『せん風機』は、見た目こそ小型の扇風機ですが、学校を吹き飛ばせるほどの風を起こすひみつ道具です。涼むための家電ではなく、使い方を間違えると建物ごと破壊しかねない危険な風力装置です。
ドラえもんがのび太の学校を吹き飛ばそうとして出した道具で、のび太本人が青ざめるほどの威力を持っています。
学校を吹き飛ばす目的とは
ドラえもんが何の考えもなしに、いきなり学校を吹き飛ばすわけがありません。
これにはちゃんと理由があり、のび太が学校のテストを受けたくないため、学校を吹き飛ばせばテストもないという、なんとも安直なことがきっかけだったんです。
ドラえもんはもともと、のび太を真人間にするために未来からやってきたはず。
にも関わらず、のび太以上に突飛押しもないこともやっていたのでは、ドラえもんがいる意味がありませんよね。
この場面は、ドラえもんが教育係でありながら、時々のび太より大胆な解決策を出してしまう面白さがあります。テストを避けるために学校そのものをなくそうとする発想は、便利を通り越して危険です。
のび太も青ざめる
これにはさすがののび太もびっくりしてしまい、顔を真っ青にしてドラえもんを止めようとします。
笑顔のドラえもんに恐怖を感じる ドラえもん2巻「テストにアンキパン」P7:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太を教育する立場のドラえもんが、逆に諭される珍しいシーンです。
のび太は勉強嫌いですが、学校を吹き飛ばすほどのことは望んでいません。ここで止める側に回ることで、のび太にも最低限の常識があることがわかります。普段はのび太が叱られる側ですが、この場面ではドラえもんのほうが危険な方向へ進んでいます。
せん風機の威力を考える
ドラえもんが出した『せん風機』は、見た目はただの卓上扇風機にも見えます。
しかし学校を吹き飛ばすほどの力があるので、いわゆる羽で風を送るだけの普通の扇風機とは違うことがわかります。
例えば、2003年に沖縄へ猛烈な台風14号が上陸した時、学校の体育館の屋根が吹き飛ばされたり、ガソリンスタンドの屋根が壊れたりしました。
瞬間風速は90m毎秒あったともいわれる風でしたが、それでも屋根が吹き飛んだ程度です。
もし学校そのものを吹き飛ばすなら、建物の構造を壊し、壁や柱や屋根をまとめて動かすほどの力が必要になります。せん風機は単なる強風ではなく、建物を破壊する災害級の風を局所的に発生させる道具と見たほうが自然です。
このサイズでそれだけの風を出すなら、周囲への影響もかなり大きいはずです。学校だけを狙って風を当てるのは難しく、近くの家や電柱、歩いている人まで巻き込まれる可能性があります。
子どもがイタズラに使うレベルではない
大災害を引き起こしかねない危険なひみつ道具『せん風機』。
二十二世紀ではこんな怖いものが流通しているんでしょうか。
もしかすると未来の世界では、せん風機を使うためにはライセンスが必要で、持ち手の部分に特殊センサーが内蔵され、使用者を識別して使用可否を判断している可能性もあります。
ライセンス制であればある程度安心できるものの、学校を吹き飛ばそうとしたドラえもんの行為は、それに違反する可能性もありますよね。
そもそも、テストを避けるために使うにはあまりに過剰です。のび太の困りごとは勉強不足であり、学校の存在ではありません。問題の原因を取り違えたまま強力な道具を使うと、解決どころか被害だけが広がります。
バショー扇よりも強力かも
ドラえもんのひみつ道具には『バショー扇』があります。
風の強さや香りを調整し、扇で仰ぐと自由に風を引き起こす便利な道具です。
コミックの最後では、バショー扇を持ったドラえもんが家の中で転び、その弾みで発生した台風が家の中で暴れまわる様子が描かれています。
さぞかし家の中はめちゃくちゃだろう ドラえもん38巻「バショー扇の使いみち」P119:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太の家は借家で、建築からかなりの年数が経っているにも関わらず、家の中で発生した台風によって家が破壊されている様子はありません。
せん風機はバショー扇のように風の種類を調整する機能はなさそうに見えます。
細かい調整ができない代わりに、パワーだけで見れば、学校を吹き飛ばすせん風機の方が上ということがわかりますね。
バショー扇は風を操る道具、せん風機は風をぶつける道具という印象です。どちらも風を扱いますが、用途の幅と危険性はかなり違います。せん風機は小型なのに破壊力へ寄りすぎています。
ほかにも風を扱う道具として『風神うちわ』があります。風神うちわは船を進めるために使われる場面があり、風を移動の力として使っています。せん風機はそれよりさらに乱暴で、対象を動かすというより吹き飛ばすための道具に見えます。
同じ風でも、涼む、進む、飛ばす、壊すでは意味が大きく違います。せん風機は名前だけ聞くと日用品ですが、実際の効果は防災や軍事レベルに近いです。ドラえもんが気軽に出してしまうところに、この道具の怖さがあります。
正しい使いみちを考える
せん風機が現代に開発されれば、色々と便利に使えそうです。
- 被災地などのがれき撤去作業
- 風力発電
- 災害対策の実験
- ロケット開発
圧倒的な風力を活かし、クリーンエネルギー事業に役立ちそうです。
タービンが壊れない程度に最大効率で回して発電できそうですね。
ロケット事業も面白そうな分野です。せん風機を取り付けたロケットであれば、燃料がなくても空を飛べます。
ただし、実用化するなら風向きと出力制御が最重要です。少し角度を間違えれば、目的地へ進むどころか機体を横転させます。強い風を出せることより、必要な場所へ必要な強さだけ送れることが大切です。
正しく使えば便利そうなせん風機。果たして実現するでしょうか。
アンキパン回の異常なテンション
せん風機が登場するのは、テストにアンキパンの冒頭です。アンキパン自体は覚えたい内容を食べて暗記する便利な道具ですが、その前段階で学校を吹き飛ばす案が出てくるため、話のテンションがいきなり高くなっています。
普通なら、テスト対策として勉強する、暗記道具を使う、先生に相談する、といった方向へ進みます。ところがドラえもんは一度、学校そのものを対象にしてしまいます。問題の根本を消す発想は、ひみつ道具の使い方としてかなり危険です。
このあとアンキパンという比較的穏やかな道具へ話が移るため、せん風機の過激さは余計に目立ちます。読者にとっては短い登場でも、ドラえもんが持つ道具の幅広さと危なっかしさを一気に示す場面です。
家庭用に見える怖さ
せん風機は、見た目が小型扇風機に近いからこそ危険です。大きな兵器や重機なら、子どもも周囲の大人も警戒します。しかし普通の家電に見える道具なら、うっかりスイッチを入れてしまう可能性があります。
未来の道具には、こうした見た目と威力の差がよくあります。小さい、軽い、かわいい、日用品に見える。そうした外見のまま、実際には巨大な力を出すから騒動になります。せん風機もその典型です。
もし現実に近い運用をするなら、出力ロックや使用場所の制限が必要です。室内では低出力しか出ない、建物や人を検知すると停止する、資格のある人しか最大出力を使えない。そこまで制御しないと、便利道具ではなく災害発生装置になってしまいます。
名前は穏やかでも、扱う力は穏やかではありません。




