動物の形をしたビスケットを食べると、5分間だけその動物に変身してしまう「動物変身ビスケット」。自分では気づきにくく、鏡を見るか他人に指摘されて初めてわかるという不思議な道具です。
動物の一部の特徴を受け継ぐ
動物変身ビスケットを食べると、まず見た目がその動物に変身してしまいます。たとえばニワトリのビスケットを食べると、姿かたちがだんだんニワトリに変わっていき、トサカが作られたり、鳴き声がニワトリに近づいていきます。
猫のビスケットを食べたのびたは見た目が完全に猫になりましたが、人間のように四足歩行のままでした。動物変身ビスケットを食べても完全に動物に変身できるわけではなく、その動物のわかりやすい特徴が大きく現れるだけで、能力(猫のようにすばしっこくなるなど)を受け継ぐことまではできないようですね。
用途がいまいちわからない動物変身ビスケット
部屋に無造作に置かれていた動物変身ビスケットを勝手に食べて猫になってしまい、困ったのびたを見てドラえもんは「あんなもの勝手に食べるやつがあるか!」と怒ってしまいます。「あんなもの」と言い切るドラえもんの言葉から、この道具の用途がいまいちつかむことができません。おそらく未来の子どもが変身ごっこに使うためのビスケットと推測はできますが、どうしてそれがのびたの部屋にポツンと置かれていたんでしょうか。ひょっとするとドラえもんは、のびたと動物変身ビスケットを一緒に食べて変身して遊びたかったのかもしれません。
見た目はごく普通のビスケットなので間違ってのびたが食べてしまうのも無理はありません。
味は普通のビスケット
のびたのママのお客さんがお菓子として食べても違和感を感じていなかったことから、ビスケットはごく普通の味なんだろうと推測できます。のびたもつまみ食いして何食わぬ顔をしていたぐらいですし、未来の子どもが変身ごっこに使うのであれば、おいしくなくてはいけません。
動物変身ビスケットを現代で使うなら
もし現代に動物変身ビスケットが存在していたら、
- 変身ごっこに使う
- 別々の種類のビスケットを一緒に食べ、何に変身するか確認する
- 変身した動物と一緒に珍しい写真を撮る
- 動物スケッチに使う
などの使いみちが考えられます。
変身ごっこに使う
変身ごっこは一番まともな使いみちでしょう。5分間で元の姿に戻るので、おかしな副作用もなさそうですし、子どもの間で爆発的に人気が出そうです。
別々の種類のビスケットを一緒に食べ、何に変身するか確認する
複数のビスケットを一度に食べると何の動物に変身するんでしょうか?実は一応コミックの中でその答えは紹介されています。のびたのママのお客さんは短時間に4つのビスケットを食べました(ウマ、ニワトリ、サル、カエル)。1つの変身効果が終わると次の動物の変身が始まり、効果が切れると次の動物に変身し・・・という具合に、1つずつの効果があらわれます。このことから、複数の動物の要素がミックスされるのではなく、ビスケットを食べた順番に変身効果が1つずつ出ることが予想されますね。
変身した動物と一緒に珍しい写真を撮る
友達や家族に変身してもらい、その場で記念撮影するとと珍しい写真が撮れます。
動物スケッチに使う
友達や家族に変身してもらい、間近でスケッチする時に使えるかもしれません。動物は本来じっとしているわけではないので、人間が変身した動物であればおとなしくしているでしょう。しかし変身後の見た目は人間の時の要素が強く残るため、リアルな動物スケッチには不向きかもしれません。
空想の動物に変身できればもっと嬉しい
コミックに登場する動物変身ビスケットはウマやニワトリ、サル、カエル、猫、キツネ、ライオンなど、一般的な動物ばかり。どうせなら大長編「ドラえもん のびたの日本誕生」に登場するようなペガサスやドラゴンなんかに変身できると嬉しいですね。動物の能力を1つ受け継ぐような性能があっても楽しそうです。もし現代で実用化されることがあれば、開発者の方々にはそういう点も考慮して研究してほしいものです。
変身時間5分という絶妙な設定
動物変身ビスケットが5分間だけ変身するというのは、非常に考え抜かれた設定だと思います。短すぎるとゲームのように楽しめない。長すぎると生活に支障が出る。5分というのは「試しに体験する」ちょうど良い長さです。タケコプターを使って少し空を飛ぶ感覚に近いかもしれません。遊び道具としての完成度という意味では、この5分制限が絶妙に機能しています。
一方で、もしも変身中に何かトラブルが起きた場合、元に戻るまで5分待つしかないという不便さもあります。猫に変身したのびたが様々な困難に遭うシーンは、変身の楽しさとリスクが表裏一体であることをユーモラスに描いています。ひみつ道具の多くに共通する「便利だけどリスクもある」という藤子・F・不二雄先生の一貫したデザイン哲学がここにも息づいています。
似たような変身系の道具としては、動物ごっこぼうしも動物に変身して楽しむ道具として共通しています。わんにゃんごっこつけ耳は犬や猫の耳をつけてその動物になりきる道具です。より完全な変身を目指すならおおかみ男クリームも面白い存在で、塗ると特定の動物に変身してしまいます。食べることで変身するという発想はウラシマキャンデーのように時間に作用する食べ物とも共通する不思議な発想ですね。他にも変身系道具では変身セットのように装備することで超人になれる道具も登場します。
変身ビスケットはいくつ種類がある?
コミックに登場する動物変身ビスケットには、ウマ、ニワトリ、サル、カエル、猫、キツネ、ライオンなどの動物が確認されています。いずれも比較的メジャーな動物ばかりで、「何の動物に変身できるか」というラインナップが重要なポイントです。未来の子どもが使う遊び道具として考えると、ライオンやウマのような大型動物から猫やカエルのような身近な動物まで幅広く揃えることで、様々な変身ごっこを楽しめるよう設計されているのでしょう。
また、「何種類のビスケットが一袋に入っているか」も気になります。お菓子として出せるくらいの量が入っていたということは、少なくとも数十枚以上はあったと考えられます。変身ごっこを何度も繰り返して楽しむためには、それなりの量が必要ですし、お客さんに出してもおかしくない数が入っていたのでしょう。何種類・何枚入りかが明確になれば、より道具の使い勝手がイメージしやすくなるのですが、コミックではそこまでは描かれていません。
のびたのママの来客を巻き込んだ大騒動
動物変身ビスケットが引き起こした騒動の中で特に印象的なのは、のびたのママのお客さんが次々とビスケットを食べて動物に変身してしまうシーンです。お茶のお供として出されたビスケットが実はひみつ道具だったというシチュエーションは、日常の何気ない場面にSFが入り込んでくるドラえもんならではの展開です。お客さんからすれば、突然自分がウマやニワトリに変わっていくという体験は、どれほど驚天動地なことだったでしょうか。
しかも変身している本人は気づいていないというのがこの道具の恐ろしい(そしておかしい)ところです。変身に気づくのは鏡を見るか周囲の人に指摘されてから。お客さんが次々と変身しながら平然とお茶を飲んでいる光景は、シュールな笑いに満ちています。ドラえもんのひみつ道具が引き起こすドタバタは、こういった「当事者だけが知らない」状況から生まれることが多く、読者だけが全体を見渡せるという構造が巧妙です。


