『偉きゃ黒でも白になる』という言葉があるように、日本人は権威に弱いです。
どんな物でも偉い人が褒めればそれはお墨付きとなって、価値が高まります。
今回は物の価値感を勝手に決めることができる『ひょうろんロボット』というひみつ道具を紹介します。
ひょうろんロボットは
手のひらサイズで2頭身の芸術家をかたどった外見をしたロボットです。
褒めたい作品を見せながらスイッチを入れると、その作品を指さして「イーイー!」と褒めます。
すると周囲の人はその作品がとても素晴らしいものに見えてしまう暗示がかかり、褒め称えてくれるようになります。
本編での使われ方
有名な画の評論家だというしずかちゃんのおじさんから「幼稚園の頃描いたの?」と自分の作品をこけおろされてショックを受けるのび太。
ドラえもん8巻「ロボットがほめれば・・・」P176:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ドラえもんに泣きつくと「ウソでもいいからほめられたいなら」と出してくれたのがこのひょうろんロボットです。
実験としてママに向かってのび太の画を見せてひょうろんロボットを使うと、ママはのび太の画を大絶賛し始めます。
続いてパパにも使ってみると「天才としか言いようがない」と、涙を流し感動しました。
ドラえもん8巻「ロボットがほめれば・・・」P177:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
この実験成功を受けて、のび太は皆を感心させようと画と評論ロボットをもって出かけますが、うっかりロボットを道に落としてしまいます。
のび太の画力はどれぐらい?
ジャイアンの音痴と同様に、のび太の画が下手だというのは本編中でしょっちゅうネタにされますが、今回「幼稚園児なみ」とハッキリとした結論が出されていますね。
ちなみに今回スネ夫の絵は「すごく上手いというわけではないけどいい素質がある」と、後のスネ夫の絵が得意な設定に繋がるような評価を貰っています。
価値観への皮肉
ひょうろんロボットで褒めた物は、だれもが素晴らしいと疑いもなく認めて感動してしまう効果があります。
しかしこれは見方を変えれば権威ある存在が褒めれば、たとえそれがどんなに駄作であろうと一斉に褒め称えてしまうという、人間の曖昧な価値観を強烈に皮肉った道具とも言えます。
ストーリーの冒頭で評論家のおじさんがスネ夫の画を誉めだした途端に、まわりのみんなが褒めだすというのも、導入として上手い伏線の張り方ですね。
ドラえもん8巻「ロボットがほめれば・・・」P176:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
オチとなる何の変哲もないパン屋の看板をひょうろんロボットが褒めただけで、周囲は涙を流して感動し、大勢の野次馬でごった返してしまうあたり、世間の価値というものへの相当な皮肉となっています。
ちなみに他の藤子作品でも画に対する価値の皮肉は描かれています。
エスパー魔美では、無名の画家が世界的に有名な名画を腕試しで模写し、すり替えたところ、誰一人気付くことなく、褒め称え続けてしまうという話があります。
実際に画を見に来た主人公たちが何も心に響かない事を不審に思い、すり替えが発覚するという流れでした。
ひょうろんロボットに道具
似たような道具として、催眠術的な効果で人間を感動させてしまうという点では、コミックス9巻に登場する『ジーンマイク』がありますね。
ひょうろんロボットが画などの視覚で感動させる効果があるのなら、ジーンマイクは音に特化しているのが特徴です。
ジーンマイクに吹き込まれた音声は、それこそ何気ない挨拶から車のクラクション、果てはおならの音まで、聞いた人達を心の底から感動させてしまうという凄まじい効果を持っています。