ジャイアンに対するスネ夫の深い恨みや本音を集めました

スネ夫はジャイアンの腰ぎんちゃくのように振る舞うことが多いですが、内心ではかなり深い不満と恨みを抱えています。表ではおだて、裏では悪口を言い、立場が少しでも逆転すると一気に攻撃へ転じる。その二面性こそ、スネ夫というキャラクターの面白いところです。

ジャイアンとスネ夫は、のび太をからかう側として一緒に描かれることが多いコンビです。けれど、二人の関係は対等ではありません。ジャイアンは腕力と圧で周囲を従わせ、スネ夫はおもちゃや情報や口のうまさで立ち回ります。スネ夫がジャイアンのそばにいるのは、仲がいいからだけではなく、強い相手の近くにいるほうが安全だからでもあります。

そのため、ひみつ道具で本音が出る場面や、ジャイアンが弱くなる場面では、スネ夫の中にたまっていた感情が一気に噴き出します。この記事では、元記事にあった場面を残しつつ、スネ夫がどんな場面でジャイアンへの恨みを出すのか、どの道具がその本音を引き出しているのかを整理していきます。

スネ夫はなぜジャイアンのそばにいるのか

まず押さえておきたいのは、スネ夫がジャイアンを単純に好きで一緒にいるわけではないということです。スネ夫はのび太に対しては強く出ますが、ジャイアンには基本的に逆らえません。おもちゃを取られる、マンガを取られる、無理な頼みを押しつけられる。ジャイアンの近くにいるほど被害も受けます。

それでもスネ夫がジャイアンから完全に離れないのは、ジャイアンの横にいることで得られる安全もあるからでしょう。のび太をからかうとき、スネ夫はジャイアンの腕力を背景にできます。自分だけではできない強気な態度も、ジャイアンが近くにいれば取りやすい。つまり、スネ夫にとってジャイアンは怖い相手であり、同時に利用価値のある相手でもあります。

この関係は、友情カプセルとコントローラーの話で見えるスネ夫の支配欲ともつながります。スネ夫は相手と対等に向き合うより、相手を自分に都合よく動かしたがるところがあります。ジャイアン相手にはそれができないので、内心の不満だけがたまっていくわけです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん2巻P64:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『うわぁ、いやな所でジャイアンに会ったなぁ』

正直太郎を拾ったスネ夫が、ジャイアンに遭遇したときに出た本音です。正直太郎は持ち主の思っていることをそのまま言わせる道具なので、この一言はかなり信頼できます。スネ夫はジャイアンに会った瞬間、喜ぶどころか面倒な相手に見つかったと感じています。

ここで面白いのは、まだ何かを取られたわけでも、殴られたわけでもない点です。会っただけで嫌だと思う。これは日常的にジャイアンから被害を受けているからこその反応です。スネ夫の中では、ジャイアンとの遭遇そのものがすでにリスクなんですよね。

本音が出る道具で露出する深い嫌悪

スネ夫の本音は、ひみつ道具によって強制的に引き出される場面で特によく見えます。普段はおだてたり、ごまかしたり、調子を合わせたりするスネ夫ですが、道具が本音を隠せなくすると、かなり強い言葉が出てきます。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん2巻P70:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『やい、ジャイアン!はっきりいうけど、ぼくはおまえが大きらいなんだ。』

実物立体日光写真機で作ったジャイアンの立体写真に向かって、スネ夫が日ごろの恨みを晴らす場面です。本人ではなく立体写真だから言える、というところがスネ夫らしいです。真正面から本人に言う勇気はないけれど、偽物相手なら本音が止まりません。

この場面のスネ夫は、ただ悪口を言うだけでなく、バットで殴りかかっています。言葉だけでは足りず、攻撃までしたくなるほど感情がたまっているわけです。ジャイアン本人ではないと分かっているからこそ、ふだん抑えている怒りを安全にぶつけられる。かなり屈折した発散です。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん2巻P94:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『あのばかやろう、まぬけのウスノロの、よくばりの、トーヘンボク』

タイムふろしきを持ったままどこかへ行ってしまったジャイアンへの悪口です。走りながらここまで言葉が出るあたり、スネ夫の悪口の引き出しはかなり豊富です。普段から心の中で何度も似たようなことを考えているから、すぐ口に出せるのでしょう。

