ケロンパス

体に貼るだけで疲労感を吸い取り、さらに他人に移せてしまうひみつ道具、それが「ケロンパス」です。名前の響きがどことなく湿布薬を思わせますが、効果は現実の薬品とはまったく別次元の話です。貼るだけで体に蓄積された疲れがごっそりなくなり、元気な状態になれるという夢のような道具ですが、使い方次第では大変なことになってしまいます。コミックプラス6巻に収録されたこのエピソードは、便利な道具の使い方を誤ることの怖さを教えてくれる一編でもあります。

のび太を裸っぽりにしよう

寒さを理由に外に出たがらないのび太。運動不足を解消するため、ドラえもんはケロンパスを使うことにしました。のび太の体に貼ると、それまで感じていた疲労感がごっそり吸い取られてすっきりした状態になります。

さらにそのケロンパスを別の人に貼り付けると、溜め込んだ疲労をそのまま移せるという仕組みです。貼って、剥がして、また別の人へ。疲労感というものが物理的にやり取りできる世界観は、ドラえもんならではの発想です。

ケロンパス
貼るだけでOK

ドラえもんプラス6巻「ケロンパス」P108:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ところがのび太は、いろいろな人の疲労をケロンパスに貯めて移そうとしました。ジャイアン、スネ夫、しずちゃん、お母さん……集めた疲労はなんと36人分にもなります。一度にそれだけの疲労を受け取ったのび太はヘロヘロになってしまい、立ち上がれなくなってしまったのでした。

36人分というのは相当な数です。1人分の疲労でさえそれなりの体への負担があるのに、それを36倍一度に受け取るというのは、通常の人間にとって到底耐えられる量ではないでしょう。のび太がへたり込んでしまったのも当然です。

疲労の移動というアイデア

ケロンパスの基本的な仕組みは、体に貼ると疲労感を全部吸収して元気いっぱいになれる、というものです。さらにそのケロンパスを他人に貼れば、溜まった疲労ごと移すことができます。

単に疲れを感じなくするだけでなく、運動による体へのプラスの影響も一緒に移してしまいます。運動すると筋肉への刺激や基礎代謝の向上といった効果がありますが、ケロンパスはそういった部分まで丸ごと動かしてしまうのがポイントです。元気になるだけでなく、運動の恩恵までセットで消えてしまうとしたら、使いどころを考える必要がありますね。

疲れというものを「物質として扱える」発想は、ドラえもんの道具の中でも独特のジャンルです。ウソ800バイバインのように、人間の感覚や状態を操作する道具は数多くありますが、ケロンパスは「疲労の受け渡し」というユニークな切り口を持っています。貼る・剥がすという動作だけで完結するシンプルさも、使いやすさのひとつです。

一度に集めると危険

1人分の疲労でも体への影響は大きいですが、ドラえもんのように36人分もの疲労感を一度に集めてしまうのは危険な行為です。

ケロンパス
驚異的な数である

ドラえもんプラス6巻「ケロンパス」P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

疲労を分割して移すことができればよかったのですが、そこまで詳しい描写はなく、貯まった分だけ一度に移動してしまうようです。

考えてみると、36人分の疲労を一人の人間が受け取るというのは、通常では到底起こりえない状況です。疲労を分散させるために使うはずの道具が、逆に集中させてしまったことでのび太が痛い目を見るオチは、ドラえもんのお話に頻繁に登場するパターンでもあります。便利な道具を正しく使えばいいのに、欲張りすぎてひどい目に遭うというのは、のび太の一貫したキャラクターとも言えます。

適度な疲労感ならそのままが良い

軽く運動した後に感じる適度な疲労感には、リラックス効果があると言われています。筋肉への刺激や気分転換、健康維持のための疲労感は受け入れられるべきもので、そこまでケロンパスで吸い取ってしまうのはもったいないと感じます。

過度な負荷は逆効果ですが、気分転換や健康維持のための疲労感を感じることは自然なことです。ケロンパスは便利な道具ではありますが、使いすぎると今回ののび太のような結果になりかねません。

四次元ポケットにはアンキパンスモールライトなど様々な道具がありますが、体の状態を操作するという意味ではケロンパスはとりわけ個性的な一品です。体に直接働きかける系の道具という点では、スグナオールのような怪我を即座に治す道具とも比較できます。スグナオールが「損傷を修復する」のに対し、ケロンパスは「疲労という感覚を移動させる」という違いがあります。

疲労販売という新しい営業

将来は疲労感を販売する営業も存在しているでしょう。

疲労の度合いに応じて値段が変わり、ニーズがマッチすれば大きなビジネスチャンスにつながる可能性があります。有名人の疲労感などプレミアがつけば値段も上がるでしょうし、運動不足解消・生産性向上などメリットも大きそうです。

現代でも、マッサージや整体など疲労を取り除くサービスは大きな市場を持っています。ケロンパスがあれば、疲労をもらいたい人ともらいたくない人をマッチングさせるだけで成立する新ビジネスになるかもしれません。運動不足の人が、体を酷使したアスリートの疲労を買い取って自分のトレーニング効果に変換するという使い方もできそうです。

ケロンパスという道具の名前が「ケロリ」という言葉を連想させる点も興味深いところです。ケロリと疲れが消える、という意味合いが込められているのかもしれません。ドラえもんのひみつ道具は名前のセンスも独特で、道具の特徴を短い言葉でうまく表現しているものが多くあります。

疲労の価値について考える

ケロンパスで疲労を完全になくすことができるとして、それは本当に理想的な状態なのでしょうか。疲れを感じるからこそ休息の大切さがわかり、疲れを経験するからこそ体が強くなるという側面もあります。

疲労はネガティブなものとして捉えられがちですが、達成感の裏返しでもあります。一生懸命取り組んだ後の疲労感には充実感が伴います。ケロンパスで全ての疲労をなくしてしまえば、そういった達成感も薄れてしまうかもしれません。

適度な疲労を残しつつ、過度な疲労だけを取り除くという使い方ができれば理想的です。たとえばスポーツや仕事で100%の力を出した後に、回復に必要な最低限の疲労だけ残して余分な疲れを取り除くという使い方なら、翌日も同じパフォーマンスを出せるでしょう。

ケロンパスの使い方まとめ

ケロンパスを正しく活用するためのポイントをまとめると、まず自分の疲労を取り除きたい時に体に貼る、次に疲れを感じていない状態で活動する、そして疲労が貯まったケロンパスは適切な相手に移すか廃棄する、という流れになります。

36人分の疲労を一人に集めるような使い方は避け、少量ずつ分散して移すことが安全な運用方法といえるでしょう。貼った後に元気になった状態で運動すると、その運動の疲労もケロンパスが吸収し続けるため、際限なく動けるようになってしまう可能性もあります。過剰な使い方は体への影響が読めないため、適切な範囲での使用が求められます。

体に関する道具という意味では、チータローションイナヅマソックスのように身体能力を強化する系の道具と組み合わせると、さらに高い効果が期待できます。ケロンパスで疲労をゼロにしてからチータローションを塗れば、最高のコンディションで活動できそうです。

おすすめの記事