こわしバン

こわしバンは、貼るだけでその物を故障・破損させることができるひみつ道具です。なおしバンと対になる道具で、赤いシール状になっています。

なおしバンとこわしバンの対比

壊れた家のテレビになおしバンを貼ると一発で直り、はしゃぐのびたです。反対の効果を持つこわしバンを掃除機に貼って故障させることもでき、ドラえもんと一緒に遊んでいました。なおしバンで直して、こわしバンで壊すというのを繰り返す遊びは、子どもらしい発想でもあります。道具の効果を試すという行動が、このエピソードでのびたとドラえもんの関係性の楽しい一面を見せています。壊したり直したりを繰り返す遊びは、道具の両面性を体感するという意味では実は理にかなった使い方です。

これに興味を持ったスネ夫がジャイアンの鼻のできものになおしバンを貼ろうとしたところ間違ってこわしバンを貼ってしまい、ジャイアンの顔はグニャグニャに壊れてしまいました。色で区別はできますが、シンプルなシール形状なので混同しやすいのでしょう。スネ夫がジャイアンの顔を誤って壊してしまうという展開は、使い間違いの怖さをコミカルに表現したシーンです。このエピソードでは壊すことが目的ではなく、なおしバンとの対比として登場するこわしバンですが、存在自体のインパクトは強烈です。スネ夫がジャイアンを助けようとして逆に傷つけてしまうという皮肉な展開は、スネ夫の迂闊さを示す場面として笑えます。スネ夫がジャイアンに対してこんな失敗をしてしまうというのは、普段の力関係からすると意外性があります。

こわしバン
ドラえもんの仕業

ドラえもんカラー3巻「なおしバンとこわしバン」P14:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

物を壊し、機能を失わせる

こわしバンは物を壊し、正常だったものを異常にし、本来の性能を発揮できなくさせるひみつ道具です。なおしバンは青色、こわしバンは赤色なので色で区別するしかありません。シールという形状は手軽に使える点が利点ですが、ポケットに入れた時に混在してしまうというリスクも生まれます。スネ夫の失敗はまさにそのリスクが現実になった例です。色で区別はできると言っても、焦った時や暗い場所では色の確認がしにくいこともあるでしょう。二種類の道具を常に携帯するには、それなりの管理が必要になります。

こわしバンは貼ってはがせるシール状なので、いつでも手軽に使うことができます。ポケットに数枚しのばせておいてサッと貼る、目立たない場所にサッと貼る、といった使い方ができます。この手軽さゆえに悪用されやすい点も否めませんが、エピソードではあくまでも遊びや笑いの文脈で描かれています。ドラえもんが掃除機に貼って遊んでいたシーンが示すように、こわしバン自体は悪意のある道具ではなく、使う人の意図次第です。道具そのものに善悪はなく、使う人がどう扱うかで道具の価値が決まるというのは、ドラえもんのひみつ道具全般に共通するテーマです。こわしバンはその点を特に明確に示してくれる道具です。

こわしバン
壊れっぷりがすごい

ドラえもんカラー3巻「なおしバンとこわしバン」P17:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

あえて壊したい場面を考えると

こわしバンが活躍するシーンとして、工場などで機械をあえて故障させ、本物のトラブルを想定した訓練に役立てるというのは現実的な使い方です。実際の故障と同じ状況を人工的に作り出し、対応策を練る際に活用できます。設備の修理部隊が本番さながらの訓練を繰り返すことで、いざという時の対応力が上がります。現実のトラブルを待たずに準備できるというのは、インフラ管理の現場では重要なことです。故意に壊してそれに対処するという訓練の発想は、現実の世界でも危機管理の分野で実践されています。

なおしバンとこわしバンを両方持っていれば、壊したものをすぐに直すという芸当もできます。ドッキリ的な使い方として物を壊しておいて驚いている間にさっと直すというのも子どもらしい発想ですが、ドラえもんの世界観とはよく合っています。壊すという行為と直すという行為の間を自由に行き来できるのは、このセットならではの強みです。なおしバンだけ、こわしバンだけでは実現できない組み合わせの妙が、二つの道具をセットにした設計の意図を感じさせます。

ビッグライトとスモールライトに似た対の関係

こわしバンはなおしバンとセットで語られることが多い道具です。復元光線が物を元の状態に戻すのと対比すれば、こわしバんは意図的に劣化させるという真逆の発想です。ビッグライトスモールライトの関係に似た構図で、ひみつ道具の世界では正反対の効果を持つ対の道具が多く存在します。こうした対になる道具のペアは、それぞれ単体ではなくセットで考えた時に活用の幅が広がります。

こわしバンの存在が面白いのは、物を壊すという一見有用性の低い効果を道具として製品化している点です。壊すことが目的になるシーンは日常では多くありませんが、なおしバンという相棒があることでこわしバンも状況に応じた使い道が生まれます。道具と道具の組み合わせが新しい可能性を開くというのも、ドラえもんのひみつ道具の楽しさのひとつです。ビッグライトスモールライトのペアが互いを補い合うように、なおしバンとこわしバンもまたそれぞれの単体としての機能を超えたところで真価を発揮します。なおしバンだけがあって壊したいものがない場合、こわしバンで状態を一度リセットしてからなおしバンで理想の状態に整えるという使い方も考えられます。二つを組み合わせることで、物の状態を完全にコントロールできるというのはかなり強力な機能です。

スネ夫のミスが生む笑い

こわしバンのエピソードで最も印象に残るのは、やはりスネ夫がジャイアンの顔を誤って壊してしまうシーンです。ジャイアンの顔がグニャグニャになるというビジュアルのインパクトは強く、カラー3巻のなかでも特に目を引く場面の一つです。使い間違いという人間らしいミスが物語の核心になるという構造は、道具がいかに便利でも人が使う以上は完璧ではないというドラえもんのシリーズを通したテーマとつながっています。

こわしバンは悪の道具という印象よりもスネ夫の失敗エピソードの小道具として記憶に残ります。一見ネガティブな効果の道具が、笑えるシーンの起点になるというのが藤子F不二雄先生の使い方の上手さです。なおしバンがあれば直せるという安心感があるからこそ、こわしバンのハプニングが笑いとして成立しているのかもしれません。スネ夫があっさりと間違えてしまうシーンは、道具の扱いに慣れていても人は焦ると間違えるという普遍的なテーマを笑いに変えています。道具の面白さとキャラクターの性格が見事に噛み合ったエピソードとして、こわしバンはカラー3巻の中でも印象的な道具のひとつです。ジャイアンの顔がグニャグニャになるという視覚的なインパクトが強く、コミックを読んだ時の驚きと笑いは初読者に特に大きな印象を与えます。なおしバンとこわしバンは片方だけでは語れない道具として、セットで読むからこそ面白さが完成します。スネ夫の失敗がジャイアンの顔に出るというのは、普段のパワーバランスからすると意外な形の逆転であり、そこにもこのエピソードの面白さのひとつがあります。どんな道具も使う人間のミスや欲が絡むと、思いがけない結末になるというドラえもんらしい教訓が笑いとともに伝わってきます。

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