実はジャイアンは大金持ち

ジャイアンは乱暴で物を奪う側のイメージが強い一方、作中では宝くじ1等を当てたことがある人物でもあります。

しかもその金額は当時の価値で見てもかなり大きく、剛田家の家計やジャイアンの金銭感覚まで見直したくなるエピソードです。

ジャイアンはしあわせトランプで宝くじ1等を当てている

ジャイアンがお金持ち扱いできる最大の根拠は、27巻のしあわせトランプの恐怖です。なんでも願いを叶えるしあわせトランプを使い、ジャイアンは宝くじ1等を引き寄せています。

宝くじ1等とジャイアン
かなりのビッグニュースである

ドラえもん27巻 しあわせトランプの恐怖 P187:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

しあわせトランプは便利な道具ですが、最後にジョーカーを持った人に災いが降りかかる危険な仕組みを持っています。だからこそ、欲しいものを細かく願うほどリスクが増える道具です。

その中でジャイアンが選んだのが、宝くじ1等という大きな願いでした。野球のユニフォーム、ゲーム、今川焼き、ブロマイドなど欲しいものはいくつもありますが、それらを個別に願えばカードを何枚も失います。お金さえあればまとめて解決できると考えたあたり、ジャイアンは意外と計算高いのです。

願いの使い方にジャイアンの現実感覚が出ている

ジャイアンは普段、感情で動くキャラクターに見えます。けれどもお金が絡むと、かなり現実的な判断をしています。欲しいものを1つずつ叶えるのではなく、まず資金を手に入れる。これは小学生としてはかなり合理的です。

ドラえもんの道具には、願望を直接満たすものが多くあります。たとえばお金を増やす方向ならフエール銀行、買い物や交渉に関わる道具なら十円なんでもストアーとかんばんのようなものがあります。ただ、ジャイアンは未来の金融システムではなく、現実の宝くじという形で大金を得ています。

ここが面白いところです。しあわせトランプの力は超常的ですが、得られた結果は宝くじ当選という社会に接続されたお金です。ジャイアンはひみつ道具の力を借りながら、現実で通用する財産を手に入れたことになります。

当選額は5,000万円クラスだった可能性

しあわせトランプの話が載ったコミック27巻は1983年発行です。当時の宝くじ1等は、前後賞を含めて5,000万円級だったと考えられます。

現代でも5,000万円は大金ですが、1980年代前半の物価を考えると、現在価値ではさらに大きな意味を持ちます。ざっくり見ても6,000万円以上の重みがあるため、小学生のジャイアンが手にした幸運としては桁外れです。

ただし、作中でジャイアンが急に豪華な暮らしを始めた様子はありません。家が建て替わったわけでもなく、毎日高級品を買っているわけでもなく、いつもの剛田商店の日常が続いています。ここに、ジャイアンがお金持ちなのにお金持ちらしく見えない理由があります。

なぜジャイアンの生活は変わらなかったのか

宝くじ1等を当てたなら、普通なら生活に変化が出そうです。しかしジャイアンの家はその後も質素で、本人のこづかいも多く見えません。30巻のフエール銀行では、ジャイアンがこづかいのありったけを預けようとしても、手のひらに乗る程度の小銭しか出していません。

ジャイアンの全財産
せいぜい200円〜300円程度か?

ドラえもん30巻 フエール銀行 P37:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

この描写を見る限り、当選金がジャイアン本人の自由なお金になったとは考えにくいです。剛田家の父ちゃんや母ちゃんが管理し、店の運転資金、家計、将来のための貯蓄に回した可能性が高いでしょう。

ジャイアンの母ちゃんは厳しいですが、子どもに大金を持たせる危険をよく分かっている人でもあります。普段から乱暴で欲しいものを奪いがちなジャイアンに、数千万円を自由に使わせたら面倒なことになります。母ちゃんが財布のひもを握っていたと考えると、生活が急変しない理由も自然です。

お金持ちでも奪う癖は変わらない

ジャイアンは宝くじで大金を得たはずなのに、のび太やスネ夫からマンガやおもちゃを取り上げる行動は続いています。これは単に貧しいから奪っているのではなく、欲しいと思ったものを力で手に入れる癖が身についているからです。

