動物(人も含む)に食べさせると、食べさせた人と同じ顔に変身してしまう「そっくりペットフード」。ペットと顔を揃えてファミリー感を演出するというコンセプトで未来から届いた広告に興味津々ののび太が、大変なことを引き起こしてしまいます。コミックプラス6巻「そっくりペットフード」に収録されたこのエピソードは、変身系道具の中でも特に混乱を招く一品として記憶に残ります。見た目は普通のペットフードなのに、食べた動物がその与えた人そっくりの顔になるという効果のギャップが、このエピソードの笑いの核心です。ペットを飼う側と飼われる側の境界線を曖昧にするというコンセプトは、未来的でありながら非常に変わった発想です。変身系ひみつ道具の中でも食べ物という形式を取っている点がそっくりペットフードの特徴であり、気づかないうちに食べさせることができるという意味でも使い勝手に独自性があります。
恐怖のドラドラワールド
未来から送られてきたそっくりペットフードの広告に興味津々ののび太は、ドラえもんに内緒でひみつ道具を注文し、大変なことになってしまいます。
本当に面白そうなのか? ドラえもんプラス6巻「そっくりペットフード」P171:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太のいたずらを制止すべくドラえもんが向かいますが、道中そっくりペットフードをばら撒いてしまったからさあ大変!街中がドラえもんの顔をした動物だらけになってしまったのでした。
街中の動物が全員ドラえもんの顔をしているという光景は、かなりシュールで不気味です。ドラえもん自身も自分の顔をした動物があちこちにいる状況に困惑したことでしょう。この大混乱を収めるためには、ペットフードの効果を元に戻す手段が必要になります。
動物の顔が変身
そっくりペットフードを動物や人に食べさせると、食べさせた人と同じ顔になってしまう、ある意味恐怖を感じるひみつ道具です。
持続時間は不明ですが、元に戻す復元フードも用意されています。
食べさせた相手の顔が自分そっくりになるという効果は、一見すると楽しそうに見えますが、街中の動物に一斉に効果が及んでしまうとパニックになります。効果の範囲を限定して使うことが重要で、意図しない対象に食べられてしまわないよう管理には十分な注意が必要です。
本当の家族とはいうけれど
未来の世界では見た目を同じにしてペットと本当の家族になろうという話題を集めている(集めようとしている?)らしいのですが、個人的感覚としてこれはナシでしょう。
こんな家族がいいだろうか? ドラえもんプラス6巻「そっくりペットフード」P171:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ペットは今のままでも家族の一員として受け入れられているはずで、見た目が同じだからといってそれがきっかけになることはないでしょう。
動物虐待と捉える人もいるでしょうし、周りからも気持ち悪がられるだけで、メリットらしいメリットが見いだせないひみつ道具です。ペットとの絆は外見の類似ではなく、共に過ごした時間や愛情から生まれるものだという当たり前のことを、この道具は逆説的に教えてくれます。
言葉は話せない
見た目は人間そっくりでも言葉を話したり意思疎通がはかれるわけではありません。
単純に人面犬や人面猫、人面象などゾッとする生き物が生まれてしまうだけなのです。
のび太はそっくりペットフードをとても素晴らしいひみつ道具と捉えて使っていたようですが、なかなかメリットを見いだせませんね。
変身系の道具という観点で見ると、動物変身ビスケットのように人間が動物に変身するものや、へんそうセットのように自在に変身できる道具と比べると、そっくりペットフードは変身の方向性が非常に特殊です。他の変身道具が「変える主体」を選べるのに対し、こちらは「食べた側が一方的に変わる」という点で制御が難しい道具といえます。アベコンベのように入れ替わる道具とも似た混乱を招く可能性があり、変身系道具は使い方を誤るとカオスな状況を生み出すことがよくわかります。
ばら撒きによる大混乱
のび太のいたずらを止めようとしたドラえもんが、道中でそっくりペットフードを大量にばら撒いてしまうという展開は、このエピソードのハイライトです。一人の悪ふざけが、気づかないうちに大騒動へと発展するというパターンは、ドラえもんのコミックで何度も見られる展開です。
街中の動物がドラえもんの顔をしているという状況は、見た目のインパクトだけでなく、ドラえもん自身にとっても複雑な気持ちを引き起こすでしょう。自分の顔をした生き物が大量にうろついているのを見て、平常心を保つのは難しいはずです。
このような二次被害を防ぐためには、道具の使用時に周囲への影響を事前に確認することが重要です。特にそっくりペットフードのように、食べた対象に直接影響が出る道具は、誰が食べるかわからない場所では使用を避けるべきでしょう。
復元フードについて
そっくりペットフードとセットで存在する復元フードは、変身してしまった動物を元の姿に戻すための対処道具です。いつでも元に戻せるという安心感があるからこそ、そっくりペットフードも発売できるのでしょう。
変身させる前に復元フードを手元に用意しておくことが、そっくりペットフードの正しい使い方です。ドラえもんのように、問題が起きてから慌てて復元フードを取り寄せようとすると、その間にさらなる混乱を招く可能性があります。道具を使う際の準備と段取りの大切さを、このエピソードは笑いの中で示しています。準備なしで使った場合の混乱の大きさを考えると、そっくりペットフードは使用前に必ず復元フードをセットで確保するという鉄則を守ることが何より重要です。変身させることよりも、変身を元に戻すことの方が難しいという教訓は、この道具に限らず多くのひみつ道具に共通するテーマです。
広告から道具を注文するという設定
このエピソードでは、未来から届いた広告を見たのび太がドラえもんに内緒でひみつ道具を注文するという設定が登場します。未来の世界では広告を通じてひみつ道具を注文できるというシステムが存在するようで、ドラえもんの道具がどのように流通しているかという世界観の一端を示しています。
ドラえもんは四次元ポケットから道具を取り出しますが、その道具がどこから来るのかという点は普段あまり描かれません。このエピソードのように注文という形で入手できるとすれば、22世紀の世界には道具の販売・流通システムが整っていることがわかります。
のび太がドラえもんに内緒で道具を注文するというのも、子供らしい行動です。大人の目を盗んで何か面白いものを手に入れようとするという普遍的な子供の心理が、未来の道具注文という形で表現されています。この設定のユニークさも、そっくりペットフードのエピソードが記憶に残る理由のひとつです。未来の世界で広告が届くという設定は、22世紀でも宣伝や営業活動が存在することを示しており、ドラえもんの未来世界が現代社会の延長線上にあることを感じさせます。ひみつ道具の流通や販売の仕組みという裏側の世界観が垣間見えるエピソードとして、この点も注目に値します。ドラえもんは四次元ポケットから道具を取り出しますが、その道具全てがどこかで製造・販売されているとすれば、22世紀には相当な規模のひみつ道具産業が存在するのでしょう。そっくりペットフードのような一見するとニッチな需要にも対応した道具が広告付きで販売されているという事実が、その産業の規模の大きさを示しています。




