悪いことをした人から自動的に罰金を徴収する『ばっ金箱』というひみつ道具です。
ばっ金箱
形状は円柱形の電気ポットのような見た目と大きさに、三脚のローラーの付いた脚、眼球のようなセンサーがついています。
叱られる可能性の高い人を自動追跡し、誰かが叱られるとセンサーが反応して、1回につき10円の罰金を徴収します。
本体上部から細い棒状のアンテナが伸び、可動式の触手のようなかぎ爪が本体から出てきて、強制的に対象者のポケットや貯金箱からお金を取り上げます。
容赦なしの、まさに鬼畜。
ドラえもん5巻「ばっ金箱」P67:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
本体上部にある貯金箱のような入口に硬貨を貯めることができます。
子どもたちの民主主義
みんなで楽しくサッカーをしていましたが、ジャイアンの蹴ったボールが有刺鉄線に突き刺さってしまい、使い物にならなくなりました。
実は同様のことは過去から何度もおきています。
誰も新しいボールを持ってきたくありません。
みんなで話し合った結果、みんなで使うボールだからみんなでお金を出し合ってはどうかということになったのです。
ドラえもん5巻「ばっ金箱」P65:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ところが実際のところ、誰もお金を払いたくありません。
そこでドラえもんに相談をしたところ、取り出したひみつ道具は「ばっ金箱」でした。
悪いことをした人から罰金を取ることで、お金を集めようとするこのアイデア、みんなも初めは賛成したのですが、事態は思わぬ方向に進みます。
地獄の果てまで追跡・徴収
叱られた人から罰金を取るシステムを搭載したばっ金箱の追跡機能はかなり優秀です。
叱られそうな人を自動的に検知し、優先的に追跡することで、その機能を最大限に発揮します。
こんな気味悪いロボットに追跡されると、そのプレッシャーに居心地の悪さを感じてしまいますよね。
そして本領はその集金機能。
確実に集金を終えるまでその追跡は止みません。
ズボンのポケットはおろか、自宅の貯金箱までがターゲットとされ、逃れることはもはや不可能と言えます。
ばっ金箱の実現は間近か?
現代風にいうと「AI搭載自動追跡型集金マシーン」といったところでしょうか。
スマート家電や自動運転技術が現実味を帯びてきた昨今、ばっ金箱を技術的に制作できそうな時代を迎えているようです。
とはいえ、実際に制作しようとすると、まだまだ課題山積といえます。
例えば、
- 自動追跡のためのGPSと位置情報の連携
- 硬貨(紙幣)の選別と認証
- 対象者の本人確認(顔モニタリングまたは生体認証など)
- 道路交通法上の扱い
- 事象発生時の証拠保全技術
など。
少し考えただけでも、これだけの数がピックアップされます。
しかし、もし実現化すれば、いわゆる悪事税のような新しい制度として普及する可能性がありますね。
監視される社会のメリット・デメリット
皆さんは誰かに自動追跡をされた経験はありますか?
何をしていてもどこにいても自動的に行動を監視され、罪を犯すとその償いを求められる。
じつは好むと好まざるに関わらず、現代では監視カメラ、生体認証技術の発展、GPSの精度の向上により、この物語の時代とは打って変わって高度な監視社会が実現されつつあると考えられます。
もちろんそれにより犯罪の抑止力が期待できるほか、自動車の車載カメラの普及による運転者マナーの向上なども期待できます。
しかし、どうも誰かに見られている感覚は、気持ちのいいものではありませんよね。
ばっ金箱の今後
ドラえもんの今回の物語では、少年たちの微笑ましい動機からばっ金箱が活躍する暗部に焦点が当たりました。
ドラえもん5巻「ばっ金箱」P71:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
悪事への罰について、きちんと取り立てられる社会の実現を、罰金わずか10円で物語は示唆しているのだと思います。
蛇足ですが、最近誰かの罪の報道とセットでよく話題に登るSNSでの炎上は、ドラえもんでも想定外で描かれていないのでしょう。
もしばっ金箱が実現化されたら、SNSをはじめとするネット社会にまで監視網が広がるのは間違いないでしょうね。