タイムふろしきは物の時間を戻したり進めたりする道具ですが、この場面ではスネ夫の本音を進めるような役割も果たしています。ジャイアンに大切な道具を持っていかれた不安と怒りが、いつものへつらいを押し流しているんですよね。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん27巻P121:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『日ごろのうらみをはらしてやるのだ』

本物電子ゲームでジャイアンをゲームキャラクターのように操作し、落下物にぶつけて遊ぶスネ夫です。本人が日ごろのうらみと言っているので、もう解釈の余地がありません。スネ夫はジャイアンに対して、はっきり恨みを持っています。

この道具の怖いところは、相手をゲームとして扱える点です。ジャイアン本人が痛い思いをしているのに、スネ夫は画面越しに操作する感覚で楽しんでいます。直接殴る勇気はなくても、道具を介すれば攻撃できる。この距離感がスネ夫の卑怯さと恨みの深さを同時に見せています。

ジャイアンを町の迷惑として見るスネ夫

スネ夫の本音は、個人的な嫌いだけではありません。ジャイアンを周囲へ迷惑をかける存在として見ている場面もあります。乱暴、わがまま、歌の騒音、物の取り上げ。スネ夫にとってジャイアンは友人である前に、日常生活を乱す災害のような存在なのかもしれません。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん30巻P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『おまえなんか町の公害だぞ!』

ホンワカキャップの影響でコーラに酔ったスネ夫が、ジャイアンへぶつけた強烈な本音です。町の公害という言い方はかなりきついです。単に嫌いというより、周囲に害をまき散らす存在としてジャイアンを見ています。

この言葉でジャイアンが涙を流すのも印象的です。ジャイアンは普段かなり乱暴ですが、自分がそこまで言われると傷つきます。スネ夫の本音は読者から見ると分からなくもないのですが、本人へぶつけるには強すぎます。ここには、被害者であるスネ夫の怒りと、言われた側のジャイアンの弱さが同時にあります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん39巻P99:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『わがままでいやしくて、よくばりでらんぼうで下品で最低の男』

さとりヘルメットで思考を読まれ、ジャイアンに本音を問われたスネ夫の評価です。ここまで並べると、もはや悪口というより人物評です。スネ夫はジャイアンの欠点をかなり具体的に整理しています。

よく見ると、この悪口にはスネ夫自身にも当てはまりそうな要素が混じっています。よくばり、いやしい、下品。スネ夫も決して品行方正ではありません。だからこそ、ジャイアンへの批判は半分正しく、半分は自分を棚に上げたものでもあります。スネ夫らしいずるさがここにもあります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん42巻P83:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

ツーカー錠でスネ夫の気持ちがジャイアンに伝わってしまった場面です。何を言っているかは明確ではありませんが、表情を見るだけで穏やかな内容ではなさそうです。スネ夫の内心がそのまま伝わると、ジャイアンとの関係はすぐ壊れます。

ツーカー錠は心を通わせる道具のように見えますが、相手に隠しておきたい本音まで通じると危険です。スネ夫とジャイアンのように、表面上の協力で成り立っている関係では特に危ない。言わないことで保たれている友情もあるのです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもんプラス1巻P52:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『みんなでジャイアンをのけものにしようよ』

乱暴なジャイアンをこらしめるため、スネ夫がみんなで仲間外れにしようと提案する場面です。ここにもスネ夫のやり方が出ています。正面から戦うのではなく、集団で圧力をかける。ジャイアンの腕力に対して、スネ夫は人間関係の操作で対抗しようとします。

これはどくさいスイッチのような排除の発想にも近いです。相手を説得するのではなく、いなくなればいい、のけものになればいいと考える。ジャイアンが乱暴なのは事実ですが、スネ夫の対抗手段もかなり陰湿です。

歌への嫌悪は特に強い

ジャイアンへの不満の中でも、歌に対するスネ夫の嫌悪はかなり強烈です。ジャイアンの歌は、ドラえもん世界ではほぼ災害として扱われます。のび太もドラえもんも逃げますが、スネ夫はその場でおだて役をさせられることが多く、被害とストレスが二重にかかっています。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん12巻P30:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『うんざりだなぁ。ばかのごきげんとるのもらくじゃないや』

ジャイアンの歌声をおだてていたスネ夫が、ウラオモテックスのせいで本音しか出なくなった場面です。ここでは、歌そのものへの嫌悪だけでなく、ジャイアンの機嫌を取ることへの疲れも出ています。スネ夫はただ聞かされるだけでなく、褒めなければならない立場に置かれています。

