様々な貝にちなんで人間の行動を制御することができるそうなる貝セットを紹介します。言葉の最後にかいがつくものをダジャレのように掛けて行動を支配するというユニークな発想の道具で、アタタ貝・やり貝・マチ貝・ジコショー貝など多彩なラインナップが揃っています。日本語の語呂合わせを道具の効果に直結させるというアイデアは、藤子F不二雄先生ならではの言語センスが光っています。
人は貝に支配される
宿題をどうしてもやる気にならないのびたに、ドラえもんはそうなる貝セットの1つであるやり貝を取り付けます。
ダジャレにかけた貝 出典:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄「ドラえもんプラス5巻「そうなる貝セット」P75:小学館
ものすごい勢いで集中して勉強するのびたですが、ジャイアンにそうなる貝セットを奪われてしまいます。ドラえもんは姿を消してこっそりマチ貝、ヤッ貝、ジコショー貝などを取り付けジャイアンの邪魔をするのでした。
貝の交換をとり貝っこという 出典:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄「ドラえもんプラス5巻「そうなる貝セット」P78:小学館
このエピソードはドラえもんプラス5巻そうなる貝セットに収録されています。ドラえもんが姿を消してジャイアンに仕返しする場面は、道具をめぐる駆け引きとして楽しいシーンです。のびたが勉強するために使われた道具が横取りされ、そのダジャレ効果を逆手にとって応用するというドラえもんの機転が光ります。
ジャイアンが道具を奪うという展開はドラえもんのお約束パターンですが、このエピソードではドラえもんが姿を消してひそかに貝を取り付けるという少し高度な仕返しが描かれています。奪われた道具を別の方法で応用して相手に仕返しするというドラえもんの知恵が、このエピソードを単なるドタバタ以上のものにしています。
ダジャレにかけた貝
そうなる貝セットは言葉の最後にかいがつくものをダジャレのように掛けて行動を支配します。アタタ貝を体に取り付けると体が暖かくなり、やり貝はやる気が向上し、マチ貝は行動の結果が間違いだらけになるといった具合です。
言葉遊びを道具の効果に組み込むというアイデアが秀逸で、藤子F不二雄先生の言語センスが光っています。日本語の〜かいという語尾に着目してひみつ道具のシステムを設計するというのは、日本語に特化した発想で、翻訳が難しい道具でもあります。
行動制御系の道具には、イイナリキャップのように帽子型のものからあけっぴろげガスのようにガス状のものまで様々ありますが、そうなる貝セットは貝殻という自然物をモチーフにした独特のデザインが特徴です。
貝は同時に1つだけ
複数の貝を同時に使うことはできず、1つ取り付けると今まで使用していた貝が体が外れ、新しい貝がくっつくという仕様です。
つまり複数の効果を同時に得ることはできず、やり貝で意欲を高めながら同時にアタタ貝で体を暖めるといったことはできないわけです。状況に応じて使う貝を切り替えるという使い方が基本になります。
他人からは丸見え
取り付ける貝は他人からすると違和感しかなく、なんでそんなものを付けているの?と不自然な印象を与えることでしょう。
他人から丸見え 出典:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄「ドラえもんプラス5巻「そうなる貝セット」P79:小学館
変わったアクセサリーと取ってもらえればいいのですが。行動制御系の道具として隠密性という観点では弱い部類に入りますが、それでもジャイアンが気づかなかったという点を考えると、意外と目立たないのかもしれません。
他にも考えてみた、貝シリーズ
貝がらシリーズで他にどんなものがあるか、勝手に想像してみました。
- コウ貝(あらゆることに後悔して自己嫌悪に陥る)
- セ貝(体が地球サイズに大きくなる)
- ニホン貝(体が海水になってしまう)
- アトウ貝(なんだかな〜しか言えなくなる)
要するにダジャレにかければバリエーションはどんどん広がるわけです。こうして自分なりにひみつ道具のバリエーションを考えてみるのも、ドラえもんファンならではの楽しみ方です。
ひみつ道具の発想をこうして自分なりに拡張して考えてみるのも新鮮で楽しいですね。ウラオモテックスやさとりヘルメットのように相手の心や行動に影響を与える道具がドラえもんには多数存在しますが、そうなる貝セットはその中でもダジャレという日本語の遊び心を取り入れた独特の道具です。アンキパンで知識を詰め込むのもやり貝でやる気を出すのも、外から何かを使って内面に働きかけるという発想は共通しています。人の行動や感情に外部からアプローチするひみつ道具のバリエーションの豊かさは、ドラえもんの世界の奥深さを示しています。
そうなる貝セットという名前のセンスも秀逸です。そうなるという言葉が貝と組み合わさることで、貝を使えば思うようになる、という道具の機能を端的に表しています。ドラえもんのひみつ道具は名前を聞くだけで何をするものかが伝わるものが多く、そうなる貝セットもその典型例です。見た目のユニークさと機能の明確さが組み合わさった、ドラえもんプラスを代表する道具のひとつとして、このセットはファンの間で愛されています。
ダジャレという日本語文化の遊びをひみつ道具に組み込んだそうなる貝セットは、ドラえもんの物語が持つ言語的な豊かさを示しています。ドラえもんの道具には科学的な説明がつくものもあれば、この道具のように言語遊びや文化的な発想をベースにしたものもあり、その多様性がシリーズの魅力のひとつです。宿題をやらないのびたに道具を使って勉強させるというエピソードの枠組みは典型的なパターンながら、ダジャレという仕掛けが加わることで新鮮な読み味を提供しています。
ドラえもんのひみつ道具の中には、SF的な先進技術をベースにしたものが多い中で、そうなる貝セットのように言語文化をベースにした道具は特にユニークな存在です。技術の話ではなく言葉遊びという文化的な発想から道具を設計するというのは、ドラえもんの作品世界が単なる科学未来漫画ではなく、日本の文化や言語感覚に根ざした作品であることを示しています。こうした多様な発想の道具が共存しているからこそ、ドラえもんは50年以上にわたって愛される作品になったと言えるでしょう。
そうなる貝セットのエピソードで印象的なのは、ジャイアンが道具を奪っても最終的に道具の力が逆に使われてジャイアンが困る展開です。ドラえもんのひみつ道具は横取りすることはできても、上手く使いこなすのは難しいという教訓を示しています。道具の正しい使い方を知っているドラえもんが、状況に応じて貝を使い分けてジャイアンに対応するという場面は、道具の理解が力になるというメッセージを伝えています。
そうなる貝セットは複数の貝が揃うことで多彩な状況に対応できるという汎用性の高い道具です。単一の機能しか持たないひみつ道具と比べて、セットとして揃えることでシステム的に機能するという設計は、後のシリーズの道具設計にも通じる発想です。ドラえもんのひみつ道具の中でも、複数のアイテムがセットで機能するタイプは特に記憶に残りやすく、このセットもその典型例として愛され続けています。
ダジャレという文化は世界各地に存在しますが、日本語のかいという語尾のように音のダジャレで効果が変わるという道具は、日本語という言語の豊かさを活かした発明です。藤子F不二雄先生が日本語という素材を使って道具を設計したこと自体が、ドラえもんという作品が日本文化に深く根ざしていることを示しています。外国語に翻訳されたドラえもんでそうなる貝セットの効果がどのように説明されているのかも、ファンとして気になるところです。





