重さすいこみじゅう

重さすいこみじゅうは、物体や人の重さを自由にコントロールできるひみつ道具です。対象に向けてトリガーを引くだけで重さを吸い取って軽くしたり、逆に重さを与えて重くしたりと、自在に調整できます。重さという物理の根本的な概念を操る、非常に応用範囲が広い道具です。

重さは自由自在

のびたは自分の非力なことをバカにされるのがとてもイヤ。スネ夫やジャイアンにからかわれるたびに落ち込むのびたにとって、自分が重いと思われているゴミ箱を軽々と持ち上げたり、ドカンを片手で動かせたりすれば溜飲が下がるというものです。そこでドラえもんは重さすいこみじゅうを取り出し、ゴミを軽くしたり、ドカンを軽くしてあげることにしました。

重さすいこみじゅう
これを1人で持つのは大人でも難しい

出典:ドラえもんカラー2巻「重さすいこみじゅう」P68:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

しずかちゃんを誘って体重をうんと軽くした一行はフワフワと空の旅を楽しみます。ところが風に流されてしまい、遠く離れた海の上を歩いて帰ることになってしまったのでした。体を軽くして空中浮遊を楽しむというアイデアは素晴らしいのですが、重さをなくした状態では風の影響も受けやすくなるという盲点を突いたオチになっています。軽さには自由という恩恵がある一方で、制御の難しさというリスクが伴うわけです。楽しい体験の裏に隠れた危険性を自然な形で示している、藤子F不二雄先生らしいエピソードです。

重さを調整します

重さすいこみじゅうを対象物に向けてトリガーを引くと、物体の重さを吸い取って軽くすることができます。吸い取った重さは少しずつ戻すことも可能で、自由に重さ調整が可能です。重さを段階的にコントロールできるという点が優れており、いきなりゼロにするのではなく、半分だけ軽くするといった細かい調整もできるようです。

ちなみに、重さを吸い取るときの効果音は「チュン」、逆に重みを与えるときは「チョン」と鳴ります。この擬音の使い分けが何とも可愛らしく、重さという物理現象をポップに表現しているのが藤子F不二雄先生らしいセンスといえます。

重さすいこみじゅう
独特の効果音

出典:ドラえもんカラー2巻「重さすいこみじゅう」P68:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

吸い取った重さはどこに保存されているのかという疑問も生まれます。銃型の道具の中に蓄積されているのか、それとも別の次元に飛ばしているのか。重さをもう一方の対象に付与するという使い方ができるので、ある物体から重さを吸い取って別の物体に渡すというトレード感覚での使用も可能です。建設現場で重い資材を一時的に軽くして運搬し、設置場所で再び重さを戻すという使い方は非常に実用的です。

軽すぎ危険

重さを吸い取りすぎるとフワフワ浮かんでしまうため、ある程度の重さが必要になる場面もあります。地球上で生活するためには重力との適切なバランスが必要で、重さをゼロにしてしまうと風で飛ばされたり、歩くことすらできなくなる危険があります。

重さすいこみじゅう
軽すぎるとこうなる

出典:ドラえもんカラー2巻「重さすいこみじゅう」P68:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

あらゆるものが軽くなると耐久性の問題や、それを扱う人間の力が衰えていく危険性もありますね。軽い物ばかりを扱い続けた人間は筋力が落ち、本来必要な場面で力を発揮できなくなるかもしれません。便利な道具に頼りすぎると人間本来の能力が退化するというのは、多くのひみつ道具に共通する問題です。重さすいこみじゅうの場合は特に、重力という自然の基本的な力に逆らっているわけですから、その副作用は軽視できません。

また、建物や乗り物など重さが構造的な安定に関わるものに使った場合も危険です。橋や建物の基礎の重さを吸い取れば、構造が崩れる可能性があります。重さすいこみじゅうを使う際は、対象物の重さがなぜそこにあるのかを理解してから使うことが大切です。

重さすいこみじゅうで自分の体重を羽のように軽くすれば、フワフワオビと組み合わせたときのように空中に浮かんで移動できますし、タケコプターとの相性も抜群です。体が軽くなれば同じ推力でも速く高く飛べるでしょう。タケコプターの小さな推力でも、体重が通常の十分の一になれば理論上は十倍の高度まで上昇できる計算になります。一方で、重くする使い方も見逃せません。自分の体重を増やして強風でも飛ばされないようにしたり、ケンカの場面で突進力を上げるという発想もできます。柔道や相撲のように体重が有利に働く競技では、試合前に重さすいこみじゅうで体重を増やして相手を圧倒するという使い方も考えられますが、もちろんルール違反になるでしょう。スポーツ競技への応用は難しいですが、日常生活の中で重さを自在に操れるというのは想像するだけでワクワクします。

重さを変えるひみつ道具

重さすいこみじゅう以外でも重さを自由にコントロールするひみつ道具が存在します。

無生物さいみんメガフォンは物に暗示をかけ、自身を風船と思い込ませるなどすれば軽くなりますね。この中では重くも軽くもできる重さすいこみじゅうが一番使い勝手がいいかもしれません。おもかるとうは重くするか軽くするかの切り替えはできますが、段階的な調整という面では重さすいこみじゅうの方が精度が高そうです。厚みぬきとりバリはまた異なる用途で、立体を薄くするという意味では重さの操作とは少し異なります。

重くする使い方にも注目で、例えばビッグライトで大きくした物体に重さすいこみじゅうで重さを加えれば、巨大で重厚な構造物を作り出すことも可能でしょう。逆にスモールライトで小さくしたうえに重さすいこみじゅうでさらに軽量化すれば、驚くほど持ち運びやすくなります。小型化と軽量化を同時に実現できれば、携帯できる道具の可能性が無限に広がります。また空とぶじゅうたんに乗るメンバー全員の体重を軽くしておけば、より多くの人数を楽々と運べる可能性もあります。重さという概念を自在に操れる重さすいこみじゅうは、使い方次第でさまざまな場面で活躍できる優れた道具です。日常の家事から建設現場、緊急時の救助活動まで、幅広い場面での活用が期待できるひみつ道具です。

もし現実にあったら

重さすいこみじゅうが現実世界に存在したとすれば、物流・建設・医療など多くの産業に革命をもたらすでしょう。現在、重量物の移動には大型クレーンや重機が必要ですが、重さすいこみじゅうがあれば人手だけで数十トンの荷物を動かせます。引越しは一人でできる作業になりますし、家具の配置換えも気軽にできます。宇宙開発の分野でも、ロケットの燃料を大量に消費しているのは打ち上げ時の重力に打ち勝つためですが、重さすいこみじゅうで機体を軽くすれば大幅なコスト削減が実現できます。ただし、重さを吸い取った分だけどこかに移すか保管しておく必要があるはずで、その管理がどうなっているのかは謎のままです。22世紀の技術は私たちの常識をはるかに超えたところで動いているのでしょう。また、ダイエット目的で体重だけ吸い取るという需要も膨大なものになりそうです。見た目の体型はそのままで体重だけ軽くなるとすれば、ダイエット産業は根本から変わるかもしれません。もっとも、体重が軽くなっても筋肉量や体脂肪率が変わらなければ健康面での改善は望めませんが、精神的な満足感という意味では大きな需要があるでしょう。地球温暖化対策という観点では、航空機の重量を軽くすることで燃費が向上し、CO2排出量を削減できるという環境面での効果も期待できます。重さすいこみじゅうは、私たちが当たり前に受け入れている「重力の下での生活」そのものを問い直す、哲学的な道具でもあります。

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