これをつかえば、いつでもどこでもみんながお芝居してくれるひみつ道具『シナリオライター』のお話です。
シナリオライターってどんなひみつ道具?
一見すると文庫本ほどある大きいライターに見えますが、紙に書いたシナリオ(ストーリー)を中に入れ、火をともせば周囲の人間たちがそれに合わせてお芝居をしてくれます。
火をともしている間はシナリオ中に指名されている人間の意思に反して、強制的にお芝居をしてしまうので、相手の意思に反する事もさせることが出来ます。
しかしライターの火を消したり、シナリオが終了すれば、その効果から解放されて、自由に動けるようになります。
コミックでの使われ方
のび太のママの留守をいい事にのんびり過ごしていたのび太に、ドラえもんが強制的に勉強をさせるためにシナリオライターが使われました。
ドラえもん8巻「ライター芝居」P14:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
この後、貯金箱のお金でどら焼きを買いに行かせようとしますが、のび太があまりに嫌がったために、ドラえもんが可哀想に思って終了したこともあります。
それを見たのび太も、自分が主人公のカッコいいお芝居のシナリオを書き、しずがちゃんがヒロイン、ジャイアンとスネ夫が悪役な内容の西武劇じみたお芝居をしようと計画します。
便利だけど思わぬ欠点も
シナリオライターでお芝居をすると、もちろんセリフだって書かれたとおりの事を自動的に喋ります。
ただ、本当にシナリオに書いてある通りに喋るので、シナリオそのものに誤字があるとそのまま読んでしまうことになるんです。
- おじょうさん、はなれてくださいな→おしょうさん、はなれてくだちいな
- これからまっかな血が・・・→これからまっかな皿が・・・
といった感じの変な言い回しになってしまいます。
ドラえもん8巻「ライター芝居」P16:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太が書いたシナリオが誤字だらけだったんですね。
他にも、この回の芝居のラスト「のび太についていく」を「のび犬についていく」と
書いていたのですが、しずかちゃんは空き地にいた野良犬と一緒にどこかに行ってしまうというシュールなオチを迎えるのでした。
この犬は、空き地でジャイアンとスネ夫により、ダックスフンドのように胴体を伸ばす実験をされていた可愛そうな犬で、コミックの中で「のび犬」と呼ばれていたことが原因です。
便利ではある反面、使う人間(が書いたシナリオ)に問題があると思わぬ欠点を生んでしまうようです。
ドラえもん8巻「ライター芝居」P21:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
個人的にこのオチのために用意された「のび犬」というシチュエーションも、たまらなく強引かつシュールな気がします。
シナリオライターの使い道
やはり主な使い道はお芝居ですね。
のび太のような誤字だらけの物でない、きちんとしたシナリオを用意すれば、セリフを間違えたり、芝居の段取りを忘れてしまってもお芝居そのものが破綻する事が無くなりますもんね。
特に舞台でのお芝居では絶対にNGは出せないため、かなり重宝するものではないかと思われます。
ただし、ライターの火を消してしまうとそこでお芝居がおしまいになってしまうので、お芝居の最中は誤ってライターの火を消さないように注意しなければなりません。
現代版「音声読み上げソフト」
シナリオライターのように、誤字があってもセリフを大真面目に読んでしまうという感じは、現在ある音声読み上げソフト(ボイスロイドなど)がそれに近いところがあります。
要するに、使う側の人間がしっかりしていないと、どれだけ優秀な道具や機械であっても、その効果が半減してしまうということです。
シナリオライターはこんなところでも、我々に気付きを与えてくれるのですね。