スピード増感ゴーグルをかけると周りのスピードがグンと増す効果があります。実際の移動速度は変わらないのに、かけている本人だけが超高速で動いているような体感を得られるひみつ道具です。スポーツや運動が退屈に感じる人や、日常の動きに刺激を求める人にうってつけの道具といえます。
いざスピード狂の世界へ
ただのジョギングはつまらないというパパにドラえもんがスピード増感ゴーグルを取り出します。これをかけると普段のスピードが何十倍にも感じられ、スカッと爽快感ある気持ちになるのです。普通のジョギングが、本人の体感ではまるでマッハで走っているような感覚になります。
のび太はスピードを楽しむためにジョギング、タケコプターなどいろいろ試しているところ、爆音とスピードで迷惑を撒き散らしているバイク乗りに出会うのですが・・・
ゴーグルの中は高速の世界 ドラえもんプラス3巻「スピード増感ゴーグル」P142:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
高速の景色をご覧あれ
スピード増感ゴーグルをかけると普段のスピードの10倍〜20倍に周りの景色が流れるようになります。周りから見ると普段通りの動きですが、本人だけ体感速度が増しているのです。
風切り音もすごく、ゴゥゴゥと爆音が響くので声をかけられても聞こえなくなってしまいます。快速シューズが実際に移動速度を上げる道具であるのとは対照的に、スピード増感ゴーグルはあくまでも感覚的なスピードを増幅させるだけで、実際のスピードは変わらないところが面白い点です。外から見れば普通に歩いているのに、本人の感覚では超高速で駆け抜けているような状態です。
体感としては超高速で動いているのに、周りからは普通に見えるという不思議な状態を楽しめます。自分だけが高速世界を体験している一種のバーチャルリアリティのような道具といえるかもしれません。現代のVRゲームで速度体験を楽しむのに近い感覚ですが、それよりもはるかに没入感が高いでしょう。
車並みの速度である ドラえもんプラス3巻「スピード増感ゴーグル」P144:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
道路で使うのは危険
スピード増感ゴーグルを道路で使うと実際のスピードと体感速度に大きな差が生じます。車を運転しようものなら途中でコントロール不能に陥って事故につながるでしょう。のび太も普通にジョギングしていただけなのにしずかちゃんにぶつかってしまうシーンがありました。広い体育館や運動場など、周りの安全が確保できる場所で使うべきですね。
スピードどけいのように時間の流れ自体を操作する道具とは異なり、スピード増感ゴーグルはあくまでも自分の知覚だけを変化させる道具です。外から見れば普通の動きをしているのに、本人は超高速で動いているような感覚を得られるというギャップが面白い点でもあります。
スポーツ選手の練習などに応用できないかという観点では少し難しいですが、体感的なスピードに慣れることで普段の動作にも自信がつくかもしれません。空とぶじゅうたんのように空を移動する手段を選べば、地上のトラブルを回避しながらスピードを楽しめます。
稀代のクズバイク乗り登場
のび太の街は治安が極端に悪いことで有名ですが(参照ページ)、その中の残念なバイク乗りが登場するのがスピード増感ゴーグルの回です。
大型バイクを狭い道路で猛スピードで走り回り、のび太をひきそうになった挙げ句に気をつけろのろまと言い放つ始末。反省の色が見られません。のび太の街には時折こういった常識外れのキャラクターが登場しますが、今回のバイク乗りはそのなかでも特に記憶に残るクズぶりを発揮しています。
クズオブクズ ドラえもんプラス3巻「スピード増感ゴーグル」P143:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
そのまま電柱にぶつかって怪我をし、スピードだけが生きがいだったのにと狂気じみた言葉を口にするなど反省の色が見られません。スピード増感ゴーグルを装着したことで早々にバイクをあきらめてレーサーになるという変わり身も早く、稀に見るキャラクターでしょう。
このバイク乗りのように、スピードへの依存が度を越してしまうと危険を顧みなくなるという警告的な描写でもあります。スピード増感ゴーグルはあくまでも感覚的な体験であり、実際の速度は変わらないため怪我のリスクは低いですが、それでも使い方と場所の選択は重要です。スポーツや娯楽目的で安全に楽しむなら、広い場所でスピード増感ゴーグルを使うのが賢明な判断です。感覚だけを変える道具だからこそ、使いどころをしっかり選ぶことが大切です。
スピード増感ゴーグルを楽しむ場所
スピード増感ゴーグルを最大限に楽しむためには、まず広いスペースを確保することが前提です。学校の体育館や運動場など、周囲に人や障害物が少ない場所であれば、安心してスピード体験を楽しめます。
特に自転車やローラースケートと組み合わせることで、体感速度をさらに増幅させることができます。実際の移動速度に加えてゴーグルの体感倍率が乗ってくるため、普通のサイクリングがまるでプロのレーサーのような感覚になるでしょう。
また、運動が嫌いな子供や運動習慣をつけたい人にとっても効果的かもしれません。普通のジョギングがあまりにも体感的にスリリングになるため、いつの間にか運動を続けることが楽しくなる可能性があります。スポーツを楽しむための道具として、スピード増感ゴーグルはまだまだ可能性を秘めています。
快速シューズが実際のスピードを上げる道具であるのに対し、スピード増感ゴーグルは体感スピードだけを上げる道具です。この2つを組み合わせれば、実際のスピードが上がりつつ体感スピードもさらに増幅されるという二重の刺激を体験できるかもしれません。ただしその場合は安全への注意がより一層必要になります。使い方次第で安全な娯楽にも危険な道具にもなり得るのが、スピード増感ゴーグルの本質です。安全な環境のもとで、純粋に体感速度の変化を楽しむ道具として、スピード増感ゴーグルは正しく使えば非常に面白い体験を提供してくれます。一度かけてみると普段の日常がどれほど刺激的に変わるか、ぜひ試してみたいと思わせてくれるひみつ道具のひとつです。
スピード増感ゴーグルは、現代でいうVRゴーグルに近い発想の道具です。視覚的な体験を変えることで、実際の行動に対する感覚を大きく変えてしまうという点が共通しています。ただしVRが仮想空間を見せるのに対し、スピード増感ゴーグルは現実の世界の速度感を変えるという点でより実体験に近いものがあります。現代の技術ではなかなか難しいこの感覚を、ドラえもんの世界では小さなゴーグル1つで実現してしまうという発想の豊かさに改めて驚かされます。
周りの人から見ると普段通りに見えるのに、本人だけが超高速の世界を体験しているという状況は、個人の内側と外から見た現実との乖離を象徴しています。私たちが普段感じている速さや遅さも、実は個人の主観によって大きく異なるものだということを、スピード増感ゴーグルは面白い形で教えてくれます。感覚的な体験の個人差という哲学的なテーマを、娯楽的な道具という形でわかりやすく描いた藤子先生の発想は、今改めて読んでも非常に先進的です。





