連呼マシン

他人に特定の言葉を連呼させることができる道具、それがドラえもんのひみつ道具連呼マシンです。アンテナを向けられた人は日常会話の中でその言葉を不自然に繰り返すようになる効果があり、本来は選挙の立候補者の名前を覚えてもらうために作られた道具です。選挙カーが名前を繰り返すような現実の選挙活動を風刺した、藤子F不二雄先生らしいユニークな道具です。

のび太の名前を呼ぶしずかちゃん

出来杉くんと仲がいいしずかちゃん。のび太はなんとしずかちゃんの気を引こうと、ドラえもんとドラみちゃんの力を借ります。ドラえもんは連呼マシンでのび太の名前をしずかちゃんに連呼させて意識してもらおうとしますが失敗。

連呼マシン
かなり強引な効果

ドラえもんプラス4巻「ドラえもんとドラミちゃん」P184:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

2人の戦いはエスカレートし、過激な兄弟喧嘩に発展していきます。しずかちゃんへのアプローチを試みたはずのシーンが、ドラえもんとドラみちゃんの兄妹バトルに変わってしまうという展開は、このエピソード全体を通じて繰り返されるコミカルなパターンです。

本当は選挙用の道具

連呼マシンは他人に特定の言葉を連呼させる効果があり、本来は選挙で立候補者の名前を覚えてもらうために使うものです。

アンテナを向けられた人は日常会話の中でその言葉を連呼するようになります(しずかちゃんの場合はのび太)、明らかに不自然になります。果たしてこれで得票率が上がるのか、逆効果な気もしますけどね。

現実の選挙カーが候補者の名前を繰り返し叫んでいる光景と重なる部分があり、藤子F不二雄先生の鋭い社会観察眼が感じられるひみつ道具です。選挙という民主主義の根幹となる行為に対して、ひみつ道具で有権者を操作できてしまうとしたら?という問いを投げかけているようでもあります。

CMキャンディの劣化版

周囲に商品をアピールして購買意欲を高めるCMキャンディ発射機がありますが、連呼マシンはその劣化版といえるでしょう。

関連ひみつ道具

このおかげでジャイ子の虹のビオレッタ(マンガ)が飛ぶように売れましたね。連呼マシンでは名前が会話の中に不自然に登場するだけで特別な効果はなく、むしろ迷惑がられることは間違いありません。CMキャンディ発射機が周囲の人全員に訴求する広範な効果を持つのに対し、連呼マシンはピンポイントで特定の人に言葉を刷り込むという、より直接的なアプローチです。

情報を相手に届けるという観点からはないしょペンのように秘密のメッセージを伝える道具や、ソノウソホントのように言葉の真偽を操作する道具など様々なアプローチがあります。しかし連呼マシンのように繰り返し言わせるという強引な手法はドラえもんの道具の中でも異色の存在です。

よくわからない効果音

連呼マシンを照射する時の音はヘラヘラヘラヘラーです。

連呼マシン

ドラえもんプラス4巻「ドラえもんとドラミちゃん」P184:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

なんとも情けないというか気が抜ける音ですね。重要な道具のはずなのに、効果音がこれではあまり威厳を感じません。ひみつ道具の効果音は往々にして道具の性格を表していることがありますが、連呼マシンのヘラヘラヘラヘラーという音は、この道具の持つなんだか間の抜けた効果をよく表しているのかもしれません。

言葉の力で相手の意識に刷り込む

連呼マシンの根底にあるのは繰り返し聞かせることで記憶に刷り込むという心理学的なアプローチです。テレビCMや広告が繰り返しキャッチフレーズを流すのと同じ原理ですが、連呼マシンの場合は相手の口から直接言わせてしまうという点で、かなり強引な手法といえます。

現代のマーケティングにおいても、同じキャッチコピーを繰り返すことで消費者の記憶への定着を図る手法は確かに有効とされています。しかし他人に強制的に言わせるというアプローチは、本人の意志に反した行動を引き起こすという倫理的な問題も持っています。

言葉による影響という点ではSOSはっしんきのように助けを求める信号を送る道具や、ソノウソホントのように言葉の真偽を操作する道具など、ドラえもんの世界では言葉や情報に関する道具が充実しています。連呼マシンもその一つとして、選挙や宣伝という現実社会の問題を風刺した道具として興味深い存在です。

のび太のようにしずかちゃんの気を引くために使っても逆効果になるのはご覧の通りですが、本来の目的である選挙活動での名前の浸透という目的には、多少なりとも効果があるかもしれません。ただし不自然に繰り返すという使い方では、候補者のイメージダウンにもつながりかねないので、使い方には十分な注意が必要です。選挙での活用を想定して作られた道具ですが、結局のところ誠実な政策訴求のほうが有権者の心を動かすのかもしれません。

繰り返しの心理学

連呼マシンの背後にある繰り返すことで記憶に定着させるという原理は、心理学的に単純接触効果と呼ばれる現象に基づいています。人は同じものを繰り返し見たり聞いたりすることで、それに対して親しみや好意を感じやすくなります。

選挙カーが候補者の名前を繰り返し叫ぶのも、テレビCMが同じフレーズを何度も放送するのも、この効果を狙ったものです。連呼マシンはその効果を他人の口を借りて発揮させようというもので、通常の単純接触効果よりも強烈な刷り込みを狙っているといえます。

ただし不自然な繰り返しは逆効果になることも心理学的に知られています。明らかに変だと感じる行動を目の当たりにすると、人はそれを警戒したり嫌悪感を持つことがあります。しずかちゃんがのび太という名前を不自然に繰り返すのを見て、周囲が何かおかしいと感じてしまうようでは意味がありません。連呼マシンが最大の効果を発揮するには、連呼する言葉と状況が自然に調和している必要がありそうです。

言葉を刷り込む道具の系譜

連呼マシンのように言葉や情報を相手の意識に植え付けようとするひみつ道具は、ドラえもんの世界でいくつか登場しています。それぞれ異なるアプローチを取っており、連呼マシンは繰り返し言わせるという最もシンプルで原始的な手法を採用しています。

より洗練された方法としてはCMキャンディ発射機のように商品を魅力的に見せて購買意欲を高めるものや、SOSはっしんきのように緊急信号を送る道具もあります。これらと比べると連呼マシンは効果の確実性が低く、副作用(不自然さ・迷惑感)が出やすいという点で、道具としての完成度はやや低いといえるかもしれません。

しかしだからこそ連呼マシンはコミカルな結果を生み出しやすく、のび太エピソードのオチとして機能しています。完璧に効果的な道具よりも、使い方によっては滑稽な結果になるという不完全さが、この道具の物語的な魅力につながっています。

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