この負担は大きいです。嫌なものを嫌だと口にできず、むしろ素晴らしいと持ち上げなければならない。お世辞を言い続けるスネ夫は、おせじ口べにを使っているわけでもないのに、日常的におせじを強いられているようなものです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん10巻P8:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『はためいわくなことをやめさせられないか』

ジャイアンが予定しているコンサートをなんとか止められないか、みんなで相談している場面のスネ夫の本音です。ジャイアンのコンサートは、もはや楽しみなイベントではなく近所迷惑として扱われています。スネ夫の言い方もかなり率直です。

ここで注目したいのは、スネ夫がジャイアン本人へ直接言わないことです。裏で対策会議を開き、ドラえもんの道具に頼ろうとします。ジャイアンの歌に苦しんでいるのに、本人には言えない。スネ夫の恨みは、この言えなさによってさらに濃くなっていきます。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん14巻P21:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『これいじょうあのひどい歌をききたくなかったからさ』

ジャイアンに絵の才能があるとおだて、歌をやめさせようとするスネ夫の作戦です。歌を聞きたくないという目的は理解できますが、代わりに絵の方向へ誘導するのがスネ夫らしいです。相手を正面から否定せず、別の欲望へ乗せて動かすわけです。

この策略性はギシンアンキのように人の見方をゆがめる道具とは違いますが、相手の自尊心を利用するという点ではかなりスネ夫的です。ジャイアンの歌を避けるためなら、多少の嘘もつく。被害者としての切実さと、策略家としてのずるさが同時に出ています。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん30巻P108:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『へたくそをへたくそといってなにが悪い、へたくそ!』

ホンワカキャップの影響でコーラに酔ったスネ夫が、ジャイアン本人に対して放った強烈な一言です。普段なら絶対に言えない言葉ですが、酔った勢いで本音が出ています。ジャイアンもここまで面と向かって言われると、反論しづらいでしょう。

ジャイアンの歌に対するスネ夫の評価は一貫しています。おだてているときは嘘で、本音では完全にへたくそだと思っている。そこに迷いはありません。だからこそ、道具でブレーキが外れると、言葉がかなり鋭くなります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん39巻P73:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ウエ〜、あのバカ本気でやるつもりなのか』

コンサートを開こうとするジャイアンに対し、ジャストホンネの影響でスネ夫の本音が出た場面です。ジャイアンの歌が始まる前から、スネ夫はもう絶望しています。バカという言葉からも、単なる音痴への不満ではなく、迷惑を自覚しない態度への苛立ちが出ています。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん39巻P141:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアン殺人事件』

ジャイアンのひどい歌を録音し、夜中にこっそり聞かせてじわじわ元気を奪う殺人計画だとスネ夫が推理する場面です。ジャイアンの歌を殺人事件の凶器として考える発想は、かなり飛んでいます。けれど、ジャイアンの歌が頭痛や吐き気を起こす描写を見ていると、完全な冗談とも言い切れないのが怖いところです。

スネ夫はジャイアンの歌を、迷惑を超えて身体へ害を与えるものとして認識しています。だから、単なるコンサート嫌いではなく、危険回避に近い感覚なのかもしれません。ジャイアンの歌を凶器扱いする発想は極端ですが、ドラえもん世界では妙に説得力があります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん43巻P32:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『あのひどい歌がしみついたら、二度とこの家に住めなくなるよ』

自分の家がジャイアンのコンサート会場になることを、スネ夫が死んでも阻止したいと考えている場面です。歌が家にしみつくという表現がすごいです。音なのに、臭いや汚れのように残留するものとして想像されています。

スネ夫の家は彼にとって自慢の場所です。裕福な家庭、きれいな部屋、来客に見せたい空間。その家にジャイアンの歌がしみつくなど、スネ夫の美意識からすれば耐えがたいのでしょう。ジャイアンの歌への嫌悪は、スネ夫のナルシシズムや見栄ともつながっています。

立場が逆転した瞬間に攻撃へ回る

スネ夫の恨みが一番分かりやすく出るのは、ジャイアンが弱くなった瞬間です。普段は逆らえない相手が、ひみつ道具の効果でおとなしくなったり、サイズが小さくなったり、怒れなくなったりすると、スネ夫は一気に強気になります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん2巻P186:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『きみほどばかなやつないないね』

返事先どりポストを使い、ジャイアンに出す架空の手紙の返事を試す場面です。本当に出すわけではないので、スネ夫はかなり思い切った本音を書いています。本人へ届かない場所では強い。これもスネ夫の基本形です。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん4巻P93:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『今日からおまえなんかにペコペコしないの』

