タマシイムマシン

特定の時期を選び、自分の体から抜き出した魂が当時の自分に乗り移ることができる、タマシイムマシンの紹介です。昔はよかった、あの時こうだったら、という願いを実現することができるひみつ道具です。

昔に戻りたいのび太

赤ん坊の頃はあれほど気にかけてくれていたママが、小学生になった自分に冷たいと嘆くのび太。昔に戻りたいというのび太にドラえもんが出したのがタマシイムマシンです。これを使えば魂が抜け出して任意の時代の自分に乗り移ることができます。つまり意識や知識は今のまま、赤ん坊の時代の自分に戻ることができるというわけ。

さっそく赤ちゃんの頃の自分にタイムスリップしたのび太ですが、小学生の知識はそのままなので、ミルクじゃなくてコーラが飲みたいと喋り、いきなりママを驚かせます。

赤ちゃんになってコーラを飲みたがるのび太
こんな赤ん坊は怖い

ドラえもん13巻「タマシイムマシン」P148:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

何をやっても可愛がられ、怒られることなく、のんびり過ごす赤ん坊の時代を満喫し、現代に戻ってきたのび太。ママが昔歌ってくれた子守唄を、今後はのび太がママに歌ってあげるという感動的なシーンで幕を閉じるのでした。

ママに子守唄を歌うのび太
寝る時はメガネくらいははずそう

ドラえもん13巻「タマシイムマシン」P151:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

過度な演出は厳禁

赤ん坊ののび太がいきなりコーラが飲みたいやパパ、ママ、ばあちゃんなどとしゃべるのは、普通では考えられません。これは小学生の知識を持った魂が乗り移ったから出来たことで、周囲の大人たちに過度な将来への期待をもたせることになりかねません。赤ちゃん時代の自分が急に流暢に話し始めたら、親にとっては驚き半分、恐怖半分です。タマシイムマシンを使う際はあくまでも年齢に合った言動を心がけないと、周囲に余計な混乱をもたらしてしまうという点で注意が必要な道具です。

タイマーを使おう

魂がタイムスリップした後は、あらかじめセットしたタイマーの時間が経過すると自動的に現世に戻れるような仕組みになっています。

タマシイムマシンはタイマー
使い方に注意が必要だ

ドラえもん13巻「タマシイムマシン」P146:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

逆にいえば、タイマーをセットし忘れ、かつタマシイムマシンを操作する人が近くにいない場合、その人の魂は永遠にタイムスリップしたままになるということです。使う時はタイマーは忘れないようにしましょう。

抜け殻にも注意

魂が抜けた体は意識がなくなり、その場に崩れ落ちます。のび太も庭に倒れ込んでいたところをママが発見し、大驚きになりましたね。周囲への迷惑を考え、タマシイムマシンを使うのは布団の中などの、意識がなくなっても勘違いされない場所を選びましょう。

魂が過去に行くという発想は、人生やりなおし機とよく似ていますが、人生やりなおし機が今の能力を持ったまま過去の時点に戻るのに対し、タマシイムマシンは魂だけを送り込む点が異なります。体は現代に残ったまま魂だけが過去に飛ぶという独自の仕組みを持っています。

スピードどけいが時間の速度を変えて宿題をさぼろうとするのに対し、タマシイムマシンはもっと本質的な、昔の自分になりたいという欲求に応える道具です。使う動機が異なるため、それぞれの場面で活躍するひみつ道具といえます。

タイムふろしきが物体を過去や未来の状態に変えるのとは対照的に、タマシイムマシンは物体ではなく魂を移動させるという点でユニークです。物理的なものは何も変わらないのに意識だけが過去に飛ぶという仕組みは、ドラえもんのひみつ道具の中でも独特の存在感があります。

イマニ目玉で未来を確認してからやり直したいと思った時に使うのがタマシイムマシン、という組み合わせも理論上は可能です。ただし、タマシイムマシンで戻れるのは自分が実際に生きていた過去の時点に限られるため、まだ存在しない未来には戻れないという制約があります。

赤ちゃん時代ののびたが可愛すぎる

タマシイムマシンのエピソードで読者の心をつかむのは、小学生の知識を持ったまま赤ちゃんになったのびたの言動です。「コーラが飲みたい」と赤ちゃん言葉で話し、パパやママを驚かせながらも、何をしても溺愛される赤ちゃん時代の特権を満喫するのびたの姿はどこかほほえましい。現代の知識や記憶を持ったまま赤ちゃんに戻れるというのは、子どもの無邪気さと大人の思考が同居するという奇妙で面白い状態です。

逆に言えば、赤ちゃんのふりをしながら全てを記憶・判断できるという状況は、親の言動をそのまま観察・記録できるという意味でもあります。のびたがこの機会に「ママはこんなに自分を可愛がってくれていたんだ」と再認識するというストーリーの展開は、普段の親子関係に対して新鮮な視点を与えてくれます。

