おおっぴらにウソをついても、それが実現すればウソではありません。
そんな便利なひみつ道具『ウソ800』を紹介します。
※読み方は「うそえいとおーおー」です。
サヨナラしたはずのドラえもんが再び?
コミック6巻「さよならドラえもん」でドラえもんが未来に帰り、涙の別れをしたのび太。
ドラえもんの事が忘れられず、毎日元気がありません。
そんな状況に追い打ちをかけるかのごとく、ジャイアンとスネ夫にまんまと騙されてしまうのです。
「ドラえもんを見た!」
あまりの嬉しさに、ドラえもんの好物のどら焼きを買って待つのび太ですが、実はこれ、2人のエイプリルフールのウソだったのです。
ドラえもんが未来に帰ったことを知っている2人は、のび太をからかってやろうとこんなウソをついたわけです。
ドラえもん7巻「帰ってきたドラえもん」P10:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
精神的にまいっているのび太にとって、このウソはいくらエイプリルフールとはいっても到底ゆるすことができないものだったのです。
驚異のウソ800
ジャイアンとスネ夫に復習を誓うのび太。
のび太は、ドラえもんが最後の最後に残していったひみつ道具『ウソ800』の存在を思い出します。
どうしても辛いことがあったらこれを使えというドラえもんの言葉に従ってウソ800を飲み干し、のび太は家を出ます。
ウソ800を飲むと、言ったことがすべてウソになる効果があります。
例えば、
- 天気は晴れだ→大雨が降り始める
- 母ちゃんに褒められる→こっぴどく叱られる
など。
要するに、叶って欲しいことと逆のことをいえば、自ずとそれが実現してしまうわけです。
こんな便利な道具はありません。
ドラえもん7巻「帰ってきたドラえもん」P13:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラえもんに関するウソで深く傷ついたのび太はジャイアンとスネ夫に復習を果たしますが、どうも気持ちがスッキリしません。
そうです、やっぱりドラえもんがいないと何をやっても虚しいんですね。
家に帰るとママから「ドラちゃんはいた?」と気を遣われるのび太。
「いるわけないでしょ、もう2度と帰ってこないんだから」
ドラえもん7巻「帰ってきたドラえもん」P15:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
帰ってきたドラえもん
のび太が部屋に入ると、そこにはなぜかドラえもんの姿が!
ドラえもん7巻「帰ってきたドラえもん」P16:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
そうです、のび太がママに何気なくつぶやいた「いるわけないでしょ、もう2度と帰ってこないんだから」という言葉。
ウソ800を飲んだ状態でこれを言ったので、ドラえもんが再び現代の世界に戻ってくることになったのです。
「ぜんぜんうれしくない!またずっとドラえもんと一緒に暮らさない!」
のび太はまた大きなウソをついたのでした。
使い方によっては世界をも手に入れることができる
今回はエイプリルフールにまつわる道具として登場しましたが、使い方によってウソ800は物凄く便利な道具である反面、恐ろしい力を持っています。
人間の運命すらも変えられるわけですからね。
よくない心を持った人が手にすると、世界は地獄のような状態になるかも知れません。
正直な人ほどバカを見る道具
言ったことが全てウソになるウソ800。
もしこれを本当に正直な人が飲んでしまうと大変なことになります。
- 人に親切にしたい!→いじわるしてしまう
- 自分はこう思う→それもウソになる
- 戦争をなくしたい!→戦争を推進してしまう
そうなると疑問が残ります。
ドラえもんがなぜウソ800を最後の道具としてのび太に託したのか、ということです。
のび太には不向き?
グズでのろまで勉強ができないのび太ではありますが、彼は決して他人を傷つけたり、陥れようとする人ではありません。
しずかちゃんのパパが語るように、のび太は他人の幸せを願い、不幸を悲しむことができる人間だからです。
そんなのび太がウソ800を使ってもあまり効果的とは思えず、むしろ純粋な心があるせいで逆境に立たされる可能性があります。
コミックでは結果的にジャイアンとスネ夫に仕返しし、ドラえもんが帰ってくるエンディングを迎えました。
しかし、のび太との今生の別れ際で渡すひみつ道具としては物足りさなさがあったかもしれません。
ドラえもん7巻「帰ってきたドラえもん」P12:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
どうせなら『もしもボックス』や『うそつ機』を渡すほうが、似たような効果を期待する道具としてはよかったのかもしれません。
しかし、ドラえもんの立場になって考えてみると、これからいつまでものび太がひみつ道具に頼る人生ではいけないと思ったのかもしれませんね。
「苦しいことがあったら一度だけ僕が助けてあげる。その後は自分の足で立つんだよ」、というドラえもんの優しさだったのでしょうか。