友情カプセルでドラえもんを自分の家来同然にしたスネ夫が、ジャイアンに強気に出る場面です。ひみつ道具という後ろ盾を得た瞬間、スネ夫は普段のへつらいをやめます。これはかなり露骨です。

スネ夫にとって、ジャイアンへペコペコしている自覚はあるわけです。自分でも本当は屈辱だと思っている。それでも普段は安全のために従っています。道具で立場が上になったと感じた瞬間、その不満がすぐ言葉になります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん23巻P49:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアン、おとなしくなったんだってな』

ジャイアンがかんにんぶくろに怒りをためておとなしくなったことを利用し、後ろから蹴り上げるスネ夫です。相手が反撃しないと分かった瞬間に攻撃する。これはかなり卑怯です。

ただし、これも日ごろの上下関係の裏返しです。スネ夫は普段やられている側なので、反撃のチャンスを見つけると逃しません。ジャイアンが弱いときだけ強い、という批判は正しいですが、その弱さの根っこには普段の恐怖があります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん23巻P56:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『あかんべー、後ろから蹴る』

まあまあ棒でジャイアンの怒りをしずめこめるようになったスネ夫は、やりたい放題になります。相手が怒っても道具で抑えられるなら、何をしても大丈夫だと思ってしまう。この発想がかなり危険です。

まあまあ棒は怒りを抑える道具ですが、スネ夫に持たせるといじめを安全に行う道具になってしまいます。道具そのものより、使う人間の性格が問題を作る好例です。スネ夫は被害者であると同時に、条件がそろうとすぐ加害側へ回ります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん32巻P108:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『これからは僕の子分になっていうこときくんだぞ』

だるまおとしハンマーでジャイアンの身長を小さくしたのをいいことに、スネ夫が親分気取りになる場面です。体格差が逆転した瞬間、上下関係をひっくり返そうとします。

ここでスネ夫が望むのは対等ではありません。自分が今までされたように、今度は自分が支配する側へ回りたいのです。ジャイアンを嫌っているのに、やりたいことはジャイアン的な支配。ここにスネ夫の屈折があります。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん34巻P109:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアンを思いっきり足蹴り』

のび太がたましいふきこみ銃でジャイアンを操って日ごろの恨みを晴らしている場面を見て、スネ夫もジャイアンが弱いと勘違いし、調子に乗って蹴ります。状況判断は甘いのに、攻撃だけは早いです。

この反応も、普段からジャイアンへ仕返ししたい気持ちがあるからこそです。普通なら様子を見る場面でも、スネ夫はすぐ乗っかります。誰かがジャイアンを倒せそうなら、自分もそこへ便乗する。まさにスネ夫の立ち回りです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん36巻P78:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『バットで思いっきり殴りかかる』

シズメバチで怒りをしずめられると考えたスネ夫が、ジャイアンをバットで襲う場面です。かなり危険です。一歩間違えれば大けがですし、もはやいたずらの範囲を超えています。

ここまで来ると、スネ夫のジャイアンへの恨みは笑いだけでは済みません。もちろん漫画のギャグとして描かれていますが、スネ夫の中にある攻撃性はかなり強いです。普段弱い立場にいる人間が、急に安全な攻撃手段を得るとどうなるか。ドラえもんの道具はそこを容赦なく見せます。

嫌がらせの細かさに出るスネ夫らしさ

スネ夫の攻撃は、ジャイアンのように単純な暴力だけではありません。相手が嫌がることを見つけ、恥をかかせたり、心理的に攻めたりするのが得意です。ここにスネ夫の性格がよく出ます。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん39巻P58:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアンの絵を思いっきり踏みつける』

道路に描かれたジャイアンそっくりの絵を踏みつけるスネ夫。実はこれ、厚みぬきとりバリでぺちゃんこにされたジャイアン本人でした。スネ夫は絵だと思っているからこそ、遠慮なく踏んでいます。

偽物や絵や標本のように、安全だと思える対象に対して、スネ夫は強気になります。本人相手にはできないことを、代理物へぶつける。立体写真のジャイアンを殴った場面とも共通しています。スネ夫の恨みは、本人に向ける勇気がない分、代替対象へ向かいやすいのです。

スネ夫はジャイアンを嫌っているドラえもん42巻P160:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『怒らせるためわざわざ野球ボールをぶつける』