お金があれば買えるものでも、目の前に友だちの物があればそちらを奪う。ここにはジャイアンの乱暴さと甘えが出ています。大金そのものより、相手より強い立場に立つことが彼にとって大事なのかもしれません。

一方で、剛田家が当選金を堅実に管理しているとすれば、ジャイアンとジャイ子の将来はかなり明るいです。剛田商店の経営にも余裕が出ますし、ジャイ子が漫画家を目指すうえでも支えになります。表面上はいつもの空き地のガキ大将でも、家庭の資産という意味ではかなり恵まれた立場です。

スネ夫とは違うタイプのお金持ち

お金持ちキャラとして分かりやすいのはスネ夫です。スネ夫のおもちゃを見ると、ラジコン、プラモデル、マンガ、ゲーム、コレクションまで幅広く買いそろえており、財力が見た目に出ています。

それに対してジャイアンのお金持ち要素は、表面にほとんど出ません。宝くじ1等という一発の大金はありますが、本人の生活は変わらず、空き地で野球をして、店の手伝いをさせられ、母ちゃんに怒られています。

この違いはかなり面白いところです。スネ夫はお金を持ち物へ変換して人に見せます。ジャイアンはお金があっても、力や声や存在感で周囲を動かそうとします。だから同じお金持ちでも、スネ夫は裕福さが前面に出て、ジャイアンは資産よりもガキ大将としての圧が前面に出ます。

ジャイアンとスネ夫の関係を考えると、この差はさらに味わい深くなります。スネ夫は高価なものを持っているからジャイアンに狙われやすい。ジャイアンは本当なら自分で買える可能性があるのに、友だちから奪うほうへ向かう。お金の有無だけでは性格は変わらないという、かなり残酷な構図です。

剛田家の堅実さがジャイアンを救っている

剛田商店は派手な店ではありませんが、地域に根づいた商売を続けています。宝くじの当選金が入ったとしても、店の仕入れ、家の修繕、子どもの将来、生活費の余裕へ回すなら、見た目には分かりにくい変化になります。

ジャイアンの母ちゃんが厳しいのは、単に怖い母親だからではありません。子どもを甘やかすとろくなことにならないと分かっているからです。お金があるから好きにしなさいではなく、お金があっても店を手伝いなさいという態度を崩さない。ここに剛田家の強さがあります。

もしジャイアンが自由に大金を使えたら、罰金箱のような道具が必要になるほど、周囲に迷惑をかける可能性があります。逆に言えば、親がしっかり管理しているから、ジャイアンはいつものジャイアンのままで済んでいるのです。

また、剛田商店という家業があることも見逃せません。大金が突然入っても、商売をしている家庭なら使い道は遊びだけではありません。仕入れ、設備、店の維持、家族の生活費へ回せば、子どもからは見えにくい形でお金が消えていきます。ジャイアンが豪遊していないのは、むしろ剛田家が現実的にお金を扱っている証拠にも見えます。

ジャイアンがお金持ちらしく見えない理由

スネ夫のように高級なおもちゃを見せびらかすタイプと違い、ジャイアンはお金を持っていても見た目に出にくいキャラクターです。服装も遊び方も大きく変わらず、欲望の出し方も食べ物や野球、歌、友だちへの支配に向きます。

そのため、宝くじ1等という事実だけを見ると大金持ちなのに、読者の印象ではお金持ちに見えません。むしろそのギャップがジャイアンらしさです。お金で上品になるわけでも、急に紳士になるわけでもない。大金よりも本人の気質が前面に出ているのです。

しあわせトランプで手にした幸運は、ジャイアンにとって人生を変えるほどの出来事だったはずです。それでも空き地で大声を出し、剛田商店で母ちゃんに怒られ、友だちとけんかする姿は変わりません。大金を得てもキャラクターの芯が揺らがないところに、ジャイアンという人物の強さがあります。

宝くじ1等はジャイアンの人生設計を変えたのか

ジャイアンがお金持ちかどうかを考えるとき、単に宝くじに当たった事実だけで終わらせると見落としが出ます。大事なのは、そのお金が誰の管理下に置かれ、どのように使われたかです。小学生のジャイアンが売り場で換金し、自由に銀行口座を持ち、好きなだけ使えたとは考えにくいので、実質的には剛田家の資産になったと見るのが自然です。

