瓶またはペットボトル状のハンディタイプの容器に入った液状と思われる毛はえ薬です。
30分以内に効能が現れ、毛が急成長して生えてきます。
じわじわと毛が伸びてくるのではなく、急激に毛が成長、伸び、急に成長を止めます。
のび太のパパのために
ドラえもん第3巻「白ゆりのような女の子」の回にひとコマのみ登場するひみつ道具です。
のび太の父である野比のび助の少年時代の話がはじまります。
昭和20年6月10日の夕方、当時戦争による空襲が激しくなったため田舎に学童疎開していた時のことだそうな。
一度だけ巡り合った女の子を白ゆりのような女の子と懐かしく語るパパの心情を察し、のび太は女の子を探して写真を撮影してプレゼントしようとタイムマシンに乗って昔の世界にタイムスリップします。
ドラえもん3巻「白ゆりのような女の子」P160:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
一度だけ使われた珍しいひみつ道具
学童疎開先の炎天下の畑仕事に疲れ果て、日射病寸前状態ののび太のパパ(子ども時代)を見たドラえもんとのび太。
パパを木陰に避難させ、のび太が代わりに畑仕事をすることにします。
ドラえもんからひみつ道具「スーパーてぶくろ」を借りて驚異的な速度と仕事量で畑仕事を終えたところ、のび太に災難が降りかかります。
軍人さながらの先生に、戦時下に相応しくないとの理由で長髪を指摘されてしまったのです!
とうめいマントで透明になったドラえもんがこっそりのび太を坊主頭にして、一旦は落ち着いたかのように見えました。
丸坊主になってしまったので、女の子との出会いのシーンを待つ間に「30分できく毛はえぐすり」を頭皮に塗りたくります。
ドラえもん3巻「白ゆりのような女の子」P168:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
その後、パパを探す過程で肥溜めに落下したのび太は、着てきた服を濡らしてしまい、ドラえもんが探してきた女の子の服に着替えるのですが、「30分できく毛はえぐすり」の効果が現れ一気に長髪少女に。
結果、実は女装したのび太本人が、パパの昔の思い出の中の白ゆりの少女というオチでした。
未来の世界ではハゲがなくなる?
このコミックが発売されたのは1974年。
以来40数年たった現在でも、育毛剤・毛髪剤は多くの男性にとっては夢のひみつ道具です。
「30分できく毛はえぐすり」が果たして毛根が死滅してしまったおじさん連中にも効果があるかどうかはハッキリしません。
のび太はもともとハゲておらず、コミックでは丸坊主にしただけなので、毛が生えるというのはなんとなくわかる気もしますよね。
毛根を急激に活性化させる効果があるのか、それともゼロから毛根を作り出す効果があるのか、そこが判明しない限り、過度な期待は禁物です。
でも今の世の中は育毛・植毛の技術が発達しているので、そう遠くない未来の世界、ハゲはいなくなっているのかもしれませんね。
今はこういう育毛剤が有名ですよね。
毛はえぐすりの未来
日本では、薄毛を気にする男性の割合が40代を超えるとおよそ50%とも言われています。
昨今では頭皮を刺激する育毛剤や、AGA治療法も期待されつつあるほか、iPS細胞による毛根再生技術の研究により、2020年以降の近い将来に毛根再生の実用化も取り沙汰されています。
今回のひみつ道具「30分できく毛はえぐすり」は毛根の再生を目的としたものではなく、あくまでも毛髪を短時間で伸ばす道具であったとしても、それはそれで嬉しいもの。
例えば抗がん剤治療の副作用に悩む患者への人毛ウィッグ需要への対応や、美・理容師の技術向上のためのカットモデルの確保などはすぐに思いつく活用方法ですね。
そのほか、現代アートでも人毛を素材に使うアーティストや、身近なところでは、美容院でオーダーした髪型が気に入らない場合に再度カットしなおしてもらえることも考えられます。
30分できく毛はえぐすりが実用化した場合、そのようなことをサービスとして売り出す美容院なども出てくる可能性があります。
一方で、容疑者における逃走用の変身ツールや、いたずらいじめ、YOUTUBERなどのふざけた動画投稿素材などへの規制も必要となるかもしれません。
「30分できく毛はえぐすり」は、他のひみつ道具と比較しても、近い将来の実用可能性が高く、イメージしやすい道具かもしれませんね。