感情エネルギーボンベを満タンにするため、スネ夫はあらゆる手でジャイアンを怒らせます。野球ボールをぶつけ、悪口を言い、わざと挑発する。普段なら絶対に避けたい行動を、目的があるときには平気でやります。

この場面では、ジャイアンの怒りが資源として扱われています。スネ夫はジャイアンが怒りやすいことをよく知っているので、どうすれば反応するかも分かっています。嫌っている相手ほど、行動パターンをよく観察している。そこが少し皮肉です。

スネ夫はジャイアンを嫌っているドラえもん43巻P104:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアンが捨てた0点の答案をわざわざ張りだす』

ジャイアンに恥をかかせるため、ゴミ箱に捨てた0点の答案を拾って壁に貼ります。これはかなり陰湿です。暴力ではありませんが、相手の弱みをさらす嫌がらせです。ジャイアンの腕力ではなく、プライドを狙っています。

こういう細かい攻撃は、スネ夫の得意分野です。情報を拾い、相手が嫌がる場所へ出す。のび太をからかうときのスネ夫にもよく見られるやり方ですが、ジャイアンへ向かうときは普段の恨みが乗るため、さらにえげつなく見えます。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもんプラス6巻P73:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『ジャイアンの標本にあっかんべー』

標本採集箱で作ったジャイアンの標本に対して、誰よりも先にあっかんべーをするスネ夫です。作り物だと分かっているからこそ、日ごろの恨みを安全に晴らせると思ったのでしょう。本人ではないものへの攻撃が、本当に多いです。

この傾向を並べると、スネ夫はジャイアンに直接勝ちたいのではなく、ジャイアンに対して優位に立てる瞬間を欲しがっているように見えます。本物でも偽物でも、相手が反撃できない状態ならいい。恨みの解消が、かなり安全確認つきで行われているのがスネ夫らしいです。

容姿や品のなさへの見下し

スネ夫は世界一のナルシストと言ってよいほど、自分の見た目や家柄や持ち物に自信があります。そのため、ジャイアンの容姿や振る舞いに対して、かなり見下した目を向けています。腕力では負けても、美意識や生活水準では自分が上だと思っているわけです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん10巻P125:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『君の顔はもともとおかしいんだよ』

ひみつ道具のおかげで強くなったスネ夫が、ジャイアンの見た目に対する本音をぶつけます。普段なら絶対に言わない言葉です。ジャイアンの力が怖くない状況になると、スネ夫はすぐ容姿への攻撃に走ります。

ここには、スネ夫のナルシシズムがはっきり出ています。自分はおしゃれで洗練されている、ジャイアンは野蛮で見た目も悪い。そういう優越感を持っているからこそ、立場が逆転した瞬間に顔の話を持ち出します。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん29巻P70:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『みかけはこわそうだけど、じつはほんとうにこわいんだ』

怖くて凶暴な見た目を、スネ夫は内心かなり見下しています。見かけだけでなく中身も怖い、という言い方には、笑いと同時に本気の嫌悪があります。ジャイアンの外見と性格をまとめて雑に扱っているのがスネ夫らしいです。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん44巻P37:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『なにしろあの顔だもんね』

恋に悩むジャイアンに向けて、スネ夫がつい出してしまった本音です。ジャイアンが自信を失って相談している場面でこの言葉が出るのはかなり残酷です。けれど、スネ夫から見れば、ジャイアンの恋がうまくいかない理由は顔にあると感じているのでしょう。

ジャイアンは普段強いキャラクターですが、恋愛になると急に不器用で弱くなります。そこへスネ夫の本音が刺さる。こういう場面では、ジャイアンもただの乱暴者ではなく傷つく少年として見えてきます。スネ夫の言葉が強いほど、ジャイアンの弱さも見えます。

スネ夫はジャイアンを嫌っている

ドラえもん44巻P42:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

『飼い主ににるんだね、やっぱり』

ジャイアンの愛犬ムクを見たスネ夫の一言です。ジャイアン本人だけでなく、飼い犬までまとめてからかうのがスネ夫らしいところです。ムクの様子を通じてジャイアンのマナーや雰囲気を揶揄しています。

このあたりの言い回しは、スネ夫の嫌味のうまさがよく出ています。直接ジャイアンを悪く言うのではなく、犬を見て飼い主に似ると言う。遠回しなのにかなり刺さる。スネ夫の口の悪さは、ジャイアンの乱暴さとは別種の攻撃力があります。

