ハーメルンのごきぶりふえ

ハーメルンのごきぶりふえは、吹くと周囲一帯のゴキブリが集まってきて演奏者のあとをゾロゾロとついてくるひみつ道具です。童話ハーメルンの笛吹き男をゴキブリ版にしたような、見た目以上にインパクト絶大な一品です。コミックプラス6巻ごきぶりふえに登場し、のび太の家のゴキブリ問題をきっかけに思わぬ展開を見せるエピソードで活躍します。

ジャイアンとごきぶり

のび太の家にゴキブリが現れ、ドラえもんはハーメルンのごきぶりふえを使って家中のゴキブリを集めることに成功します。

その様子を見ていたジャイアンがふえを取り上げますが、家にはゴキブリがいないことに気づきます。ジャイアンはふえを吹きながら街中を歩き回り、大量のゴキブリを家に連れて帰るという世にも恐ろしい愚行に走ってしまうのです。

ハーメルンのごきぶりふえ
これは怖すぎる

出典:ドラえもんプラス6巻「ごきぶりふえ」P49:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ジャイアンが家のゴキブリを集めようとふえを吹きながら街中を歩き、そのまま大量のゴキブリを引き連れて帰宅するというシーンは、読んでいるだけで背筋が寒くなります。ゴキブリが嫌いな人はもちろん、そうでない人にとっても数十匹単位のゴキブリが後をつけてくるというシチュエーションは相当なものです。

ハーメルンのごきぶりふえ
地獄絵図である

出典:ドラえもんプラス6巻「ごきぶりふえ」P52:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ジャイアンの無邪気な発想と行動力がこの道具の本来の使い道とかけ離れた惨事を招くというのは、ドラえもんのひみつ道具あるあるです。害虫駆除のための道具が、逆に害虫を呼び寄せる方向に使われてしまうという皮肉な結末です。

集まれごきぶり

ハーメルンのごきぶりふえの音色を聞いたゴキブリは一箇所に集まり、演奏者の後ろをついてゾロゾロと歩きます。

その姿を想像するだけで鳥肌が立ちそうですが、童話ハーメルンの笛吹き男になぞらえたひみつ道具です。

本来の用途は家にいるゴキブリを一箇所に集めて駆除するためのものでしょう。散らばったゴキブリを個別に退治するのは非常に骨が折れる作業ですが、この道具があれば一ヶ所に集めてまとめて処理できます。その意味では家庭の害虫対策として非常に実用的な道具といえます。問題は、ジャイアンのように集めた後の処理が全くできていない状態で使ってしまうと悲惨なことになるという点です。

ドラえもんが家のゴキブリを集めることに成功したのは、まさにこの道具の正しい使い方です。部屋の中に散らばったゴキブリを一か所に誘導し、そこで一気に退治するという手順を踏めば、非常に効率的な害虫駆除が実現します。のび太の家でこれが実際に機能したのは、ドラえもんがきちんと後処理まで考えて行動しているからです。道具を正しく使うには、その道具の機能だけでなく、使う目的と結果までを考える必要があるということを、このエピソードは示しています。

独特な音色

ほいほい〜。

これはハーメルンのごきぶりふえの独特な音色です。

ハーメルンのごきぶりふえ
独特な音色

出典:ドラえもんプラス6巻「ごきぶりふえ」P49:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ドラえもんが吹いてもジャイアンが吹いても同じ音色です。

この音が最も効果的にゴキブリに訴えかける効果があるのでしょう。おそらくゴキブリが反応する特定の周波数や音域を使っているのだと思われます。ほいほい〜という間の抜けた音色が、実は虫の世界では非常に強力な誘引シグナルになっているというのが、22世紀の道具らしいギャップです。

同じゴキブリ関連の道具として、ゴキブリシーバーという道具もあります。

関連ひみつ道具

ゴキブリカバーの中に入ってもらえば優秀なアシスタントとして雇うことも出来ますね。

ゴキブリシーバーがゴキブリと通信する道具、ゴキブリカバーがゴキブリに擬態する道具であるのに対し、ハーメルンのごきぶりふえはゴキブリを誘導する道具です。ゴキブリ関連道具の中でも、集めるという機能に特化しており、使いどころが明確な道具といえます。ドラえもんのひみつ道具の中でゴキブリを主題にした道具がいくつも存在するのは、日本の家庭においてゴキブリが切実な問題であることを示しているともいえます。現実でも多くの人が悩まされている害虫問題に、22世紀の技術が様々なアプローチで応えているのは、ひみつ道具の面白さのひとつです。

集めたあと処理が大変

一箇所に大量に集まったゴキブリの処理をどうするか、それが大問題です。

1匹2匹ならスリッパでバンバン退治すればなんとかなりますが、数十匹単位で集まったゴキブリを前にすると、人は誰でもたじろぐことでしょう。

人からの嫌われ度No.1といっても過言ではないゴキブリの行く末は、いったいどうなるのでしょうか。

道具を使う前に、集めた後の処理方法をしっかりと考えておかなければなりません。例えば殺虫剤をあらかじめ用意しておく、あるいは密閉できる容器を準備しておくなど、後処理の計画が必須です。ジャイアンのように何も考えずに集めてしまうと、家がゴキブリの楽園になってしまいます。この道具の本当の怖さは、道具そのものではなく使い手の無計画さにあるといえるかもしれません。

また、この道具を屋外で使用した場合、街中のゴキブリが一斉に集まってくるという事態が起こりえます。ジャイアンが実際にやってしまったように、街を歩きながらふえを吹けば街中のゴキブリを引き連れることになります。それを自分の家まで連れ帰るというのは、自らゴキブリ屋敷を作り出す行為に他なりません。道具の使い方としてこれほど間違ったものはなく、ジャイアンの無邪気な行動が招いた惨事は、使う前にきちんと考えることの大切さを笑いの中に包んで伝えています。

ハーメルンのごきぶりふえという名前は、グリム童話ハーメルンの笛吹き男から来ています。ハーメルンの町からネズミを笛の音で誘い出した笛吹き男の伝説を、ゴキブリ版にアレンジしたというわけです。ネズミをゴキブリに置き換えただけで、誘導するという仕組みは同じですが、ゴキブリのほうがより現代的な害虫問題に即した設定といえます。童話の世界のロマンをひみつ道具に落とし込む藤子先生のセンスが光ります。

同じコミックプラス6巻にはセルフアラーム新聞社ごっこセットチリつもらせ機など、日常の様々な問題を解決しようとする道具が揃っています。害虫駆除という実用的なテーマを扱ったハーメルンのごきぶりふえは、この巻の中でも特に生活に密着した道具のひとつです。ただし、生活に密着しているからこそ、使い方を誤った時のダメージも大きいという点を忘れてはなりません。ジャイアンが道具を使って招いた大量のゴキブリという結末は、生活の利便性を高めるための道具が、扱い方次第で生活を著しく悪化させることもあるという教訓として読むことができます。道具に頼ることの便利さと危うさを同時に示したエピソードです。

ガチガチンのように性格を変えてしまう道具や、チリつもらせ機のように物を集める道具と同じ巻に収録されているのは興味深いです。いずれも何かを集めたり変えたりするという作用を持っており、コミックプラス6巻には変化・収集をテーマにした道具が多いという特徴があります。

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