タイマー設定を忘れると永遠に戻れなくなる

タマシイムマシンには大きなリスクがあります。タイマーをセットし忘れると、魂は永遠に過去に取り残されてしまいます。また、タイマーを操作できる人が近くにいなければ同様に帰れなくなる恐れがあります。コミックでのびたが庭で倒れていたように、抜け殻になった体を誰かが見つけてくれる保証もありません。使用する前の準備と、緊急時に対応してくれる人の確保が必須の道具です。

魂と肉体が別々に存在することの問題

タマシイムマシンの最大の特徴であり最大のリスクは、魂が過去に行っている間、現代の肉体が「抜け殻」として残ってしまうことです。意識のない体は自力で動けず、その場に倒れるため、周囲の人が異変に気づく可能性があります。のびたの場合は庭で倒れているところをママに発見され大騒ぎになりましたが、もし一人のときに使っていたら誰にも気づかれず放置されるリスクもあります。

また、魂が過去に行っている間に現代の体が何らかの危険に晒された場合はどうなるのか、というのも気になる点です。体と魂が切り離された状態での肉体的な影響についてはコミック内で触れられていませんが、タイマーによる強制帰還という仕組みが一つの安全装置として機能しているのでしょう。使う場所と状況をしっかり選ぶ必要のある道具です。

「昔に戻りたい」という人類普遍の感情

タマシイムマシンが面白いのは、「昔はよかった」「あの頃に戻りたい」という誰もが経験する気持ちを、SF的な道具として具現化している点です。のびたの場合は「赤ちゃんの頃にもっと甘えておけばよかった」という気持ちですが、大人が読めば「あの頃の自分に戻れたら」というより深い感慨を覚えることでしょう。

ドラえもんの時間関連道具は数多く存在しますが、タマシイムマシンは体ではなく魂を送るという独自のアプローチで、他の時間系道具にはない独特の世界観を持っています。人生やりなおし機が人生をやり直すことを主眼にしているのに対し、タマシイムマシンは「戻って体験し直す」という観察・体験型の道具です。過去を変えることよりも、過去を感じ直すことに意義がある道具と言えます。タマシイムマシンを経験したのびたが、現代に戻ってから子守唄をママに歌ってあげるという感動のラストシーンは、ドラえもんの短編の中でも特に印象に残る結末のひとつです。過去に戻ることで現在の大切さに気づくという構図が、このひみつ道具を単なる時間旅行ツール以上の意味を持たせています。

このひみつ道具が印象に残る理由

このひみつ道具の面白さは、ただ便利なだけではなく、使った瞬間に日常の見え方が少し変わるところにあります。ドラえもんの道具は、困りごとを一発で解決してくれるように見えて、実際には使う人の性格や判断がそのまま結果に出ます。のび太が使えば楽をしたい気持ちが前に出ますし、ドラえもんが使えば助けるための道具になります。同じ道具でも、誰がどんな目的で使うかによって印象が変わるのです。

また、名前や見た目が身近であるほど、効果とのギャップが強くなります。普通ならありえないことが、手の届きそうな形の道具で実現してしまう。そこに読者が「自分ならどう使うだろう」と想像したくなる余白があります。物語の中での出番が短くても、発想がはっきりしている道具は記憶に残りやすいですね。

日常で使うなら注意したいこと

もし現実にこの道具を使えるなら、まず考えたいのは周囲への影響です。自分にとって便利でも、家族や友達、近くにいる人に迷惑がかかるなら正しい使い方とはいえません。ドラえもんのエピソードでは、最初は小さな願いから始まった使い方が、だんだん大きな騒動に広がることがよくあります。便利さに気を取られるほど、基本的な確認を忘れてしまうのです。

効果の範囲、持続時間、元に戻す方法、失敗した時の対処。これらを分からないまま使うと、どんなに魅力的な道具でも危険になります。ひみつ道具は夢をかなえるアイテムである一方、使う人に責任を求めるアイテムでもあります。そこまで含めて考えると、単なる便利グッズではなく、未来の技術との付き合い方を教えてくれる存在だといえるでしょう。

読者が想像を広げやすい道具

作中で描かれた使い方は、この道具の可能性の一部にすぎません。学校で使ったらどうなるか、家で使ったらどうなるか、旅行や災害時に役立つのか、逆にどんなトラブルが起きるのか。そう考えていくと、短い登場シーンだけでは見えなかった魅力が広がります。

ドラえもんのひみつ道具紹介の楽しさは、性能を確認するだけでなく、その先の使い道を読者自身が想像できるところにあります。この道具も、便利さ、危うさ、ユーモアが同時に詰まっているからこそ、もっと深く考えたくなる一品です。

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