剛田家は雑貨店を営む家庭です。店を持つ家では、現金があってもすべてを遊びに回せるわけではありません。仕入れ代、設備の修繕、家賃や税金、生活費、子どもの教育費など、見えない支出が多くあります。宝くじ1等のようなまとまったお金が入れば、真っ先に家計の安定へ回す判断もありえます。

この視点で見ると、ジャイアンの生活が変わっていないことは不自然ではありません。むしろ、急に高級な服を着たり、毎日高価なおもちゃを持ち歩いたりしていないからこそ、剛田家の大人が冷静にお金を管理した可能性が高くなります。ジャイアン本人の印象は荒っぽくても、家庭としてはかなり地に足がついています。

また、宝くじ当選は一時金であって、骨川家のような継続的な収入とは違います。スネ夫の家は日常的に高いものを買える余裕がありますが、ジャイアンの家は大金が一度入ったとしても、それを長く残す必要があります。この違いを分けて考えないと、ジャイアンを単純なお金持ちキャラとして扱いすぎてしまいます。

子ども本人の自由なお金とは別問題

ジャイアンが手にした宝くじの当選金は、本人が当てたという意味ではジャイアンの功績です。ただし、小学生の自由財産として扱われたかは別です。作中でジャイアンが急に高額な買い物をしていない点、こづかいが少ない描写が後にある点を合わせると、本人の財布にはほとんど入っていなかった可能性が高いです。

これは母ちゃんの性格とも合います。ジャイアンの母ちゃんは厳しく、店の手伝いをさぼれば容赦なく叱ります。大金が入ったからといって、子どもを甘やかすタイプではありません。むしろ、普段以上に財布を締め、ジャイアンが勘違いしないよう管理したはずです。

ジャイアンは自分の力で周囲を動かしたがる性格です。大金を自由に持たせると、友だちを連れ回したり、無理な買い物をしたり、リサイタルの設備を整えたりする危険があります。そう考えると、当選金を親が押さえたことは、周囲にとってもかなり重要な防波堤だったのです。

しあわせトランプはジャイアン向きの道具だった

しあわせトランプは、願いを叶えるかわりに最後のジョーカーが災いを呼ぶ道具です。使えば使うほど便利になり、同時に危険が近づきます。この道具は、欲望が強い人物ほど深くはまりやすい構造を持っています。

ジャイアンはまさにその危険と相性がよい人物です。欲しいものがあると我慢しにくく、友だちの物でも自分の物のように扱います。そんなジャイアンがしあわせトランプを持てば、願いを節約するよりも、大きな願いで一気に得をしようと考えるのは自然です。宝くじ1等を狙う発想は、欲深いようでいて効率的でもあります。

ここで面白いのは、ジャイアンが道具の危険を完全には理解していなくても、願いの選び方だけは的確な点です。細かい願いを重ねるより、大金を一度で手に入れる。これはジョーカーに近づく回数を減らす選択でもあります。乱暴な性格の中に、妙な勝負勘があるのです。

ドラえもんの道具には、使う人の性格を増幅するものが多くあります。罰金箱なら相手を縛りたい気持ちが出やすく、フエール銀行ならお金を増やしたい欲が表に出ます。しあわせトランプの場合、ジャイアンの欲望と勝負強さが同時に出ました。

お金を願う発想はかなり大人びている

小学生なら、目の前の欲しいものをそのまま願いがちです。お菓子、ゲーム、マンガ、野球道具などを直接手に入れたいと考えるほうが分かりやすいからです。しかしジャイアンは宝くじ1等という、お金そのものを得る方向へ進みます。

お金は抽象的な願いです。これがあればあとで多くのものへ変換できるという見通しが必要になります。ジャイアンは普段その場の感情で動くように見えますが、この場面では資金を先に押さえる考え方をしています。つまり、彼には乱暴なだけではない現実感覚があるのです。

もちろん、その現実感覚が善良に使われるとは限りません。大金を手に入れたあとに周囲へ配るより、自分の欲しいものや自分の力を強める方向へ使おうとするはずです。だからこそ、剛田家の管理が大事になります。ジャイアンの発想は鋭いものの、使い道まで任せるには危険が残ります。

5,000万円級の重みを当時の生活感で見る

当時の宝くじ1等を5,000万円級として考えると、現代の感覚以上に大きな金額です。家を買う、店を改装する、将来の学費を確保する、借金や不安を減らすなど、家族単位では人生設計を変えられる規模です。

