ぜったい安全がさ

持っているだけで身の回りの危険を自動的に感知し、傘が回転して風を起こして敵を追い払い、ボールを打ち返し、車から逃げる——『ぜったい安全がさ』はその名のとおり絶対に安全でいられるひみつ道具です。ユーザーが何もしなくても傘自身が判断して動くという自律型の防御システムであり、普通の傘が持つイメージを完全に覆した発明品です。

傘に守られる日常

犬やジャイアンから逃げるのび太。そんな中でママはお使いに行けと言い始めるのです。一日中危険にさらされているのに買い物を命じられるという、のび太あるあるの状況です。家の中にさえいれば安全なのに、外に出ろと言われるというのは、のび太にとって最悪のタイミングでした。

のび太はドラえもんから借りた『ぜったい安全がさ』のおかげで敵を吹き飛ばし、ボールを打ち返し、車から逃げることができたのです。ひみつ道具が発揮する効果の種類が多く、いろいろな危険に対応できることがこのエピソードでよくわかります。犬からジャイアン、飛んでくるボール、さらには車まで、日常で遭遇しうる様々な危険をひとつの道具でまとめて対処できるという設計は、まさに万能の護身道具です。

ぜったい安全がさ
かなりの勢いで回転するようだ

ドラえもんカラー2巻「ぜったい安全がさ」P45:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ところが肝心のお使いをすっかり忘れてしまい、結局怒られてしまったのでした。どんな危険からも守られているのに、最終的に怒られてしまうというオチは、のび太のキャラクターの本質をついています。道具が身の危険から守ってくれても、やるべきことを忘れる癖は守ってくれないのです。この結末がまたドラえもんらしくて、読むたびに笑えます。身の安全は万全でも、ママの怒りだけは防げない——それがのび太の宿命なのかもしれません。

傘が自動的に反応

『ぜったい安全がさ』を持っておくだけで、身の回りに危険が近づいたとき、傘が自動反応してあなたを守ってくれます。

ぐるぐると回転して風を起こして敵を追い払う、自動的にボールを打ち返してぶつからないようにする、風に乗って体が飛んでいくなど傘特有の形状を利用した絶対的に安全なひみつ道具なのです。傘が高速回転する場面はコミックでもかなりのインパクトがあり、これほどの回転力があれば確かに周囲に相当な風が発生するでしょう。

自律的に危険を判断して対処するという点では、ロボット技術や人工知能の発想に近いものがあります。持ち主の指示なしに動く傘というのは、現代のテクノロジーの文脈で見ても非常に先進的な概念です。未来の道具らしい高度な仕組みが傘という日常的なアイテムに詰め込まれているギャップが面白いですね。普段は普通の傘として機能しつつ、危険を感知した瞬間に自動で防御モードに切り替わるという動作は、センサーと制御システムが統合されていなければ実現できないものです。

社会も安心

『ぜったい安全がさ』さえ持っていれば、交通事故や事件性のあるものは激減することでしょう。

もしこのひみつ道具が一般的に普及すれば世の中の構造は大きく変わってくるのでしょうね。人が危険にさらされることを前提として設計されているさまざまな社会制度——保険、警備、医療の一部——がいらなくなってしまうほどの影響力があります。交通安全教育の内容も変わり、危険を予測して避けるという従来のアプローチから、道具が危険を自動処理するという前提の教育に変わっていくかもしれません。

たくさん数を用意すれば警備員いらずの安全な世の中に変化していくことが予想されます。特に子どもや高齢者など、自分で身を守ることが難しい人たちに配布すれば、社会的な安全水準が劇的に上がるでしょう。ひみつ道具が社会インフラになった未来を想像すると、ドラえもんの世界の文明水準の高さが改めて実感できます。ただし全員が持つようになった時の道具同士の干渉など、予期しない問題も起きそうです。

のび太の度胸のすごさ

のび太は『ぜったい安全がさ』の性能に惚れ込み、絶対に安全だからという理由だけで赤信号の横断歩道を無謀にも渡り、結果的に車から逃げることができました。

ぜったい安全がさ
驚くのも無理はない

ドラえもんカラー2巻「ぜったい安全がさ」P46:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

これは要するに命綱をつけずにバンジージャンプを飛ぶのと同じようなことです。安全が保証されているとはいえ、自ら危険に飛び込む時人は誰でも躊躇しそうなものですが、のび太はその様子が一切ありません。道具の性能を完全に信頼した上でためらいなく行動に移せるというのは、ある種の純粋さともいえます。

よほど道具(ドラえもん)を信用しているのか、それとも何も考えていないだけなのか、はたまた普通とはちょっと違うのび太が見られるチャンスでした。道具を完全に信頼しきって自分の判断で行動に踏み切れる大胆さは、ある意味では度胸があるとも言えます。のび太の成績は悪くて運動も苦手ですが、こういった場面での大胆な行動力は他のキャラクターにはない個性として光っています。

防御系ひみつ道具との比較

日常のあらゆる危険から身を守る道具という点では、きずグスリつき自動まきほうたいのように怪我をした後に自動的に手当てをしてくれる発想とは逆で、『ぜったい安全がさ』は怪我をする前に防いでしまうという予防型の道具です。治療と予防という二つのアプローチを比較すると、ダメージを受ける前に止める方が根本的な解決になるのは言うまでもありません。

同じく防御系の道具としてかくれマントで存在を消して危険を回避するという手もありますが、能動的に危険を退ける点では『ぜったい安全がさ』のほうが頼もしい印象があります。かくれマントは透明になることで危険を避けるという受動的な防御に対して、ぜったい安全がさは危険に立ち向かって払いのけるという積極的な防御です。危険から隠れるのではなく、危険を正面から追い払うというスタンスは、名前の通り絶対的な安全感を与えてくれます。

バリヤーポイントのように特定の場所を守るのではなく、持ち歩いて使える携帯性もこの道具の長所です。どんな状況でも安心して動き回れるという意味で、のび太が大好きなひみつ道具になるのは当然かもしれません。

防御系ひみつ道具としてとうめいボディガードプラモも存在しますが、あちらはプラモデルを組み立てて守ってもらうという手間がかかります。『ぜったい安全がさ』はただ持っているだけで効果を発揮するというお手軽さが最大の魅力でしょう。雨の日も晴れの日も、外出のたびにお守り代わりに持ち歩けるコンパクトさも評価したいポイントです。日常の護身道具として、これほど使いやすいひみつ道具は他にそう多くありません。学校の帰り道、見知らぬ犬が吠えてきた時、不意にボールが飛んできた時——そういう予測できない日常の危険から自動的に守ってくれる道具があれば、子どもたちがどれだけ安心して外を歩けるか。ひみつ道具としての夢が大きい一方で、現実世界の子どもたちへの共感も感じさせる道具です。

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