スネ夫は被害者か、それとも加害者か

ここまで見ると、スネ夫はジャイアンから日常的に被害を受けるかわいそうな存在にも見えます。実際、おもちゃやマンガを取られ、無理な頼みを押しつけられ、コンサートへ動員される。ジャイアンとの関係では、スネ夫が弱い側に置かれる場面が多いです。

ただし、スネ夫は完全な被害者ではありません。ジャイアンが弱くなるとすぐ攻撃し、のび太には普段から偉そうに振る舞い、道具を手にすると支配欲を出します。ジャイアンから受けた圧を、別の相手や弱くなったジャイアンへ返しているようにも見えます。

この循環が、ジャイアンとスネ夫の関係を複雑にしています。ジャイアンは腕力で支配し、スネ夫は口と知恵で仕返しする。どちらも一方的に善人ではありません。だからこそ、この二人のやり取りは単なるいじめっ子コンビではなく、妙に生々しい人間関係として読めます。

ひみつ道具が本音を暴く構造

今回並べた場面の多くは、ひみつ道具がスネ夫の本音を引き出しています。正直太郎、ウラオモテックス、ジャストホンネ、さとりヘルメット、ツーカー錠。どれも、普段なら隠している言葉や気持ちを外へ出してしまう道具です。

この系統の道具は、ドラえもんの中でもかなり面白いです。便利というより、人間関係の薄い膜を破ってしまう。悪口べにペコペコバッタも同じく、隠しておきたい言葉や秘密を表に出します。スネ夫とジャイアンの関係は、こうした道具と相性がよすぎます。

普段のスネ夫は、ジャイアンに対して本音を飲み込むことで安全を確保しています。その膜を道具が破ると、関係はすぐ危険になります。つまり、二人の関係は本音で成立しているのではなく、かなりの量の我慢とお世辞で保たれているわけです。

それでも二人がつるむ理由

ここまで嫌っているなら、なぜスネ夫はジャイアンとつるむのか。これはかなり大事な疑問です。スネ夫はジャイアンを怖がり、嫌い、内心で見下し、弱くなると攻撃します。それでも二人は何度も一緒にいます。

理由の一つは、学校や町内という狭い人間関係です。のび太、しずか、ジャイアン、スネ夫は同じ生活圏で何度も顔を合わせます。完全に離れることは難しい。だから、嫌いでも付き合い続ける必要があります。子どもの世界は意外と逃げ場が少ないのです。

もう一つは、スネ夫にとってジャイアンが盾にもなることです。のび太をからかうとき、ジャイアンの横にいれば強く出られます。自分一人ではできないことも、ジャイアンと一緒ならできる。嫌いでも利用価値がある相手だから離れられない。かなり打算的ですが、スネ夫らしいです。

さらに、ジャイアンにも優しい面があります。映画や長編では仲間思いの面が強く出ますし、短編でも完全な悪人ではありません。スネ夫もそれを知っているから、完全には切れないのかもしれません。ただし、その優しさを差し引いても、日常の迷惑は大きすぎる。そこにスネ夫の複雑な感情があります。

スネ夫の恨みはキャラクターを立体的にしている

スネ夫は単なる金持ちで嫌味な子ではありません。ジャイアンの前では弱く、のび太の前では強く、しずかちゃんの前では見栄を張り、ドラえもんの道具にはすぐ欲を出します。その中でもジャイアンへの恨みは、スネ夫の弱さと攻撃性を同時に見せる大事な要素です。

ジャイアンへの本音を集めると、スネ夫がただの取り巻きではないことが分かります。彼は我慢しているし、見下しているし、怖がっているし、チャンスがあれば仕返ししたい。かなり面倒な感情の持ち主です。だからこそ、ジャイアンとのコンビは長く見ていて飽きません。

スネ夫の恨みは、笑える悪口として描かれます。けれど、その奥には子ども社会の上下関係、逃げ場のなさ、強い相手への恐怖、弱い立場になった相手へ仕返ししたくなる感情があります。ドラえもんはギャグ漫画でありながら、こういう人間関係の嫌なところをかなり正確に描いているんですよね。

ジャイアンとスネ夫は、仲良しにも見えるし、支配と打算の関係にも見えます。スネ夫の本音を拾っていくと、その両方が同時に存在していることが分かります。だからこの二人は面白い。表では一緒に笑い、裏では恨みがたまり、道具が出ると本音が噴き出す。ドラえもんの子ども社会の濃さが、ここに詰まっています。

おすすめの記事