ビッグボール

ビッグボールは、野球ボール型の乗り物に2人で乗り込み、バット型の棒で叩いて空を飛ぶひみつ道具です。見た目は豪快で楽しいのに、推進力を手に持った棒へ頼る設計が危なすぎて、短い登場ながら印象に残ります。

コミック14巻のボールに乗ってでは、ドラえもんとのび太がビッグボールで空を飛びます。ところが飛んできた野球ボールがドラえもんの頭に当たり、バット型の棒を落としてしまうことで、一気に落下の危機へ進みます。

叩くほど速くなる野球ボール型の乗り物

ビッグボールの仕組みは、ひみつ道具の中でもかなり直感的です。大きな野球ボールに乗り、バットのような棒で叩く。するとボールが飛んでいき、叩くほどスピードが上がります。野球の打球をそのまま乗り物にしたような発想です。

普通の乗り物はエンジンや燃料で動きますが、ビッグボールは打撃が推進力です。だから道具の使い方としては、乗り物でありながらスポーツの動きに近い。操作している本人が体を使うため、乗っているだけの乗り物より遊び感が強くなります。

ただ、この方式には大きな弱点があります。推進力を生む棒を落とした瞬間、ボールはただの巨大な物体になります。空中でそれが起きれば、乗っているドラえもんとのび太はそのまま落下するしかありません。

わずか2ページで危険性まで見せる

ビッグボールの登場は、コミックでもわずか2ページです。短い出番ながら、楽しい飛行、事故、落下、救助まで一気に描かれます。道具の魅力と欠点が、かなり圧縮された形で出ています。

飛んできた野球ボールがドラえもんの頭に当たり、棒を落とすという流れも、ボール型の乗り物らしい皮肉があります。野球にちなんだ道具なのに、本物の野球ボールが事故の原因になるのです。

落下したビッグボールは、野球をしていた人にナイスキャッチされます。普通に考えると、ドラえもんとのび太が乗った巨大なボールを受け止めるのはかなり無茶です。けれども、野球のキャッチとして処理されることで、危険な場面が一瞬でギャグになります。

ビッグボールをキャッチする人
2人合わせて150kg近くあるはずなのだが、この人の体に異常はないのだろうか・・・

ドラえもん14巻「ボールに乗って」P111:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

この場面は、ドラえもんの短編らしい勢いがあります。現実的に考えれば大事故ですが、野球の文法に乗せることで笑えるオチへ変わる。ビッグボールは、道具そのものよりも、野球ギャグとしての完成度が目立つ道具です。

タケコプターの代わりになるか

空を飛ぶ道具として考えると、まず思い浮かぶのはタケコプターです。タケコプターは小さく、身軽で、移動にも潜入にも使いやすい。一方、ビッグボールは大きく目立ち、操作にもバット型の棒が必要です。

ただ、ビッグボールにはタケコプターとは違う魅力があります。2人で乗れるため、道具を共有する楽しさがありますし、叩くほど速くなるという単純な操作も分かりやすいです。遊園地のアトラクションとしてなら、かなり人気が出そうです。

長距離移動に使うなら、燃料や電池切れが描かれない点は強みかもしれません。タケコプターは大長編でバッテリー問題が起こりがちですが、ビッグボールは叩ける限り進めるように見えます。とはいえ、棒をなくしたら終わりなので、別の弱点を抱えています。

同じ飛行系でも、勢いで飛ぶ風ロケットや、ロケット型の移動をするロケットストローとはかなり違います。ビッグボールは、推進の仕組みよりも見た目の野球らしさを優先した道具です。

危機管理が甘すぎるドラえもん

この話で気になるのは、ドラえもんの危機管理の甘さです。空を飛ぶ乗り物なのに、推進に必要な棒を手で持っているだけです。ひもでつなぐ、予備を積む、自動ブレーキを付けるなど、考えられる対策はたくさんあります。

しかも、ビッグボールは2人乗りです。自分だけでなく、のび太の命も預かっています。それなのに、外部から飛んできたボール一つで操作不能になる設計はかなり危ういです。未来の道具なのに、安全面は妙にアナログです。

