眠っている人が見ている夢をのぞき見できるメガネ型のひみつ道具が「ゆめグラス」です。夢という本人の内側にある世界を外から見られるため、便利さ以上にプライバシーの危うさが目立つ道具でもあります。
ドラミちゃんが見たのびたの夢
コミック24巻のショボリ、ドラえもんでは、ドラえもんとのびたがケンカばかりしている様子を見たセワシくんが、ドラミちゃんを現代へ送り込みます。ドラミちゃんはドラえもんより優秀で、判断も早く、道具の使い方も的確です。その中で使われるのが、眠っているのびたの夢を確認できるゆめグラスでした。
のびたが眠っているところを、ドラミちゃんはゆめグラスでのぞきます。夢の中では、のびたがジャイアンに馬乗りになって、日頃のうっぷんを晴らしていました。現実ではなかなか勝てない相手に夢の中で勝つという、のびたらしい願望がそのまま出ています。
日頃のうっぷんを夢の中で晴らすのびた ドラえもん24巻 ショボリ、ドラえもん P180:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
この場面だけでも、ゆめグラスの怖さは十分に伝わります。夢は本人が誰かに見せるつもりで作っているものではありません。むしろ、普段は隠している願望や不満が出てしまうこともあります。のびたがジャイアンをやっつける夢なら笑えますが、本人にとっては見られたくない内容かもしれません。
ゆめコントローラーとセットで真価を発揮
ゆめグラスはただ夢を見るための道具です。ただし、見るだけなら観察で終わります。ドラミちゃんがすごいのは、ここにゆめコントローラーを組み合わせたことです。夢を見ながら、その内容を変える。これによって、のびたを夢の中からやる気の出る方向へ誘導できます。
現実でのびたを叱っても、すぐへそを曲げたり逃げたりします。しかし夢の中なら、本人の感情に直接近い場所へ働きかけられます。ゆめグラスで状態を確認し、ゆめコントローラーで展開を調整する。医者が画面を見ながら処置するような、観察と操作のセットです。ドラミちゃんの道具運用のうまさがよく出ています。
夢を外から見る道具という意味では、後のゆめテレビも近い存在です。
ゆめテレビは方角と距離を指定して任意の人の夢を見られるため、探索性ではかなり強力です。一方、ゆめグラスは目の前で眠っている相手に使う道具として見えます。対象が近くにいるぶん、ゆめコントローラーと連携しやすいのが強みです。遠くの夢を探すならゆめテレビ、目の前の相手を支援するならゆめグラスという分け方ができそうです。
夢は本人にも制御しにくい
夢の面白さは、本人ですら内容を完全には選べないところにあります。楽しい夢を見たいと思っても、実際には怖い夢になることがあります。忘れていた出来事や、普段は隠している気持ちが急に出てくることもあります。だからこそ、ゆめグラスで他人に見られるのはかなり気まずいです。
気ままに夢見る機のように見たい夢を選ぶ道具なら、ある程度は内容を整えられます。しかし普通の夢はそうはいきません。のびたのようにジャイアンへの日頃の不満が出ることもあれば、しずかちゃんへの気持ちや、失敗した記憶や、誰かへの嫉妬が出てくることもあります。夢は自分のものなのに、自分で管理しきれない。この不安定さが、ゆめグラスの危うさを強めています。
盗撮に近いプライバシー問題
ゆめグラスを悪用すれば、盗聴や盗撮にかなり近い行為になります。しかも、見られるのは部屋や会話ではなく、本人の頭の中です。好きな人、苦手な人、恥ずかしい記憶、隠している願望。夢に出てくるものがそのまま本心とは限りませんが、見られた側にとってはかなり気まずいはずです。
ドラえもんの世界ではコミカルに描かれていますが、現実にあれば使用ルールがかなり厳しくなる道具です。本人の許可なしに使うのは完全にアウトでしょう。夢はしごが夢の中へ入る道具なら、ゆめグラスは入り口の外から中をのぞく道具です。どちらも夢のプライバシーを脅かす存在です。
同じ夢系でも、立ちユメぼうは本人が現実を夢のように体験する道具で、ムユウボウは夢を見ない方向の道具です。ゆめグラスは本人ではなく見る側のための道具なので、どうしても倫理面が前に出ます。眠っている人を助けるために使うのか、ただの好奇心で使うのか。その差がかなり大きい道具です。
ドラミちゃんだから成立した使い方
ドラミちゃんが使った場面は、のびたを傷つけるためではなく、やる気を出させるための観察でした。ゆめグラスで状態を確認し、ゆめコントローラーで整える。その目的が支援だから、読者も受け入れやすくなっています。もし同じことをスネ夫がやったら、かなり嫌な使い方に見えたはずです。
道具そのものは中立でも、誰が何のために使うかで印象は変わります。ゆめグラスは夢をのぞくという危ない効果を持ちながら、ドラミちゃんの手にかかると相手を理解するための道具になります。夢を見れば、その人の不満や望みが少し見える。そこからどう向き合うかまで含めて、この道具の面白さです。
夢の中では、現実では言えないことや、子どもっぽい願望も出てきます。のびたが強がっても、夢の中ではジャイアンへの反撃を望んでいた。普段の弱さと、内側にたまった悔しさを同時に見せています。ゆめグラスは便利な観察道具であると同時に、見る側の品性まで映してしまう道具です。だからこそドラミちゃんの手で使われた意味があります。
また、グッスリまくらのように眠りを深くする道具と組み合わせれば、相手が夢を見やすい状態を作ることもできます。ツモリガンのように夢の中で満足させる道具と比べると、ゆめグラスは見るだけで直接何も起こしません。ただ見るだけ。しかし、見るだけだから安全とは限りません。夢をのぞく力は、相手を理解したい気持ちがあって初めて助けになる道具です。




