子ども向けマンガとして知られるドラえもん。
主要登場人物ののび太が実は人を殺した疑惑が持たれていることはあまり知られていないかもしれません。
問題の殺人現場
射撃の天才として知られるのび太は『ウエスタンゲーム』で世界最高記録を叩き出して自信満々。
自分の実力を試すためドラえもんに内緒で『タイムマシン』を使って1880年の西部アメリカの街であるモルグシティに降り立ちます。
そこで実弾を使ってならず者を追い払うのですが、問題となるシーンが2つあります。
問題シーン1
ドラえもん24巻「ガンファイターのび太」P167:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
まず1つ目のシーンは馬に乗ったならず者2人がモルグシティを襲うシーン。
のび太は拳銃(実弾入り)を持ち出して2人との決闘を制しますが、上の画像のように相手は2人とも出血していることがわかります。
出血の様子から左側の男は脇腹に命中、右側の男は頭付近に命中したことがわかります。
脇腹はともかく頭に銃弾が当たれば致命傷は免れませんし、即死ということもありえます。
でも安心してください。のび太はこの時点でまだ人殺しはしていません。
この次のコマでは2人の男性が治療を受けて牢屋に入っているシーンが描かれていて、のび太が発射した銃弾はケガを負わせただけということがわかります。
ドラえもん24巻「ガンファイターのび太」P168:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
頭付近に被弾したと思われていた男性(上の画像で右側)はどうやら腕に命中していたようで、きちんと包帯が巻かれて処置されていることが判明しました。
ところが問題は次のシーンです。
問題シーン2
こちらはモルグシティの夜。
ドラえもん24巻「ガンファイターのび太」P171:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
本格的に街を襲うならず者の集団に対してのび太と町長さん2人で立ち向かうシーンで、町長さんの背後から忍び寄るならず者4人に対して実弾を発砲するのび太が描かれています。
問題シーン1のように生々しい出血シーンが描かれていないためどこに命中したかは定かではありませんが、どの人物も一撃で倒れ込んでいることがわかりますね。
そして彼らの様子はこの後詳細に描かれることはなく、のび太は途中から参加したドラミちゃんに『ドリームガン』を借り、相手を殺傷することなく眠らせることに成功。
めでたくモルグシティは救われ、のび太は時の英雄として語り継がれることになるのです。
さて、ここで気になるのはのび太に撃たれた男たちの様子です。じっくり考えてみることにしましょう。
のび太は人を殺してしまったのか?
のび太が撃ったならず物たちは果たして死んでしまったのかどうか?のび太は小学生で殺人を犯してしまったのか?
その謎を解く3つの鍵を検証してみます。
鍵1:のび太の態度から推測してみる
のび太がモルグシティに来たばかりの頃、彼は見事にならず者2人を倒して街を守りますが、相手が出血した事実に自分が実弾を発砲して人を傷つけたことに衝撃を受けて倒れ込んでしまいました。
ドラえもん24巻「ガンファイターのび太」P168:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
当然といえば当然です、血を見ていい気分になる人はいませんし、ましてや心優しいのび太が他人を傷つけて平気でいられずはずがありません。
のび太は人の幸せを願い、他人の悲しみを自分の悲しみのように感じ取ることができる優れた人物ですので、人殺しをして冷静さを保てるはずがないのです。
つまり、もしのび太がこの日の夜、上記の問題シーン2で本当に人殺しをしていたとすればルンルン気分でドラミちゃんと一緒に現代に帰るとは到底かんがえられません。
英雄として名前を残したことに気分が良くなっている事実から類推すれば、のび太は人殺しをしていないと考えることができるのです。
ドラミちゃんが『わすれろ草』をつかってのび太の記憶を消してしまっている可能性は否定できませんが、『わすれろ草』の持続時間はわずか30分しかありません。
のび太がこの後も平然と日常を過ごしている事実からも、おそらくのび太は殺人をしていなかったという裏付けになるのではないでしょうか。
ただし、あまりの事実(=自分が殺人を犯したこと)にのび太が自ら記憶を改ざんして忘れてしまっている可能性は否定できません。
鍵2:ドラミちゃんが介抱した可能性を考える
夜の決闘が終わった後、のび太とドラミちゃんは街の人に見つからないようそっと現場を後にして現代に帰ります。
実はこの時にドラミちゃんが『お医者さんカバン』や『いたみ止め、すぐきずを治すばんそうこう、自動まきほうたい』などを使って撃たれた人を介抱して命を救った可能性が考えられます。
のび太を決して殺人者にしてはいけないというドラミちゃんの使命がそうさせたもので、のび太が1人で過去に乗り込んだ責任はあるものの見捨てておけない感情があった可能性が考えられます。
もちろんドラミちゃんが直接介抱するシーンが描かれているわけではないため、これらは推測の域を脱しません。
ただし、もし即死した敵がいたらドラミちゃんであろうと生き返らせることはできないためのび太の人殺しは確定してしまいます。
鍵3:町民が介抱した可能性を考える
自分たちの街が襲われたというのに、のび太がケガを負わせたならず者2人にきちんと包帯を巻いて介抱する優しい町民たち。
ひょっとすると夜の決闘でも町民たちがケガをした敵を介抱した可能性が考えられます。
それを影から見ていたのび太とドラミちゃんが安心して現代に帰るという自然な流れが推測できますね。
ただし、ここでも即死した敵がいた可能性は捨てきれません。
鍵4:ドラミちゃんの言葉から考える
帰りのタイムマシンの中でドラミちゃんが発した言葉を見てみましょう。
ドラえもん24巻「ガンファイターのび太」P175:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
『ならず者を、たったひとりでとらえた、謎のガンマンの伝説があるの』
ここで注目すべきは『とらえた』という言葉。
漢字で書くと捕らえるとなり、これは読んで字のごとく捕まえるという意味です。
死んだ人を捕まえるとは表現しませんし、ケガ人はいたかもしれないが全員を生け捕りにしたと捉えることができないでしょうか?
ドラミちゃんがのび太をかばって嘘の話をした可能性は否定できませんが、この伝説をそのまま受け取るとすればのび太は人殺しをしていないと考えることができそうです。
結論:疑惑は捨てきれないがのび太は殺人を犯していない
以上のことから考えると、のび太はモルグシティで殺人を犯していない可能性が限りなく高いが100%保証できるものではなく、正確な検証にはタイムマシンで事実確認をする必要がある、となります。
子どもマンガに殺人は似合いませんし、藤子先生がのび太を殺人者に仕立て上げることはないと願いたいものです。