落下対策としては、空気砲のように空気で衝撃を和らげる仕組みや、ボール本体に自動浮遊機能を入れる方法が考えられます。せめて棒を落とした時にふわっと降りる機能があれば、乗り物としての信頼度は大きく上がります。

ボールだから受け止められるという強引さ

ビッグボールのオチは、落ちてきた巨大ボールを野球の守備のように受け止めてもらうものです。ここで道具の形が効いています。もし乗り物が車や飛行機の形なら、キャッチという発想にはなりません。

ボール型だから、落下事故が野球のプレーに変換される。これがビッグボールの最大のギャグです。危険な乗り物なのに、最後はナイスキャッチで済んでしまう。道具のデザインがオチまで支配しています。

球体の道具としては、迷路探索に使う迷路探査ボールや、空調を扱うエアコンボールもありますが、ビッグボールほど形そのものがギャグになっている道具は珍しいです。

ビッグボールは、実用性だけで見ればかなり不安が残る乗り物です。それでも、野球ボールに乗ってバットで空を飛ぶという発想は、ドラえもんらしい楽しさに満ちています。短い登場でも記憶に残るのは、道具の仕組み、事故、オチのすべてがボールという一点でつながっているからです。

乗っている側もスポーツに参加している

ビッグボールは、ただ座って目的地へ運ばれる乗り物ではありません。バット型の棒で叩くという動作が必要なので、乗っている側もずっとスポーツに参加している感覚になります。移動そのものが遊びに変わる道具です。

この点は、同じ移動道具でもどこでもドアとは正反対です。どこでもドアは移動の過程を消しますが、ビッグボールは移動の過程を派手に見せます。便利さより体験の面白さを優先している道具なのです。

ただし、体を使うぶん疲れそうです。長距離を飛ぶなら、叩き続ける腕力が必要になります。のび太がどれほど役に立つかは怪しいので、実際の操縦はドラえもん頼みになりそうです。

巨大なボールが街を飛ぶ迷惑さ

ビッグボールはかなり目立つ道具です。巨大な野球ボールが空を飛んでいれば、誰でも見上げます。移動手段として使うには、隠密性がほとんどありません。

しかも、落下すれば周囲に被害が出ます。作中では野球をしていた人が受け止めてくれましたが、道路や屋根に落ちていたら大事故です。ボール型なので柔らかそうに見えても、中に2人乗っているなら相当な重さがあります。

野球場や広場のような開けた場所で遊ぶなら楽しそうですが、住宅街の上を飛ぶには向きません。ドラえもんとのび太が気軽に使っているほど、読者側は安全面が気になってしまいます。

短い話だから道具の個性が濃い

ビッグボールは出番が短いぶん、機能がかなり絞られています。大きなボールに乗る、叩く、飛ぶ、棒を落とす、落ちる、受け止められる。これだけで道具の魅力と弱点が全部伝わります。

ドラえもんの道具には、長い話でじっくり使われるものもあれば、ビッグボールのように一発ネタに近いものもあります。短い道具ほど、見た目とオチの分かりやすさが大事です。その点、ビッグボールはかなり強いです。

もし大長編に登場したら、追跡から逃げる場面や、崖を越える場面で活躍できるかもしれません。けれども、棒を失う弱点がある限り、危機を広げる役割にも向いています。便利な移動手段でありながら、トラブルメーカーにもなるのがビッグボールの個性です。

また、2人乗りという点も地味に効いています。ドラえもんとのび太が同じボールに乗るため、片方の失敗がすぐもう片方へ響きます。ドラえもんが棒を落とせば、のび太も一緒に落ちる。協力して飛ぶ乗り物でありながら、責任も共有する道具なのです。

ボールに乗って空を飛ぶ姿はかなりばかばかしいですが、そのばかばかしさが道具の魅力です。実用性だけを突き詰めれば別の形になるはずなのに、あえて野球ボールとバットにする。遊びの発想をそのまま乗り物へ大きくしたところに、ビッグボールらしさがあります。

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