ペンシルミサイルは、先端の突起を引き出してセットし、目標物を言葉で宣言してボタンを押すだけで自動的に発射されるひみつ道具です。鉛筆のような外見でありながら、子供でも扱えるシンプルな設計になっており、持ち歩きにも便利な小型ミサイル兵器です。道具の名前の通り、見た目は普通の鉛筆に見えるため、ポケットに入れておいても周囲に気づかれにくいというステルス性も持っています。
手っ取り早く仕返しする方法
ジャイアンとスネ夫にいじめられ、手っ取り早く仕返しする方法を探すのび太は、まずドラえもんからチャンピオングローブを勧められますが、グローブをはめてケンカすること自体が面倒くさいと断りました。グローブをはめるだけで絶対に勝てるという、これ以上ない優れた道具を前にして面倒くさいと言えるのは、のび太だけでしょう。
次にドラえもんが取り出したのがペンシルミサイルです。ボタンを押すだけで発射されるこの道具は、のび太が求めるラクに仕返しできる手段にぴったりでした。ことあるごとにのび太はミサイルを飛ばして自分の身を守るようになります。
最初はジャイアンもスネ夫もミサイルに脅えて手出しできなくなり、のび太は優位に立ちます。ところがスネ夫にミサイルの存在がバレてしまい、スネ夫もミサイルを手に入れてしまったことで状況は一変。お互いがミサイルの保有者同士になる危険な始末になってしまいます。
強気ののび太 出典:ドラえもんプラス5巻「ペンシルミサイルと自動しかえしレーダー」P156:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
設置が簡単なミサイル
ペンシルミサイルの使い方はとてもシンプルです。まず先端にある突起を引き出すとセット完了。あとは目標物を言葉で宣言し、ボタンを押したら任意のタイミングでミサイルが飛んでいきます。
特別な訓練も組み立ても不要で、取り出してすぐ使える即応性が最大の強みです。携帯できるサイズなので、ポケットに忍ばせておけばいつでもどこでも使えます。いじめっ子に会いそうな時に備えてあらかじめセットしておくこともできます。
このお手軽さが、面倒くさがりのび太に選ばれた理由でもあります。チャンピオングローブのようにはめる手間すら省けるとあって、のび太にとってはまさに理想の道具だったのです。道具の便利さと手軽さが使い手の判断力を鈍らせるという構造は、ドラえもんのひみつ道具全体に通じるテーマでもあり、ペンシルミサイルはその典型的な例といえます。
相手を黒焦げにする威力
外見は鉛筆サイズと小ぶりですが、爆発力はかなりのものがあります。ジャイアンに命中すると黒焦げになるほどの威力があり、毎回爆発させられていてはさすがのジャイアンも体がもちません。ミサイルを持ったのび太に対してジャイアンが恐怖を感じるようになるのは当然の流れです。
かなりの威力のようだ 出典:ドラえもんプラス5巻「ペンシルミサイルと自動しかえしレーダー」P157:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
ここまで来るとのび太の悪いクセが出てきます。力を持つと調子に乗ってしまう性格のため、今度はジャイアンへの仕返しを超えて、必要以上に威張り始めてしまいます。そこをスネ夫に見られて逆襲を受けるというのは、のび太が道具を手に入れた時の毎回お決まりのパターンです。
ジャイアンですらビビるほど 出典:ドラえもんプラス5巻「ペンシルミサイルと自動しかえしレーダー」P160:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
のび太が強い道具を持つと必ず調子に乗り、しかし最終的には手痛いしっぺ返しを食らう。この繰り返しがドラえもんのストーリーの定番パターンになっており、読者もそれを楽しみに読んでいるところがあります。力を持った時に人間がどう振る舞うか、という問いに対してのび太は毎回同じ答えを出してしまうわけで、人間の本質的な弱さをさらりと描いているのがドラえもんの奥深さです。
破滅への一歩は踏み出すな
のび太とスネ夫がミサイル合戦を繰り広げる中、ドラえもんは対抗策として自動しかえしレーダーをペンシルミサイルに取り付けます。飛来物を感知すると自動的に発射元へ撃ち返す装置なのですが、これが野球のボールに誤反応してしまい、大量のミサイルが自分たちに降り注ぐ最悪の結果を招きます。
お互いがミサイルで威嚇し続ける限り、どちらかが怪我をするまで止められないという状況は、まるで核抑止論の縮図のようです。ミサイルを持ったことで問題が解決するどころか、より深刻な危機を生んでしまうという展開は、藤子先生が込めた大人向けのメッセージでもあります。子供向けのコミックでありながら、軍拡競争の不毛さや報復合戦の悪循環を、のび太とスネ夫の小競り合いという形で見事に表現しています。このエピソードは読めば読むほど、単なるギャグ話以上の深みが感じられます。
ミサイルは自作できます
コミック44巻では、なんとミサイルを自作するためのひみつ道具が紹介されています。ホームミサイル建造法には身の回りのものだけで作れる強力なミサイルの作り方が記されており、不器用なのび太でさえ完成させることができました。ペンシルミサイルは既製品として四次元ポケットから取り出す道具ですが、ホームミサイル建造法は手作りで作るという違いがあります。完成品を使う手軽さはペンシルミサイルが上ですが、材料次第でパワーを調整できる点ではホームミサイルに分があるかもしれません。
武器系道具の中でも、ペンシルミサイルはコンパクトさと即時発射が最大の売りです。ホームミサイルのような大型兵器とは違い、携帯して持ち歩けるサイズ感が特徴です。他の攻撃系道具と比べると、空気ピストルは気体を飛ばすだけですが、ペンシルミサイルは実際に爆発する弾頭を持っているため、破壊力は段違いです。
ケンカの仕返し道具としてチャンピオングローブと並んで同じエピソードに登場しますが、チャンピオングローブが近距離の格闘戦用であるのに対し、ペンシルミサイルは離れた場所から攻撃できる点が異なります。近づかずに相手にダメージを与えられる分、臆病なのび太には向いているかもしれませんが、使いすぎると今度は相手にも対抗手段を持たせることになるという、エスカレーションのリスクが常につきまといます。チャンピオングローブを使っておけばその場で決着がついていたかもしれないことを考えると、のび太の面倒くさがりがいかに問題を大きくしたかがよくわかります。
ペンシルミサイルの興味深い点のひとつは、宣言した目標に向かって飛ぶという誘導システムです。言葉で目標を指定するだけで狙い通りに飛んでいく精度があるということは、内部に高度な音声認識と目標追跡の技術が組み込まれていると考えられます。外見が鉛筆のように見えるにもかかわらず、内側にはミサイルの推進装置と誘導システムが収まっているわけで、22世紀の技術力の高さには毎度驚かされます。
ただ、その高い技術力で作られた道具が、子供のケンカの仕返しに使われてしまうというのが、ドラえもんのひみつ道具の常です。どれほど優れた道具も、使い手の目的次第で使われ方は変わります。ペンシルミサイルが本来なにを想定して設計されたのかは不明ですが、少なくともジャイアンへの仕返しには大いに役立ってしまいました。
同じコミックプラス5巻には強力ウルトラスーパーデラックス錠も登場し、のび太がさまざまな手段で強さを求める姿が一貫して描かれています。道具が変わっても、力を手に入れると調子に乗り、しっぺ返しを食らうというのび太のパターンは変わりません。ペンシルミサイルはその典型を体現した道具です。






