2人で両端を持つと互いの体が入れ替わる「身がわりバー」。外見はそのままで内側の意識だけが入れ替わるため、見た目は相手なのに中身は自分という状態になります。コミックプラス6巻「身がわりバー」として収録されたこのエピソードは、のび太がしずちゃんになりかわって危機を乗り越えるという、ちょっとドキドキする展開が魅力です。外見を維持したまま中身だけが変わるという設定は、ひみつ道具の中でも特に哲学的な問いを含んだ道具といえます。自分とは何かという問いに、この道具は遊び心のある形で触れています。
のび太=しずかちゃん?
屋根裏のねずみを追い払うため、ドラえもんとのび太は身がわりバーで体を入れ替え、のび太が無事役目を果たしました。
ドラえもんに見えるが中身はのび太 ドラえもんプラス6巻「身がわりバー」P182:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
次にのび太は身がわりバーでしずかちゃんと体を入れ替えるのですが、家庭教師の先生の前でいつものだらしない態度を取ってしまいます。そんなのび太の行動に腹を立てたしずかちゃんに嫌われてしまったのでした。
自分の代わりに動いている相手が自分らしくない行動を取ることへのフラストレーションは、非常にリアルな感情です。しずかちゃんの立場からすれば、自分の体が他人に操られて恥ずかしいことをされた気分になりますね。身がわりバーを使う際は、相手への配慮が非常に重要だということがこのエピソードから伝わってきます。
しずかちゃんはこんな寝方はしない? ドラえもんプラス6巻「身がわりバー」P187:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
体を入れ替えます
身がわりバーの両端を2人で持つと体を入れ替えることができます。
突然目の前に自分がもう1人あらわれたかのように錯覚しますが、それは体が入れ替わっている証拠。
もちろん周りから見たら入れ替わっていることなどわかりません。
外見は相手のまま、中身だけが入れ替わるという特性は、代理行動を頼みたい場面では非常に便利です。ただし、外見が相手のままなので、その外見に合った行動を取ることが求められます。のび太がしずかちゃんの体を借りながらだらしない行動を取ってしまったのも、この点への配慮が足りなかったためです。
他でも入れ替わったことがある
実は体を入れ替える道具は他にも登場しています。
トッカエバー(コミック8巻)や入れかえロープ(コミック15巻)で2人の体を入れ替える効果があり、のび太は芸能人と体を交換したり、しずかちゃんが犬と入れ替わったりしました。
身がわりバーは自分の代わりに相手にお願いする目的で描かれているものの、用途としてはこれらのひみつ道具と変わりありません。
トッカエバーは棒状のもので相手に触れると入れ替わるシンプルな設計、入れかえロープは縄跳びのように使う遊び感覚の道具です。身がわりバーは両端を2人で同時に持つという使用条件があり、両者の合意が必要という点でやや使いにくい面もあります。逆にいえば、意図しない入れ替わりが起きにくいという安全性もあります。
習い事の多いしずかちゃん
このストーリーでは、しずかちゃんの家庭教師が登場します。
おそらく高校生か大学生と思われますが、小学生のしずかちゃんのことを明らかに好意的な目で見ていて、しずかちゃん本人もそのしつこさに嫌気がさしている様子です。
危険人物かも! ドラえもんプラス6巻「身がわりバー」P188:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ピアノやヴァイオリンに加えて勉強にも家庭教師をつける様子から、経済的にも恵まれている様子も伺えます。
この家庭教師がおかしな行動をする前に逃げ出してよかったですね。
体の入れ替わり系の道具として、コピーロボットのように自分の分身を作り出す道具や、アベコンベのように心を入れ替える道具とも近い概念を持っています。身がわりバーが「物理的な体の交換」を行うのに対し、コピーロボットは「自分の複製を作る」という違いがあります。また、かくれマントや石ころぼうしのように自分の存在を隠す系の道具とも組み合わせると面白い使い方ができそうです。身がわりバーで体を入れ替えた後、相手の体でかくれマントを使えば、まったく新しい形での行動が可能になります。
入れ替わりを悪用しないために
身がわりバーのような体の入れ替わりができる道具を使う際に最も重要なのは、相手の同意を得ることです。2人で両端を持つという使用方法上、お互いが合意しなければ使えないという設計になっていますが、その合意を得る際に相手を騙したり強制したりする行為は許されません。
のび太がしずかちゃんと入れ替わった際に問題になったのも、入れ替わること自体ではなく、しずかちゃんの体でのび太らしい行動を取ったことでした。相手の体を借りる際は、その人の名誉や評判を損なわないように行動する責任があります。
体の入れ替わりという行為は、単に物理的な移動ではなく、相手のアイデンティティを一時的に借りることでもあります。その責任の重さを理解した上で使うことが、身がわりバーを正しく活用する条件です。
のび太とドラえもんが入れ替わる意義
エピソードの最初でドラえもんとのび太が体を入れ替えてねずみ退治をするという場面は、のび太がドラえもんのポケットや道具を使えるかどうかという興味深い設定でもあります。外見はドラえもんなのに中身はのび太というケースで、もし四次元ポケットにアクセスできてしまうとドラえもんの道具を勝手に使い放題になるかもしれません。
ドラえもんシリーズでは体の入れ替わりが起きた際の四次元ポケットの扱いはエピソードによって異なりますが、体を入れ替えた際に全ての能力や記憶まで共有されるのかという点は、こういった道具を使う際の興味深い疑問点です。
のび太がドラえもんの体でねずみ退治という難題をクリアしたという点は、のび太の勇気と行動力の一面を示しています。いつも怠けているイメージのあるのび太ですが、いざという時には頑張れるというキャラクターの奥行きが感じられます。
入れ替わり系道具の使い分け
体の入れ替わりができる道具はひみつ道具の中でも複数存在し、それぞれ特徴が異なります。トッカエバーは相手に触れるだけで入れ替わる即効性が特徴で、入れかえロープは縄跳びのように遊び感覚で使える設計です。
身がわりバーは両者が合意して両端を持つ必要があるため、最も安全で倫理的な入れ替わり道具といえるかもしれません。相手の同意なしには使えないという設計上の配慮が、悪用を防ぐ仕組みになっています。
どの道具を選ぶかは状況によりますが、相手との合意を重視するなら身がわりバー、素早く入れ替わりたいならトッカエバー、遊び感覚で楽しみたいなら入れかえロープという使い分けが適切でしょう。なお、入れ替わった後は通常の動作で元に戻れるのか、それとも再び身がわりバーを使う必要があるのかという点も気になります。このような詳細な仕様が分かれば、実際の使用計画を立てやすくなります。入れ替わりが終わっても元に戻れない場合に備えた対処法を考えておくことが、身がわりバーを安全に使うための基本的な準備といえます。どちらかが遠くに行ってしまった場合でも元に戻れる距離制限などがあるかどうかも、長期的な使用では重要な仕様です。2人の距離が離れすぎると入れ替わりが解除される、あるいは逆に解除されなくなるという可能性も考えておく必要があります。