剛田家は豪邸ではなく、町の商店です。店舗と住居が一体化したような暮らしの中で、日々の商売を続けています。その家庭に数千万円が入れば、見た目に派手なぜいたくをしなくても、心理的な余裕は大きく変わります。急な出費に耐えられる、店の設備を直せる、子どもの将来に備えられる。この安定感は、表に出にくい財産です。

ジャイアン自身はそのありがたみを分かっていないかもしれません。彼にとってお金は、欲しい物を手に入れる手段です。しかし親の視点では、家族を守る盾になります。ジャイアンが豪遊していない裏側には、母ちゃんや父ちゃんが生活防衛として当選金を扱った可能性があります。

ドラえもんの世界では、スネ夫のような分かりやすい裕福さが目立ちます。高級なおもちゃ、別荘、旅行、パパの知り合いなど、見える形でお金が出てくるからです。ジャイアンの場合は、見えない形で家計を支える資産になったと考えると、スネ夫とは別方向のお金持ち像になります。

剛田商店の運転資金という見方

商店にとって現金はかなり重要です。商品を仕入れるには先にお金が必要で、売れるまで回収できません。冷蔵設備、棚、店先、看板、住居部分の修繕なども必要です。店を大きく見せなくても、維持には継続的にお金がかかります。

宝くじ当選金が店の資金に回ったなら、ジャイアンの生活が派手にならないことも説明できます。子どもの目には変化がないように見えても、家計の裏側では支払いの不安が減り、仕入れの幅が広がり、将来の備えができます。商売をしている家にとっては、かなり現実的な使い道です。

ジャイアンが店番をさせられる場面を思い出すと、彼は家業から完全に切り離された子どもではありません。店を手伝う以上、将来的に剛田商店を継ぐ可能性もあります。当選金が店を延命させたなら、ジャイアン本人の将来にもつながっています。

ジャイアンの貧しそうな印象はどこから来るのか

ジャイアンは宝くじ1等を当てているのに、読者の印象ではあまり裕福に見えません。その理由は、身の回りの見せ方にあります。スネ夫は高い物を自慢しますが、ジャイアンは自慢の軸がお金ではありません。腕力、歌声、野球、子分扱いなど、相手を押さえる力で優位に立ちます。

また、剛田家の店構えも庶民的です。スネ夫の家のような豪邸感はなく、生活の匂いが強い。母ちゃんが店先で働き、ジャイアンも叱られながら手伝う。こうした描写が、彼をお金持ちではなく町の商店の子として印象づけます。

服装も大きいです。ジャイアンは同じような服で登場し、持ち物で裕福さを示す場面が少ないです。読者はお金持ちかどうかを家、服、持ち物、遊び方から判断します。ジャイアンはそのどれも派手ではありません。だから大金のエピソードがあっても、裕福な印象が残りにくいのです。

ただし、裕福に見えないことと、資産がないことは別です。家庭の預金や店の安定は外から見えません。剛田家が堅実に管理していたなら、ジャイアンは見た目以上に強い経済的土台を持つ子どもだったことになります。

スネ夫の裕福さは消費で見える

スネ夫のおもちゃが分かりやすいのは、お金が物として見えるからです。ラジコン、プラモデル、マンガ、コレクション、カメラなど、買ったものがそのまま画面に出ます。友だちにも自慢できるため、読者にも裕福さが伝わります。

一方でジャイアンの当選金は、物に変換された描写が少ないです。買った高級品が並ぶわけでもなく、剛田家の外観が豪華になるわけでもありません。お金が消費ではなく保全や家計に回ったなら、読者の印象に残りにくいのは当然です。

この違いは、キャラクターの性格にも合っています。スネ夫は見せることで価値を得ます。ジャイアンは従わせることで価値を得ます。だから、同じお金があっても表現のされ方がまったく違います。

宝くじ後もジャイアンが奪う理由

ジャイアンが本当にお金に困っていないなら、なぜ友だちのマンガやおもちゃを奪うのか。ここはジャイアンを考えるうえでかなり重要です。彼の行動は、単純な物欲だけでは説明できません。

