壊れたものをすっかり元通りに直してしまう接着剤『マジックセメント』です。
チューブから出る半練り状のセメントで、コミックの中では割れた鏡を直すときに使われました。
マジックセメントが登場するのはこの1回きりなので、貴重なひみつ道具といえるでしょう。
家でボーリングをするドラえもん
ある日、家の中でボーリングをしていたドラえもんが誤って鏡を割ってしまいました。
ドラえもん2巻「うそつきかがみ」P77:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
本格的なボール、さらにはピンまで用意し、家の中でボーリングをするドラえもんの行動は正直いって理解不能。
そうです、コミック初期でダラしなかったのは決してのび太だけじゃないんです。
のび太を助ける目的で未来からやってきたはずのドラえもんも、意外とこういうポンコツなエピソードを持っているんです。
しかし冷静に考えてみると、確かに家でボーリングする行動力もすごいのですが、いったいどうやったら鏡の高さまで飛ぶほどに大暴投してしまうんでしょうか。
ボールを転がせばいいだけなのに、指のないドラえもんが無理やりボーリングをしたばかりに、ボールが吹っ飛んでしまったのでしょうか。
傷1つなく修復するマジックセメント
そこでドラえもんが使ったひみつ道具が『マジックセメント』です。
チューブから出すタイプの接着剤のようなもので、苦労して鏡を修復したドラえもんの様子が紹介されています。
ドラえもん2巻「うそつきかがみ」P80:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
割れた破片1つ1つにマジックセメントを塗り、元の形に貼り付けていったであろうドラえもん。
鏡にはヒビが全くなく、継ぎ目もありません。
さすが未来のひみつ道具、破片と破片のつなぎ目すらすっかり平らに直してしまう能力があるようです。
汗を流してハンカチで拭く様子から、かなりの重労働だったことが読み取れますね。
この後、のび太によって再び鏡が割られてしまうことも知らずに・・・。
復元光線を使わなかった理由
画期的なひみつ道具に見えるマジックセメントですが、実はコミック1巻でさらに優秀なひみつ道具『復元光線』が紹介されています。
復元光線はドライヤーのような大きさと形状をしていて、割れた破片に光線を照射するだけですっかり元通りに修復してしまう道具です。
ボーリングで鏡を割ってしまったドラえもん、この時どうして復元光線ではなくマジックセメントを使ったのでしょうか。
復元光線を使えば、はるかに簡単に労力をかけず鏡を直すことができたはずですよね。
考えられる理由をいくつか挙げてみます。
- 復元光線を持ってなかった
- 壊れていた
- 存在を忘れていた
- 罪の重さから、あえて辛い選択をした
【1】復元光線を持ってなかった
一番考えられる理由がこれ。ドラえもんは復元光線を持ってなかったのではないでしょうか。
ドラえもんのコミックに収録されている話は、必ずしも時間列に沿った流れではありません。
マジックセメントを使っていた頃、ひょっとするとドラえもんは復元光線をまだ所有していなかったのかもしれません。
【2】壊れていた
復元光線が壊れていたので、マジックセメントを使わざるを得ない状況だったかもしれません。
【3】存在を忘れていた
のび太のママにこっぴどく叱られたドラえもんは、気分が動揺し、復元光線の存在が頭からすっかり抜け落ちていた可能性があります。
当時はうっかりもののドラえもんとして描かれているので、それも十分考えられることです。
【4】罪の重さから、あえて辛い選択をした
「どうして家でボーリングなどやったのだろうか」
ドラえもんは深く反省し、自分が犯した重い罪をつぐなうため、あえて原始的なマジックセメントを使ったとは考えられないでしょうか。
復元光線を使えば一瞬で直すことができます。でも、それだとドラえもんの気持ちが収まらなかったのです。
のび太のママに最大限の謝罪の気持ちを表すため、あえて辛い選択をし、自分を追い込んだことも考えられますね。
日の目を見ない残念なひみつ道具
マジックセメントが登場するのはこの1度きり。
復元光線や、その上位互換ともいえる「タイムふろしき」が登場しては、マジックセメントの出る幕がありません。
マジックセメントは、今でもドラえもんの四次元ポケットの隅っこで、その出番を待ち続けているのかもしれません。