいたときにはガス切れという悲劇が待っています。

省エネという言葉には安心感がありますが、この道具の場合は余力の少なさでもあります。小さな火で浮くぶん、火が弱まった時の逃げ道も少ない。安く飛べることと安全に飛べることは別問題だと分かるのが、この気球の面白いところです。

熱源を確保しよう

飛行中のすべての熱をライターで供給するのはエネルギー効率が悪すぎます。せめてろうそくやランタンを使うべきで、例えば防災用のろうそくは10時間ほど燃え続けるわけなんですね。

他にも、ライターはオイルを補充できるタイプに変えたり、大量のろうそくを持ち込んでおくなど準備が大切です。空を飛ぶ道具としてフワフワオビは体を軽くして浮かせるタイプですが、あちらは燃料の心配がなく長距離移動に向いています。

ドラえもんの道具の中でも特に省エネの観点から作られたこの気球は、環境への配慮という面では未来的な発想を持っています。風のロケットのように風の力を利用したり、空とぶふろしきのように布一枚で飛べる道具と比べると、ライター一本で人間を空に送り出すという発想の大胆さが際立ちます。

現実の熱気球は高度なガスバーナーシステムと専門の操縦士が必要で、フライトにかかるコストも相当なものです。それと比較するとエネルギー節約熱気球は確かに節約の名に恥じない経済性を持っています。ただし節約を突き詰めた結果、洋服を燃やすはめになるというリスクは常に念頭に置いておく必要があります。

気球の方向制御も重要

熱気球の大きな弱点のひとつが方向制御できない点です。上昇・下降はできても横方向は風まかせになってしまうのが通常の熱気球の特性です。エネルギー節約熱気球も同様で、のび太としずかちゃんが海に流されてしまったのもこの方向制御のなさが原因のひとつと考えられます。

そこで重要になるのが、同じエピソードに登場するブロージェットの存在です。このひみつ道具を使うことで気球の進む方向を自在に変えることができます。エネルギー節約熱気球とブロージェットはセットで使うことで本来の性能を発揮できるのです。方向制御なしに空を旅するのは、エンジンなしの船で大海原に出るようなものですから、ブロージェットは必需品です。

この組み合わせを考えると、エネルギー節約熱気球は単体で完結する道具ではなく、かなり操縦者の準備に左右される乗り物です。上昇する力はライターで確保できますが、進路を選ぶ力は別に必要になります。燃料、風向き、着地点、非常時の脱出手段まで考えておかないと、空の散歩はすぐ遭難に変わります。省エネであるほど予備の余裕が少ないため、便利さと危険さが近い距離にある道具です。

小さくなる気球もあります

ドラみちゃんのひみつ道具ミニ熱気球(コミック40巻)は線一本で浮かぶ、さらに節約型の気球です。

関連ひみつ道具

自身の体を小さくする必要がありますが、スモールライトさえあればさらに省エネの気球として活躍してくれることでしょう。体が小さくなれば浮力が少なくて済むので、同じライターの火でもより長時間・長距離の飛行が可能になるはずです。

エネルギー節約熱気球はライターという身近な道具を熱源にしつつ、複数人を乗せて空を飛べる画期的な乗り物です。燃料管理という現実的な課題こそあるものの、省エネという概念を極限まで突き詰めた未来のひみつ道具として、ドラえもんの世界観を象徴する一品です。方向制御のためのブロージェットと組み合わせ、十分な燃料を確保した上で、安全な空の旅を楽しみたい道具です。

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