ジャイアンにとって奪う行為は、物を手に入れる手段であると同時に、自分の強さを確認する行動です。相手が嫌がっても押し通せる、自分の言うことを聞かせられる。その感覚が彼のガキ大将としての立場を支えています。お金で買うだけでは、その支配感は得られません。

また、友だちの持っている物には、その場で欲しくなる力があります。店で買うより、目の前で誰かが楽しんでいる物を取り上げるほうが、ジャイアンの衝動には合っています。これは悪い癖ですが、キャラクターとしては一貫しています。

だから、宝くじ当選はジャイアンの性格を変えません。大金があっても、相手への接し方が変わらなければ同じことを繰り返します。お金は欲望の一部を満たせますが、乱暴さや支配欲までは消してくれません。

お金で解決しない人間関係の問題

ジャイアンの周囲で起きるトラブルは、金額の問題ではなく人間関係の問題です。のび太が嫌がる、スネ夫が困る、しずかちゃんが迷惑する。それでも自分の都合を優先するから問題になります。

たとえジャイアンが自分で高いおもちゃを買えたとしても、友だちに自慢された瞬間に奪いたくなる可能性があります。そこにあるのは所有欲だけではなく、相手より上に立ちたい気持ちです。この気質が変わらない限り、経済力だけではトラブルは減りません。

ドラえもんの話では、ひみつ道具が人物の弱点をあぶり出すことがあります。しあわせトランプも、ジャイアンの欲深さだけでなく、お金を得ても人との距離感は変わらないという問題を見せています。

ジャイ子の未来にも当選金は影響した可能性

剛田家の資産を考えるなら、ジャイアンだけでなくジャイ子の存在も外せません。ジャイ子は漫画家を目指しており、創作には紙、ペン、資料、投稿費、時間などが必要です。家庭に余裕があれば、夢を追う環境も整えやすくなります。

作中ではジャイ子が極端に不自由な生活をしているようには描かれません。のび太の未来に関わる人物として登場し、漫画を描き、投稿する意欲を持っています。剛田家に宝くじ当選金が残っているなら、ジャイ子の挑戦を支える資金にもなったかもしれません。

ジャイアンは前面に出る性格ですが、剛田家の本当の長期的な価値は、ジャイ子の才能を支えるところに出た可能性があります。店の安定、家計の余裕、創作を許す空気。どれも外から見えにくいですが、子どもの将来には大きく関わります。

この見方をすると、宝くじ1等はジャイアンだけのネタではなく、剛田家全体の転機だったとも読めます。本人は相変わらず空き地で暴れていますが、家庭の裏側では未来を少しだけ変えるお金になっていたかもしれません。

ジャイアンは隠れた資産家キャラとして読むと面白い

ジャイアンはお金持ちに見えません。スネ夫のように家柄や持ち物で押すわけではなく、毎日の行動も庶民的です。けれども、しあわせトランプで宝くじ1等を当てた事実を重く見ると、彼は隠れた資産家キャラとして読めます。

ただし、その資産は本人の自由にはなっていない。ここが面白いところです。お金はあるかもしれないのに、こづかいは少ない。家には余裕があるかもしれないのに、本人は友だちから物を奪う。裕福さと貧しそうな行動が同居しています。

この矛盾がジャイアンらしさを強めています。お金で品よくなるわけではなく、資産があってもガキ大将のまま。母ちゃんに叱られ、店を手伝い、リサイタルを開き、友だちに迷惑をかける。その変わらなさが、キャラクターの芯です。

しあわせトランプの宝くじ当選は、単なる一発ギャグではなく、剛田家の経済状態、ジャイアンの性格、スネ夫との対比まで広げられる材料です。ジャイアンは乱暴なだけの子ではなく、大金を得ても変わらない子です。その変わらなさこそ、彼がお金持ち扱いされにくい最大の理由なのです。

お金持ち説を強める一方で残る疑問

ジャイアンをお金持ちとして読む場合、最も強い根拠は宝くじ1等です。しかし同時に、作品内でその後の影響がほとんど描かれない点は疑問として残ります。大金が入ったなら、剛田商店の雰囲気や家族の会話に何か変化があってもよさそうです。それが目立たないため、当選金が一時的なギャグとして処理された可能性もあります。

ただ、ドラえもんでは一度出た大きな出来事が、その後の話で細かく引き継がれないことも多いです。ひみつ道具で大騒動になっても、次の話では日常に戻ります。しあわせトランプの当選金も、連続ドラマのように資産として管理され続ける描写はされていません。だから、描かれていないことだけで当選金が消えたと見るのも早いです。

