強力ウルトラスーパーデラックス錠

強力ウルトラスーパーデラックス錠は、飲むだけでスーパーヒーローのように強くなれるひみつ道具です。試供品だと効き目はわずか3分しかありませんが、正規品を飲めばトラックを持ち上げたり空を飛んだりするほどのパワーを発揮できます。体の大小や年齢を問わず、飲んだ人間を問答無用で強くしてしまう、恐ろしいほど強力な一品です。

子供に支配される世界

ケンカが弱いのび太は強くなりたいと日頃から考えています。ジャイアンにいつも殴られ、スネ夫にもからかわれる毎日の中で、力が欲しいという気持ちは常にあるのです。そんな中、未来からやってきた販売ロボットが押し売りにきたのが強力ウルトラスーパーデラックス錠の試供品でした。試しに飲んでみると効き目は本物。たった3分でしたが、空を飛べるほどのパワーを実感したのび太は正規品を購入することを決めます。

ドラえもんに黙ってこっそり購入した点も、のび太らしいところです。ドラえもんに相談すれば止められると思ったのでしょうか。それとも自分だけの秘密にしたかったのか。いずれにせよ、この隠し事がその後の騒動の直接的な原因になります。

購入した錠剤を、しずかちゃんのいとこの幼い男の子が誤って飲んでしまったから大変です。まだ言葉もろくに話せない幼児が、トラックを持ち上げるほどのパワーを手に入れてしまったのです。街中で暴れまわる男の子を抑えるべく、のび太としずかちゃんが子守唄でなだめようとしますが、そう簡単にはいきません。

強力ウルトラスーパーデラックス錠
最強の男児の誕生である

出典:ドラえもんプラス5巻「強力ウルトラスーパーデラックス錠」P172:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

無敵のスーパーマンになれます

強力ウルトラスーパーデラックス錠を飲むだけで力が漲り、空を飛んでまるでスーパーマンのような人間になれます。試供品だと効き目はわずか3分しかないため、正規品と比べると持続時間は大幅に短くなっています。

ドラえもんのひみつ道具の中でも、自分自身が強くなるタイプの道具です。空気ピストルペンシルミサイルのように外部から力を借りる道具とは異なり、飲んだ人間自身がパワーアップするという仕組みが特徴的です。見た目は普通の錠剤なのに、その効果は22世紀の技術力を凝縮したものになっています。

正規品の持続時間については作中で明確には描かれていませんが、試供品の3分と比べれば相当長く効くと考えられます。飲んだ後に何かをする必要もなく、全身が自動的にパワーアップしていくため、手軽さという点では四次元ポケットのひみつ道具の中でもトップクラスといえます。

凄まじい効き目

強力ウルトラスーパーデラックス錠がもたらす効果は凄まじく、小さな男の子がトラックや車を軽々と持ち上げたり、その気になればビルや鉄塔を破壊することも可能なほどのパワーになります。さらに空を飛ぶことまでできるようになるのですから、まさにスーパーマンそのものです。これほどの効果が錠剤一粒から得られるとは、22世紀の薬学はどれだけ進歩しているのか、と思わずにはいられません。

強力ウルトラスーパーデラックス錠
恐ろしい光景

出典:ドラえもんプラス5巻「強力ウルトラスーパーデラックス錠」P173:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

小さい子供が何をしでかすかわからないため、力を得た状態だと周囲にとって非常に危険な存在になってしまいます。大人ですら力を得ると行動が変わることがあるのに、善悪の判断がまだ育っていない幼児に強大なパワーを持たせるのは、本当に恐ろしいことです。このエピソードはその怖さをコミカルに、しかし的確に描いています。

また、正規品を未来から購入したという点も興味深いポイントです。22世紀ではこのような強化薬が市販されているということになりますが、それが現代(のび太の時代)にまで売りに来るということは、需要があると見込んだ商売ということでしょうか。未来の商売の倫理観というものも、なかなか考えさせられます。

のび太の最低な発想

どうしてもケンカに勝てないのび太は自分より弱い存在を探します。ジャイアンには勝てない、スネ夫にも勝てない、では誰なら勝てるのかと考えた末に行き着いた先が、まだ言葉もろくに話せない幼い男の子でした。幼児相手なら勝てると発想するあたり、のび太の発想の低さがよくわかります。強くなりたいという願望が、弱い相手を探すという方向に向かってしまうのです。

強力ウルトラスーパーデラックス錠
人間失格の一歩手前だった

出典:ドラえもんプラス5巻「強力ウルトラスーパーデラックス錠」P167:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

結局その男の子はしずかちゃんの親戚の子だとわかるとやらなくてよかったと一安心するのび太。この安心感の理由がしずかちゃんに軽蔑されなくて済んだという点にあることを考えると、のび太の思考のポイントが根本的にずれていることに気づきます。幼い子にケンカをしかけることの問題ではなく、しずかちゃんにどう見られるかしか頭にないのです。倫理的に問題のある行動を、別の理由から思いとどまるというのは、結果オーライではあっても反省とは程遠い状態です。こういう場面でのび太の人間的な未熟さが、笑いの中にリアルに描かれています。

力を手に入れることへの強い欲求と、それを誤った方向に使おうとする浅はかな発想は、チャンピオングローブペンシルミサイルを使おうとした時と根本的に同じです。道具があれば問題が解決すると思い込み、自分自身を変えようとしないのび太の姿が、このエピソードでも繰り返し描かれています。強くなりたいという願望自体は誰でも持つものですが、その手段として赤ちゃんを狙おうとするあたりに、のび太の発想の歪みが集約されています。

同じコミックプラス5巻には自動しかえしレーダー強力ウルトラスーパーデラックス錠をきかなくするくすりも登場し、この巻のテーマは一貫して力への欲求とその代償です。強くなろうとするたびに問題が起きて、さらに別の道具が必要になるという連鎖は、ひみつ道具への依存が問題を根本解決しないことを繰り返し示しています。のび太がどれだけ道具を積み重ねても、問題の根本であるのび太自身の姿勢が変わらない限り、同じパターンが繰り返されるわけです。それがこのシリーズの笑いの源泉でもあり、同時に読者が少し考えさせられる部分でもあります。

他の体力強化系の道具と比べると、この錠剤は非常に強力な部類に入ります。飲むだけという手軽さと、スーパーマン並みの能力というギャップが、22世紀の薬の恐ろしさを体現しています。正しく使えば素晴らしい道具でも、使う人間の器次第でその効果は善にも悪にもなり得る、ということをこのエピソードは教えてくれています。

もし強力ウルトラスーパーデラックス錠を正しく使うなら、たとえば救助活動や重い荷物の運搬、体の不自由な人の補助など、さまざまな場面で役立てることができるはずです。のび太がそれを幼児へのケンカに使おうとしたことを考えると、道具の可能性を自らの小ささで潰してしまっているといえます。ひみつ道具は道具そのものではなく、使う人間の想像力と意志によって価値が決まるという、ドラえもん全体を貫くテーマがここにも見えています。

なお、この道具の効果を打ち消すための強力ウルトラスーパーデラックス錠をきかなくするくすりも同じ話に登場します。強力な道具が登場したら、それを止める手段もセットで存在するというのは、ドラえもんのひみつ道具の世界では珍しくないパターンです。それだけこの錠剤の効果が強力で、管理が必要だということの裏返しでもあります。

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