かげとりもちは、切り離した影を捕まえて貼り付けておくための道具で、かげきりばさみとセットで使ってはじめて機能する一品です。粘着力の強い特殊なもちで、逃げ回る影でもしっかり捕捉できます。
のび太の大失敗から始まる物語
コミック1巻「かげきりばさみ」のエピソードで登場します。パパから庭の草むしりを言いつけられたのび太が、ドラえもんのひみつ道具のかげきりばさみを借りて自分の影を切り取り、切り離した影に草むしりを命令するという計画を立てます。
ところが、のび太は草むしりが終わったあとも影を回収することをすっかり忘れていました。ドラえもんから影は30分だけ使ってよいと言われていたにもかかわらず、頭の中から綺麗に抜け落ちていたんですね。
30分を超えると影はだんだん自分の意識を持ちはじめ、本人と入れ替わろうとしはじめます。言葉もしゃべるようになり、逃げ回り、ずる賢い時間の経過を待つ厄介な存在になってしまいました。逃げ回る影を捕まえるためにドラえもんが取り出したのが、このかげとりもちです。
のび太に誤ってくっついてしまったかげとりもちは、その強力な粘着力でのび太を振り回し、それに気付かないドラえもんのせいで家の中がめちゃくちゃになってしまいます。強力な粘着力がかえって仇になったとも言えますが、さすが二十二世紀の道具、プンブン振り回してもくっついた相手から離れない粘着性はさすがです。
強力な粘着力
逃げる影を捕まえるために設計されているだけあって、かげとりもちの粘着力は並外れています。実体のある人間のび太(実体あり)にくっついたとき同様、影ののび太(実体なし)にもしっかりくっつきます。
実体のあるものもないものも、両方を捕まえることができるかげとりもちは、やはり不思議な存在といえるでしょう。同じく影を扱う道具として、影を記録して再生できる影とりプロジェクターや、影に実体を与えて使役できる影ぶんちんと影実体化液なども存在します。かげとりもちはその中でも、逃げる影を確実に捕捉するという特化した役割を持っています。
探偵・調査系の道具として、かげながらという遠隔から影を操作できる道具と組み合わせると、かなり広範な追跡活動が可能になりそうです。
見た目は普通のとりもち
この道具、見た目はごく一般的なとりもちの姿をしています。でも実体のない影を捕まえることができるということは、当然ながら普通のとりもちとはわけが違います。
よく考えてみると、かげとりもちは人間ののび太(実体あり)にくっついて、影ののび太(実体なし)にもくっつきます。実体のあるもの、ないもの、両方を捕まえることができるかげとりもちは、やはり不思議な存在です。
ところが、固定されているものには通用しません。地面に縫い付けられているような影には力を発揮できず、捕まえようとすると自分のほうが引き寄せられてしまう仕組みになっているようです。これはかげとりもちが動くものを追うための道具であることを示しているのかもしれません。
使い道は影を捕まえるだけか?
ドラえもんのシリーズでかげとりもちが登場するのは残念ながらこの1回のみです。果たして使い道は影を捕まえるだけなんでしょうか?
特徴的なのはなんといっても強力な粘着性の物質です。それを上手に使えば他の道もあるんじゃないでしょうか。
たとえば犯人を捕まえる道具として、小型化して鉄砲のような道具から発射するようにすれば、逃げる犯人を捕まえるための便利な道具に変身するでしょう。あるいは粘着性を少し弱めることで、子どもが投げてくっつけて遊べるおもちゃとして使えるかもしれません。現代でも販売されていますね。蚊やハエを寄せ付ける成分でおびきよせ、ネバネバの粘着物質でくっつけてしまうやつです。
未来の世界だと、これの強力版が開発されているかもしれません。
かげとりもちが活躍できるシーン
コミックでは1回しか登場しないかげとりもちですが、実は活躍できる場面は意外と多いはずです。のび太が影に余計な仕事をさせようとするシーンは他にも想定できます。
たとえば影に代わりに学校へ行かせようとする場面。影に授業を受けさせ、自分はゲームでもしながら家でのんびりするという計画は、のび太が考えそうなことです。ただしこの場合も30分の制限があるので、授業が1コマ終わる前に回収しに行く必要があります。かげきりばさみとかげとりもちのセットがあれば、この時間管理さえしっかりすれば実現できそうです。
また、スポーツの試合で影に参加させるという使い方も面白そうです。影が動き回ることで相手を撹乱できるかもしれません。ただし審判や観客に見破られるリスクもあるので、あくまでも練習用の使い方になるでしょう。
かげながらという道具と組み合わせれば、遠隔で影を操作しながらかげとりもちで回収するという高度な影の運用が可能になります。ドラえもんの影系の道具をすべて揃えると、影の制御というひとつのジャンルが確立できそうです。
影を使った道具が複数存在するということは、22世紀の科学において影の操作というのが研究された分野であることを示しているのかもしれません。光と影の関係を物理的に操作する技術が確立されたとすれば、それはエネルギー制御や量子光学の延長線上にある高度な科学だといえます。現代の技術でも光の制御は半導体や通信の分野で重要ですが、ドラえもんの世界では光だけでなくその影まで制御できるとしたら、それは現代科学をはるかに超えた技術体系を持っていることになります。
かげきりばさみとセットで持っておきたい
かげきりばさみとかげとりもちは必ずセットにして持っておきたいひみつ道具です。かげきりばさみを使う場合、このかげとりもちが揃わないのであれば、かげきりばさみは使うべきじゃありません。
影を作り出して30分を越えてしまうと、のび太のような危険な目に合ってしまうのですから……。
ドラえもんの道具の中には、影や複製に関する道具がいくつか存在します。影ぶんちんと影実体化液のように影に実体を持たせる道具や、影とりプロジェクターのように影を記録して投影する道具など、影という概念を様々な角度から扱っているのが面白いところです。かげとりもちはその中で捕捉という機能に特化していて、コンビを組むかげきりばさみと合わせて影の完全な制御を可能にしています。
影というものの不思議
そもそも影というのは実体のない現象です。光が遮られることで生じる暗い領域に過ぎません。それを切り取り、自律的に動く存在として扱い、さらに捕まえるための道具があるというのは、ドラえもんの世界観の豊かさを示しています。
コミックをよく読むと、切り離された影には独自の意思が芽生えることが描かれています。30分という時間制限が設けられているのも、おそらく影が自我を確立する前に回収するという安全設計なのでしょう。それを超えてしまうと、影は本人と対等な存在になり、入れ替わりを試みるまでに至るわけです。
こうした影の性質を考えると、かげとりもちという道具の重要性が改めてわかります。逃げ回る影を確実に捕まえるための強力な粘着力は、まさにこの用途のために設計された特化品なんですね。
影の扱いに慣れてきたら、ホームズセットのような総合的な探偵道具と組み合わせることで、さらに幅広い追跡活動が楽しめそうです。またうそ発見器と組み合わせれば、逃げた影が本物かどうかを見極めながら捕捉するという使い方もできそうです。