むしろ、描かれていないからこそ複数の読み方ができます。親が堅実に貯金した。店の資金に回した。親戚や税金や手続きでかなり減った。ジャイアン本人にはほとんど渡らなかった。どれも作中の雰囲気とは矛盾しません。

ジャイアンがお金持ちかどうかは、本人の自由に使えるお金で見るか、家庭の資産で見るかで結論が変わります。本人のこづかいだけを見れば貧しそうです。家庭の一時的な資産まで含めれば、かなり恵まれている可能性があります。この二重構造が面白いところです。

当選金が消えた可能性もゼロではない

宝くじの当選金がいつまでも残っているとは限りません。店の借金返済、家の修繕、親戚への対応、生活費の補填などで大きく減った可能性もあります。剛田家が豪遊していないから堅実に残したと考えることもできますが、逆に目に見えない支払いで消えたとも考えられます。

それでも、少なくとも一度は大金が剛田家に入ったという事実は重いです。完全な貧乏キャラとしてジャイアンを見るには、しあわせトランプの宝くじ当選が大きな反例になります。

ジャイアンの金運は悪いのか良いのか

ジャイアンは普段、金運が良さそうには見えません。こづかいは少なく、欲しいものは友だちから奪い、母ちゃんには叱られます。けれども、宝くじ1等を当てた事実だけを見ると、作中でも屈指の強運です。

ここで重要なのは、自力の金運ではなく、ひみつ道具を通した金運である点です。しあわせトランプが願いを叶えたから当たったのであって、ジャイアンが普通に買って当てたわけではありません。つまり、金運そのものが強いというより、道具の力を大きな結果へ変える選択がうまかったと見るべきです。

それでも、願いの中身を宝くじ1等にした判断はジャイアンのものです。ここには、運を呼び込む大胆さがあります。小さな得で満足せず、大きく取りにいく。ジャイアンの性格はトラブルも生みますが、この場面では大金を引き寄せる方向へ働きました。

一方で、最後のジョーカーが災いを呼ぶ道具である以上、幸運には必ず反動があります。ジャイアンが宝くじを当てたことはすごいですが、しあわせトランプを使う時点で危険な賭けにも参加しています。金運と危険運が同時に来るのが、この道具の怖さです。

剛田家は見えないところで勝っている家庭かもしれない

剛田家はスネ夫の家のように派手ではありません。けれども、店を持ち、家族で働き、子どもを叱りながら育てています。そこへ宝くじ1等の資金が加わったなら、見た目以上に強い家庭になります。

ジャイアンの母ちゃんは厳しいですが、店を切り盛りする実務の人です。大金が入ったとき、浮かれて使い切るより、守る方向へ動く可能性があります。父ちゃんも含め、剛田家の大人は生活に根ざした判断をするはずです。

ジャイアンがお金持ちらしく見えないのは、剛田家の勝ち方が地味だからです。高い物を買って見せびらかすのではなく、日々の商売と生活を安定させる。読者の目には分かりにくいですが、家庭としてはかなり強い選択です。

その結果、ジャイアンは相変わらず空き地で暴れています。けれども背後には、店と家族と当選金という土台があるかもしれません。そう考えると、ジャイアンは庶民派の顔をした、意外な経済的強者として読めます。

結局ジャイアンは金持ちなのか

結論を慎重に置くなら、ジャイアン本人はお金持ちらしく見えないが、剛田家には一時的に大きな資産が入った可能性が高い、という形になります。本人の財布は小銭レベルでも、家庭単位では宝くじ1等の影響を無視できません。

このズレが、ジャイアンというキャラクターを面白くしています。金銭的には恵まれた可能性があるのに、行動は相変わらず乱暴で庶民的です。お金を得ても性格は変わらず、家庭が管理すれば生活も派手になりません。

だから、ジャイアンはスネ夫型のお金持ちではありません。見せるお金ではなく、見えない資産を持った可能性のあるキャラクターです。しあわせトランプの宝くじ1等は、その隠れた一面を考えるためのかなり強い材料になります。

お金の有無よりも、使わせてもらえない構図まで含めて読むと、ジャイアンの立場はより立体的になります。

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