ミミダケが録音した音声を再生するための専用プレイヤー、それがシャベリップです。花型の外見を持つ再生機で、葉の上にミミダケを乗せると花の部分から音が再生される仕組みになっています。ミミダケ・ミミダケの菌糸とセットで使うことで情報収集システムとして機能する、ドラえもんプラスならではのユニークな道具のひとつです。
ジャイアンとスネ夫をこらしめろ
のびたに隠れてこそこそ悪口を言うジャイアンとスネ夫の裏を取ろうと、のびたは空き地にミミダケの菌糸を仕掛けます。シャベリップで再生すると録音された音声で2人の陰口を確認したのびた。
たちの悪いいたずらである 出典:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄「ドラえもんプラス5巻「ないしょ話…」P28:小学館
ドラえもんによる反撃の始まりのときです! 録音した内容を証拠に、ジャイアンとスネ夫の計画を逆用する作戦が展開されます。のびたがやられっぱなりではなく、情報を先に持った側として優位に立てる珍しい展開です。
このエピソードはドラえもんプラス5巻ないしょ話…に収録されています。ミミダケとシャベリップのセットが揃って初めて情報収集システムが完結するという構造が、話全体のカギになっています。ミミダケの菌糸を仕掛け、ミミダケを育て、シャベリップで再生するという3ステップを経て、のびたはジャイアンたちの陰謀を知ることができたのです。普段のびたが一方的に被害を受けているだけに、この回は溜飲が下がる展開として読者に好まれているエピソードのひとつです。
ミミダケ専用のプレイヤー
ミミダケで録音した音を再生する専用プレイヤーがシャベリップです。
葉の上にミミダケを乗せると花の部分から音が再生される仕組みで、独特のアイデアに驚かされます。ミミダケというきのこを乗せる台として機能するだけでなく、その外見も植物に見立てたデザインになっています。屋外に置いても目立ちにくいという実用的な考慮がされているのかもしれません。
録音から再生まで一貫して植物や菌類のモチーフで統一されたセット設計は、ドラえもんのひみつ道具の中でも個性的な存在です。ないしょペンやこっそりカメラのように単体で録音・監視できる道具と比べると手間がかかりますが、目立たないという点では独自の強みがあります。
シャベリップという名前の由来は、おそらくしゃべるとリップ(唇)を組み合わせた造語でしょう。花の部分から音が出るというビジュアルと、しゃべるリップというネーミングが絶妙に合っていて、藤子F不二雄先生の道具名センスが光っています。ミミダケという耳をもじった名前と合わせると、音にまつわる道具として統一感のある命名になっています。
再生のみ可能?
見たところ、ストップ、早送り、巻き戻しなどボタンがなく、一方的に再生するだけの機能しかないと思われるシャベリップ。
葉の上に置くミミダケも不安定なバランスをしていますし、シャベリップを設置する場所も水平なことが求められ、正直使い勝手としては微妙なひみつ道具でしょう。普通の再生機器のように一時停止や早送りができないとすると、長時間録音した内容を確認するのはかなり大変です。必要な部分だけを聞きたくても最初から順番に再生するしかないということになりかねません。
また、複数のミミダケを乗せ換えながら再生する必要があるとすれば、整理整頓も一苦労です。うそ発見器のようにリアルタイムで情報を得られる道具と比べると、録音してから再生するというプロセスにタイムラグが生じることも弱点と言えます。情報の鮮度という観点では、リアルタイムで確認できる道具の方が優れていますが、証拠として記録しておけるという点ではシャベリップの方が役立つ場面もあります。
ひみつ道具の弱点を楽しむこともドラえもんの醍醐味のひとつで、完璧ではない道具だからこそ使い手の工夫が求められます。シャベリップもその制約の中でどう活用するかを考えることが、この道具をより深く楽しむことにつながります。
2つ乗せるとどうなるのか?
シャベリップに2つ以上のミミダケを同時に使うとどうなるのか試してみたいですね。
予想では音声がミックスされて再生されると思うのですが、そんなことをしても音はぐちゃぐちゃになって全く聞き取れないでしょう。複数の場所で録音した内容を同時に再生しようとすれば混線するのは当然です。複数のミミダケで録音した内容を整理して聞くためには、1本ずつ順番に乗せて再生するという地道な作業が必要になるでしょう。
情報収集を効率よく行うという観点では、ヘッドランプのように状況を一目で把握できる道具や、複数の場所の様子を同時に確認できる道具との組み合わせが理想的かもしれません。シャベリップ単体では得られる情報が音声のみに限られるため、用途に応じて他の道具で補完する必要があります。
時代に合わせて考えてみた
ドラえもんコミックが登場した時代は昔なので、これを現代版に置き換えて考えてみました。
まずミミダケは超小型ドローンにします。目に見えず、対象者の近くに浮かんでこっそり音声を録音します。録音が終われば自動的に使用者の元に戻りますが、戻る途中で使用者のスマホに音声データを自動送信し、スマホで音声を確認できるのです。
ミミダケ→ドローン
シャベリップ→スマホ
のように置き換えて考えると、使い勝手のいいひみつ道具になりそうですね。現代の技術で実現しようとすれば実は不可能ではない機能構成であり、ドラえもんの発想が時代を先取りしていたとも言えます。ただし実際にそのような用途で使用することは法律上の問題が生じる可能性があるため、あくまでひみつ道具としての話として楽しみましょう。
ドラえもんプラスに登場するひみつ道具は、メインシリーズと比べると地味で実用性が曖昧なものも多いのですが、シャベリップはミミダケとセットで使うことで情報収集というわかりやすい目的に特化しています。道具単体では完結しないという特徴が、逆にミミダケ・ミミダケの菌糸・シャベリップという3点セットとしての面白さを生み出しています。
ドラえもんのひみつ道具には単体で完結するものと、複数の道具が組み合わさることで真価を発揮するものがあります。シャベリップは後者の典型で、セットを揃えてこそ意味が生まれる道具です。コレクションとして揃える楽しさという観点でも、ミミダケシリーズはファンに愛されている道具群と言えるでしょう。
ドラえもんプラスは通常のドラえもんコミックに収録されなかった作品をまとめたシリーズで、全6巻が発行されています。シャベリップが登場するのはプラス5巻で、ミミダケ関連道具が一話の中に揃って登場するという贅沢な構成になっています。これらの道具を通じてのびたが諜報活動を行い、ドラえもんと一緒に反撃するという展開は、普段とは一味違うのびたの側面を見せてくれます。
情報を持つことが力になるというテーマは、子どもにとっても大人にとっても普遍的なものです。シャベリップはその情報を確認するための最終ステップを担う道具として、ミミダケシリーズのクライマックスに位置しています。地味ながらも重要な役割を果たすこの道具は、ドラえもんプラスを読んだ人だけが知るひみつ道具の魅力を体現しています。
ドラえもんのひみつ道具の中には、メインシリーズでは登場しないプラスシリーズ独自の道具が数多くあります。シャベリップはその中でもミミダケシリーズという独自のグループを形成していることが特徴的です。一つの話の中で複数の関連道具が登場するというエピソード構成は、通常のドラえもんコミックとは異なる読み味を提供しています。ドラえもんプラスをまだ読んでいないドラえもんファンには、ぜひ一度手に取ってほしいシリーズです。



