苦手つくり機

特定の人物の苦手なものを意図的につくることができる苦手つくり機。これさえあればジャイアンだって怖くありません。名前と苦手にさせたいものを書き込むだけで、その相手は指定したものに対して強烈な嫌悪感や恐怖を感じるようになるというひみつ道具です。

子犬におびえるジャイアン

苦手なものが多いのび太をからかうジャイアン。その様子を見たドラえもんは苦手つくり機でジャイアンをこらしめることを考えます。

子犬を苦手なものに設定されたジャイアンは、普段ならかわいいと感じるはずの子犬を見かけて大声を上げて逃げ出してしまい、大勢の前で恥をかいてしまったのでした。普段は強がっているジャイアンが子犬1匹に全力で逃げ惑う姿はなんとも滑稽で、その場にいた人たちも啞然としたことでしょう。

苦手つくり機
2人の復讐劇がはじまる

ドラえもんプラス3巻「苦手つくり機」P154:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

苦手つくり機
こんなにかわいいのに・・・

ドラえもんプラス3巻「苦手つくり機」P155:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

あなたの苦手、つくります

苦手つくり機には小さな黒板のようなものが2つあり、1つには苦手をもたせたい相手の名前を、もう1つには苦手にさせたいものの名称を書くようになっています。

例えばのび太の名前とどら焼きと書くと、のび太はどら焼きを見た途端に恐怖を感じて逃げ出してしまうという具合です。この仕組みがあれば、相手の行動習慣を事前に把握しておくことで、ピンポイントで最大限の効果を発揮させることができます。

多くの人はクモやゴキブリ、ヘビなどを見かけると体の奥から寒気を感じて後ずさりしてしまいますが、苦手つくり機の効果もそれに似たものがあると考えられます。生理的な嫌悪感を意図的に植え付けるという点では、人の感情の仕組みを利用した非常に心理的な道具です。

人間プログラミングほくろが特定の行動や思考パターンを植え付ける道具に近いですが、苦手つくり機は恐怖や嫌悪感という感情的な反応を意図的に生み出す点でより心理的なアプローチをとっています。また、アンキパンのように記憶に関わる道具とは違い、苦手つくり機は特定の対象物への感情的な反応そのものを書き換えてしまうような効果を持っています。

恐怖症スタンプと使い分けましょう

コミック27巻には恐怖箱恐怖症スタンプが登場しますが、苦手つくり機と一緒につかうとさらに効果を発揮するでしょう。

関連ひみつ道具

恐ろしいものがたくさん詰まった恐怖の箱

恐怖箱

どちらも相手に広くざっくりした範囲で恐怖を与える道具ですが、相手の行動習慣がわかっていれば苦手つくり機でピンポイントで最大の恐怖をお見舞いすることができますね。

ジャイアンのような体力自慢のキャラクターでも、精神的な弱点を突かれると一気に崩れ落ちるという場面が描かれているのが印象的です。力では敵わない相手に対して、知恵で対抗するというドラえもんの道具の本質がよく表れています。

ウソ800のように相手の行動を間接的に操作する道具と組み合わせれば、さらに効果的な場面もありそうです。例えばウソ800で相手の本音を引き出した上で、苦手つくり機で弱点を設定するという連携技も考えられます。

ただし、苦手つくり機の使用はあくまでもフィクション内の話であり、相手の苦手を意図的につくるという行為自体が倫理的に問題があることは覚えておく必要があります。のび太の世界の中でも、こうした道具を使ったドタバタ劇が笑いと教訓を同時に伝えているところがドラえもんのひみつ道具の奥深さです。宿題をやるロボットのように日常の困りごとを解決するための道具とは対照的に、苦手つくり機は相手への対抗手段として機能する攻撃的な側面を持った道具です。どんな強敵にも弱点があるという発見を与えてくれる、ドラえもんらしい痛快な道具といえます。

苦手の正体とは何か

苦手つくり機が与える苦手というのは、どのような仕組みで機能するのでしょうか。人間が何かを苦手とする理由は様々で、過去のトラウマ、見た目への本能的な嫌悪感、匂いや感触への生理的反応などが組み合わさって生まれます。

苦手つくり機はこれらの感覚を人工的に相手の脳内に植え付けるという、かなり高度な心理的干渉を行っていると考えられます。相手の感情や記憶の仕組みに直接働きかける点では、アンキパンが記憶を強化するのと表裏一体の発想ともいえます。

苦手はある日突然克服されることもありますが、苦手つくり機で植え付けられた苦手は時間とともに薄れてしまうのでしょうか。あるいは永続的に効果が続くのでしょうか。その詳細はコミックには描かれていませんが、のび太の行動パターンを見ていると苦手を克服する意志の強さを持っていることもあるので、ひみつ道具の効果も時間や状況次第で弱まることがあるのかもしれません。

自分の弱点は自分で認識していることが多いですが、苦手つくり機で植え付けられた弱点は本人も気づかないうちに持ってしまうことになります。ある日突然、何でもなかったものに強烈な恐怖を感じるようになるというのは、本人にとっても非常に戸惑う体験でしょう。使い方次第で非常に強力であり、またかなり残酷にもなれる道具です。

苦手つくり機の面白い点は、特定の対象物への苦手を設定するため、その対象物が生活の中に自然に現れる頻度が高いほど効果を実感する機会が増えるということです。例えばジャイアンが毎日通る道に必ず現れるものを苦手に設定すれば、毎日のように苦手なものに遭遇することになります。これはある種の心理的な包囲網を構築できるということでもあります。道具としての汎用性は高いですが、使い手の倫理観と知恵が問われる道具でもあります。ウソ800で相手の素直な反応を引き出しながら、苦手つくり機で弱点を的確に突くという組み合わせは、のび太がジャイアンに対抗するための戦略として機能しそうです。

そもそも、人間が何かを苦手とするのはその人の経験や感覚に根ざしたものです。苦手つくり機はその根底にある感覚を書き換えるという、非常に高度な精神的干渉を行っています。こうした心理的操作を可能にする道具が存在するという設定は、ドラえもんの世界が単なる子供向けコメディを超えた哲学的な深みを持っていることを示しています。私たちは自分が感じる恐怖や嫌悪感を当然のものだと思っていますが、それが外から意図的に植え付けられたものだとしたら、自分の感情を信じることの難しさも考えさせられます。

ジャイアンが子犬を見て逃げ出す姿は滑稽ですが、そこには苦手という感情の強さと、それに抗えない人間の心理的な脆弱さが描かれています。どんなに強くても、心の弱点を突かれれば誰でも崩れてしまうというのは普遍的な真実です。この道具は笑いの中にそうした人間の本質を描いています。

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