狙った相手の行動をすっかりそのまま奪い取ることができる筋肉コントローラーと受信機発射ガンです。自分が動けばその動きがそのまま相手に転写され、声帯まで支配できるという高度な遠隔操作系ひみつ道具です。のび太のような非力な少年でもジャイアンやスネ夫を思いのままに動かせるという、ある意味最強クラスの道具のひとつです。
全て意のままののび太
野球が下手くそだからというりゆうでドブの中のボール拾いをさせられるのび太。これに腹を立てたのび太はドラえもんから筋肉コントローラーと受信機発射ガンを借り、ジャイアンとスネ夫をこらしめようとします。
2人を操って悪口を言ったりブタのマネをさせるなどうっぷん晴らしをしていましたが、最後はのび太がドブに落ちてしまうオチが待っているのでした。のび太が操作者として相手を操れば、自分の動作がそのまま相手に反映されるため、自分もうかつな動きはできません。油断してドブに落ちたのもそのせいです。
意外とダンスができるのび太 ドラえもんプラス3巻「筋肉コントローラー」P182:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
意のままである ドラえもんプラス3巻「筋肉コントローラー」P180:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
相手を管理下に置きます
筋肉コントローラーと受信機発射ガンでは、まず行動を操りたい人に対して受信機をガンで発射して取り付けます。次にヘアバンド型のコントローラーを自分の頭に取り付けてスイッチを入れれば準備完了です。あなたが動けば受信機を取り付けられた人の行動を完全に支配することができます。ボタンを切り替えれば複数人を同時に操ることもできます。
人間プログラミングほくろが特定の行動パターンを繰り返させるのとは異なり、筋肉コントローラーはリアルタイムで操作者の動きをそのまま相手に転写する点が特徴的です。あらかじめプログラムされた行動ではなく、操作者の意図をそのまま伝えるダイレクトな操作性が最大の特徴です。
また、あやつりそっくりふうせんが風船という無機物を操作する道具なのに対し、筋肉コントローラーは生きている人間の筋肉そのものをハッキングするという、より踏み込んだ設計になっています。受信機を相手に取り付けるという手順が必要ですが、一度セットすれば完全に相手の自由意志を奪えるという点では圧倒的な支配力を持ちます。
声帯も乗っ取る
筋肉コントローラーと受信機発射ガンは相手の声帯も支配できるため、好きな言葉を自由にしゃべらせることも可能です。周りの人からすれば本人が話しているようにしか聞こえず、悪用されると大変なことになりそうです。
のび太も2人を操って悪口を言ったりブタのマネをさせるなどうっぷん晴らしをしており、マラソンで楽をしたり宿題を簡単に済まそうとしました。声まで操れるとなると、電話越しに別の人に成りすましてしゃべらせることも可能で、その汎用性は非常に高いです。
ただし使い方によっては深刻なトラブルを引き起こすため、こうした高性能な道具はドラえもんが慎重に管理しているのでしょう。
似ている道具
コミック21巻にはまねラジコンが登場します。
これも相手と自分の行動を同調させる機能がありますが、のび太は自分の体を相手の行動に合わせるために使いましたね。マラソンで楽をしたり宿題を簡単に済まそうとしました。使い方によって幅が広がる道具です。
筋肉コントローラーと受信機発射ガンの組み合わせは、単体の道具では実現できない精度の制御を可能にしています。コントローラー側の操作者の意図を受信機側の人間がそのまま実行するというシステムは、現代でいえばモーションキャプチャに近い発想です。それを人間に対してリアルタイムで適用するという点は、SF的な想像力が詰まっています。
悪用すれば相手に好き勝手なことをさせられますが、最終的にはのび太がドブに落ちるというオチが示すように、他人を操ることには必ず代償が伴います。空気ピストルのように直接的に相手を吹き飛ばす道具とは違う形で、のび太の復讐願望が描かれているのが筋肉コントローラーのユニークなところです。自分が動いた通りに相手も動くという仕組みは、使い手のスキルや状況判断がそのまま結果に反映される道具ともいえます。のび太が楽しそうに相手を操るシーンは痛快でもありますが、操作者自身も気を抜けないというリスクを抱えた道具でもあります。
筋肉コントローラーの応用可能性
筋肉コントローラーと受信機発射ガンは復讐や悪ふざけのためだけに使われる道具ではなく、応用次第でさまざまな使い方が考えられます。例えばスポーツの練習補助として活用することもできます。プロのスポーツ選手の動きをそのまま初心者の体に転写することで、正しいフォームを体で覚えさせるという使い方です。
また、高齢者や身体的な制約がある方のリハビリにも応用できるかもしれません。理学療法士の動きを正確に患者の体に伝えることで、より効果的なリハビリテーションが可能になるでしょう。このように、悪用の可能性が高い道具に見えながらも、正しい目的で使えば非常に有益なひみつ道具でもあります。
コントローラーを着けた操作者のスキルがそのまま受信者に伝わるという仕組みは、技術伝承の手段としても革命的です。師匠の技を弟子の体に直接インストールできるなら、習得に何年もかかる技術を短期間で身につけることも夢ではありません。
ドラえもんのひみつ道具は多くの場合、悪用した時のオチで教訓を伝えますが、筋肉コントローラーと受信機発射ガンも同様です。のび太が最終的にドブに落ちるという結末は、他人を操ることの危うさと、自分の行動に責任を持つことの大切さを笑いの形で示しています。人間プログラミングほくろと組み合わせれば、行動だけでなく思考パターンまで変えてしまうという、より強力な影響を与えることができるかもしれません。しかしそれは倫理的に大きな問題をはらんでいることも確かです。道具の力は使う人間の倫理観で初めて価値が生まれるということを、このエピソードは改めて教えてくれます。筋肉コントローラーと受信機発射ガンは、使い手の判断次第で非常に価値ある道具にも、危険な道具にもなります。のび太の使い方は復讐という動機から始まりましたが、正当な目的のもとで活用されれば人類にとって非常に有益な発明になり得るものです。ドラえもんのひみつ道具の中でも、これほど社会への影響が大きいものは珍しく、それだけに適切な管理と使用が求められる特別な道具だといえるでしょう。
最後に、筋肉コントローラーが示すテーマについて考えてみましょう。他者の体を自分の意のままに動かすことができるという能力は、一種の絶対的な支配を意味します。自分より強い相手であっても、道具ひとつで完全に制御できるというのは、力による序列を根底から覆す可能性を持っています。
のび太がジャイアンやスネ夫を操る場面は、普段虐げられている側が逆に支配する立場になるという権力逆転の構図を描いています。しかしその結末はのび太がドブに落ちるという自業自得のオチで締めくくられます。他者を支配しようとする行為は、最終的に自分に返ってくるという警告が込められているのかもしれません。コピーロボットのような便利な分身道具とは違い、筋肉コントローラーは相手の自由を奪うという倫理的な問いを常に内包した道具です。





