人の頭にとんかち状を棒を振り下ろすことで、人が忘れていた記憶を映写機のように投影することができる『わすれとんかち』の紹介です。
わすれとんかちの機能
とんかち状のひみつ道具で、大きさは野球のバットくらいの長さ、先には円柱形のバケツ大の金属がくっついています。
対象者の頭に振り下ろして頭を叩き、衝撃を与えることで効果を発揮します。
忘れてしまっている記憶を呼び出すひみつ道具ですね。
記憶は映像記憶として両目から照射され、静止画として壁に映し出されます。
本人が望む映像が照射されるとは限らず、むしろ望まない記憶を静止画として映し出すことも避けることはできません。
見知らぬ男との遭遇
ある日、スネ夫の家に見知らぬ男が迷い込みます。
男は一切の記憶をなくしており、一軒一軒自分のことを知っている人がいないか尋ねて回っている様子。
ドラえもん5巻「わすれとんかち」P51:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
空腹でふらつく男を見るに見かねて自宅に連れ帰るのび太とドラえもん。
記憶は無くなってしまうものではなく、記憶を保存してる引き出しが開かなくなってしまった状態なので、ひみつ道具「わすれとんかち」で引き出しを開き、記憶を呼び出そうとします。
男の正体はだれ?
男の頭をわすれとんかちで叩くと、出るわ出るわ、意味不明の映像が。
男の記憶の一部を紹介しますね。
- 東京タワーから落下する
- 車にひかれる
- 日本刀で斬られる
ドラえもん5巻「わすれとんかち」P57:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
不幸な記憶ばかりではなく、
- お城に住んでいる
- 札束に囲まれている
などの記憶も残されていて、のび太とドラえもんは謎の男を【命を狙われる大金持ちの男】と結論づけます。
スネ夫の策略
男が大金持ちだとわかった途端、スネ夫の態度が豹変します。
男を無理やり家に招待し、家族ぐるみで男を接待し始めるのです。
ドラえもん5巻「わすれとんかち」P60:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
そう、男の身元がわかったあとで、たっぷりお礼をもらおうという魂胆なのです。
挙句の果てには、「自分たちは顔が似ているから親戚かもしれない」などと言い始める始末。
ドラえもん5巻「わすれとんかち」P60:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
骨川家(スネ夫の名字)は家族全員が意地汚いのでしょうか。
最終的に男の正体は、売れない映画スタントマンだということがわかり、貧乏人だとわかった瞬間に家から追い出すスネ夫親子。
人としてどうなんでしょうか・・・。
温かい気持ちで見守ろう
ある日突然、記憶のない男が訪ねてきて、一軒ずつ家に入って「自分は誰でしょう?」と歩き回るシュールなシチュエーション、すごいですよね。
現代の日本では、ストーカー規制法や不法侵入罪などに該当しそうな感じがします。
ドラえもんファンとしてはそんな事は気にもとめず、この気の毒な男を救ってあげようとするのび太とドラえもんの気持ちの優しさをほめましょう。
藤子先生からの教訓
スネ夫親子の欲深い一面について、まるで藤子先生から教訓をいただいているかのような錯覚をおぼえます。
相手を経済力のみで評価し、自分達の都合で食事を振舞ったり追い出したりと対応を変えています。
のび太・ドラえもんの振る舞いとの違いを描く事で、より一層このような振る舞いの罪深さを描き、読者の良識に語りかけてくれています。
ドラえもんの世界観の奥深さを今回も感じられまね。
使うシチュエーションに注意しよう
わすれとんかちは、珍しくドラえもんが幾度となく使用をためらったひみつ道具です。
ドラえもん5巻「わすれとんかち」P54:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
頭をぶっ叩くわけなので、記憶を無くしている時より症状が悪くなることもあるからです。
コミックではそれ以上のことは語られていませんでしたが、実は別の理由もあったのでは?と想像してしまいます。
きっと都合の良い記憶ばかりではなく、都合の悪いものもヴィジョンとして映し出してしまうため、混乱をきたしてしまうからではないでしょうか。
人間誰しも清廉潔白ではなく、知られたくない過去、忘れてしまいたい記憶があるはずです。
わすれとんかちは、好むと好まざるに関わらず、記憶をさらしてしまうという点において、諸刃の剣なんですよね。
もしかしたら未来の世界では、警察の取り調べや浮気調査などに威力を発揮しているかもしれません。
現代人で良かったと胸をなでおろす人もいるかもしれませんね。