対象者が欲しいものを分析し、目の前に出現させる道具、それがドラえもんのひみつ道具イメージ実体機です。相手の心の中を読み取り、望んでいるものをリアルに呈示することができるため、プレゼントや交渉の場面で絶大な効果を発揮する夢のような道具です。ただし使用するたびに費用がかかるという現実的な制約も持っています。
しずかちゃんが欲しいものをさぐれ
仲がいいしずかちゃんと出来杉くんに負けないよう、のび太はドラみちゃんの助けを借りてなんとかしようとします。イメージ実体機でしずかちゃんが欲しがるものをプレゼントして好感度を上げようとしますが、思うようにいきません。
そこにドラえもんも登場し、兄弟のライバル心がむき出しになるのです。
乗馬したいと思ったらこれ ドラえもんプラス4巻「ドラえもんとドラミちゃん」P183:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラえもんとドラみちゃんが兄妹でライバル心を剥き出しにするという珍しい展開になり、のび太のしずかちゃんへのアプローチはどこかへいってしまう結末に。イメージ実体機がせっかくの道具なのに、うまく活かされない皮肉な展開は、のび太エピソードの醍醐味のひとつです。
欲しいものを実体化
イメージ実体機を向けた人の心の中をさぐり、欲しがるものを実体化させる効果があります。欲しいなと思っていたものが突然目の前に現れたらビックリして嬉しがること間違いなしですよね。
欲しいものを実体化する性質上、相手が想定外のものを欲しがっていた場合には出てくるものも予想外になります。しずかちゃんが実は乗馬をしたいと思っていたなら馬が出てくるわけで、家の中に突然大きな馬が現れるというカオスな状況も起こり得ます。相手の欲求を正確に把握することの難しさと、予測不能な展開が同居しているのがイメージ実体機の面白さです。
また、実体化されたものは本物として扱われるのか、それとも一時的な幻影なのかによっても、プレゼントとしての価値が大きく変わります。本物として残るなら非常に有用ですが、幻影なら少々残念な結果になることも考えられます。
アンケーターの進化版
コミック28巻に登場したアンケーターも、他人が欲しいものを聞き出したり秘密をあばくことができました。
ただし欲しいものは自分で用意する必要があり、その点イメージ実体機のほうが数倍すぐれていてお手軽といえるでしょう。アンケーターは情報収集に特化しているのに対し、イメージ実体機は情報収集と実体化を一度に行うという、まさに進化版といえる道具です。
対象の心を読み取るという性質を持つ道具はいくつか存在します。テレパスロボットは相手の心を読む機能を持ち、モニターめがねはリアルタイムで状況を把握できますが、イメージ実体機はそれらを超えて心の中を読んで欲しいものを出現させるという一連の動作を自動でこなします。
また、複製系の道具としてクローニングエッグや立体コピー紙のように物を複製する道具もありますが、それらはあくまで既存のものをコピーするもの。イメージ実体機は心の中にあるまだ存在しないものを実体化させる点で、別次元の能力を持っているといえます。
高い使用料
ドラみちゃんいわく、イメージ実体機を使うたびに高い使用料がかかるとのこと。
いやに現実的な話 ドラえもんプラス4巻「ドラえもんとドラミちゃん」P182:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラみちゃんの懐事情は不明ですが、子ども向けマンガの設定で高いといえばせいぜい数千円ぐらい。おそらく1万円もいかないのではと想像します。例えばプリンターは基本的に交換インク代で稼ぎますし、ウォーターサーバーも水代が収入源です。未来のビジネスモデルも現代と大きく変わっていないようですね。
使用料が発生するということは、イメージ実体機を管理・運営する組織か製造者が存在するということでしょう。ドラえもんの世界では多くのひみつ道具が無料で使えますが、イメージ実体機のように課金制の道具が存在するのは興味深い設定です。
プレゼント選びの強力な助っ人
イメージ実体機の最もスマートな使い方は、プレゼント選びの参考にすることかもしれません。相手が本当に欲しいと思っているものをピンポイントで知れるわけですから、的外れなプレゼントをしてしまう心配がなくなります。
プレゼントした後に実はこれ、いらなかったんだよねという気まずい状況を防げるのは、人間関係において非常にありがたい機能です。また、交渉の場面でも相手が何を求めているかを事前に把握できれば、より有利な立場に立てるでしょう。
ただし使用料が発生するという点は見逃せません。頻繁に使うと家計に響きそうです。コピーロボットのように一度使えば何度でも使える道具と比較すると、コスト面での見劣りは否めません。使う場面を絞って、ここぞという時に使うのが賢い選択かもしれません。
のび太のようにしずかちゃんへのアプローチに使おうとして失敗に終わっても、イメージ実体機の能力は本物です。正しい使い方と適切な場面さえ選べば、コミュニケーションをグッと円滑にしてくれる一品です。
相手を知ることの大切さ
イメージ実体機が教えてくれることのひとつは、相手が本当に何を求めているかを知ることの大切さです。プレゼントを選ぶ時も、交渉をする時も、相手のニーズを正確に把握することが成功の鍵となります。
現実世界では相手の欲求を機械で読み取ることはできませんが、日頃から相手の話をよく聞き、行動を観察し、何に喜びを感じているかを理解しようとする姿勢がイメージ実体機的な役割を果たします。のび太がしずかちゃんの好きなものをイメージ実体機に頼らずとも知っていたら、もっとうまくいったかもしれません。
人の心を読む道具としてはテレパスロボットのような直接的なものもありますが、イメージ実体機は読み取った情報をすぐに実体化してプレゼントできるというワンストップな機能が強みです。相手を知り、そのニーズに応えるという一連のプロセスを自動化してくれる道具として、コミュニケーションの本質を考えさせてくれます。
未来のショッピング体験として
イメージ実体機を現代の視点で捉え直すと、究極のパーソナライズドショッピング体験ともいえます。現在のECサイトやAIがAIがユーザーの購買履歴や行動データからおすすめ商品を提示してくれますが、イメージ実体機は購買履歴ではなく今この瞬間の欲求を直接読み取るという点で、圧倒的に精度が高いシステムです。
欲しいと思ったものが目の前に現れるという体験は、消費者の購買欲求を根本から変革する可能性があります。需要が生まれた瞬間に供給が行われるというのは、経済学的にも非常に興味深い概念です。ただしそれが有料であるというドラみちゃんの話を踏まえると、欲しいものを実体化するサービスは課金モデルで成立するビジネスとして成り立つのかもしれません。
現代で言えばAmazonの思ったら即座に届くという体験に近いですが、イメージ実体機はそれをさらに進化させて思った瞬間に目の前に出現するというレベルに到達しています。未来の消費社会の姿を垣間見せてくれる、先進的なひみつ道具です。





