『スーパーダンのふろしき』は、未来でも人気のヒーローであるスーパーダンのような能力を少しだけ身につけられるひみつ道具です。空を飛ぶ、弾を跳ね返す、物を透視するなど、子どものヒーローごっこを本物に近づけます。
本物のスーパーダンほど強くなれるわけではありませんが、のび太がジャイアンに立ち向かうきっかけになる道具です。
僕らのスーパーダン
いつの時代になってもスーパーヒーローは人気者です。
のび太の世界ではスーパーダンが活躍していて、なんとドラえもんがいた二十二世紀でもスーパーダンは人気ものとのこと。
世紀を越えて愛される、強くてたくましいヒーロー、それがスーパーダンです。
『スーパーダンのふろしき』は、そんなスーパーダンになるためのひみつ道具なんです。
ふろしきという古風な形でヒーローになれるところが、ドラえもんらしい発想です。マントやスーツではなく、包む道具として身近なふろしきが変身アイテムになるため、未来の玩具でありながらどこか和風の味があります。
ある程度の力が身につく
スーパーダンは誰にも負けない強さがあります。
- ロケットより早く飛ぶ
- ピストルの弾丸を弾き返す
- 悪を滅ぼす
常人離れした能力は、子どもたちの憧れです。
ひみつ道具のスーパーダンのふろしきを使うことで、空を飛ぶ、空気銃のたまを跳ね返す、コンクリートブロックを素手で壊す、物をとおして見えるといった能力が身につきます。
どれをとっても本物のスーパーダンには到底及びませんが、未来の子どもたちが遊びで使うひみつ道具であることを考えれば、これでも十分です。
そらを飛べる時点でうらやましいし、物をとおして見える力もすごいことですよね。
ただし、能力にははっきり制限があります。飛ぶ速さはかなり遅く、弾を跳ね返しても痛みは残り、ブロックを壊せば手が腫れます。完全なヒーローになる道具ではなく、ヒーロー気分を味わうための玩具に近いです。
のび太 VS ジャイアン
スーパーダンにあこがれるジャイアン。
悪者をこらしめたくてたまらないジャイアンは、平和な世の中に対してだんだん腹を立て始めます。
そんなジャイアンに対抗するため、ドラえもんからスーパーダンのふろしきを借りたのび太は、ジャイアンと一対一の決闘を挑みます。
勝てばいいだ、勝てば。 ドラえもん3巻「スーパーダン」P73:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
激闘のすえ、かろうじて勝利を収めることができたのび太。
いつもはいじめられてばかりいるうっぷんを、この時に発散することができたのでしょうね。
おもちゃのひみつ道具を使ったとはいえ、のび太とジャイアンは拳と拳の勝負をし、のび太が勝利を収めたのです。
この勝利は、のび太が急に本物のヒーローになったからではありません。弱いながらも道具の助けを借り、痛みに耐えながら前に出たからこそ意味があります。ジャイアン相手に逃げずに戦うだけでも、のび太にとっては大きな一歩です。
使いみちを考える
もしスーパーダンのふろしきが現代で開発されたとすると、いったいどういう使いみちが考えられるでしょうか。
空を飛ぶ
空を飛ぶことはできますが、小学生ののび太でさえ地面スレスレの高さを歩くよりも遅いスピードしか出ません。
使用者の体重によって飛ぶ高さが決まるため使い勝手が悪く、実用的な移動手段にはなりにくそうです。
空気銃のたまを跳ね返す
多少からだが強くなりはしますが、結局痛みに耐えて我慢することになるので、この能力もパッとしません。
コンクリートブロックを素手で壊す
ブロックを手で壊せばさすがにスゴイとなりますが、ブロック1個壊すごとに手が骨折する恐れがあり、これも実用的ではありません。
現実的に考えれば複雑骨折だ ドラえもん3巻「スーパーダン」P72:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄
建築現場でブロックを壊すのであれば、重機を使ったほうがはるかに効率的で安全です。
物をとおしてみえる
壁の近くまで行くと、壁がすけて中を見ることができます。この能力が唯一使える能力でしょうか。
ただし、これを正義の目的で使うのではなく、手品の場で周りを驚かせる程度に使えるという意味です。
カードの透視マジックであれば、目を近づけて百発百中で正解になりますね。
透視能力は便利ですが、使い方を間違えるとプライバシーの問題になります。ヒーローごっこの道具として与えるには、ここが一番危うい能力かもしれません。
空を飛ぶ力も、実用性より気分のほうが大きいです。高く速く飛べないなら移動手段にはなりませんが、地面から少し浮くだけでも子どもには十分楽しいはずです。未来のおもちゃとして考えると、性能を抑えてあるのは安全面の配慮かもしれません。
弾を跳ね返す力も、本物の銃弾ではなく空気銃のたまに限られているように見えます。完全な防御能力ではないため、危険な現場で使うには向きません。ヒーローの真似をする道具であって、ヒーローとして戦うための装備ではないのです。
おもちゃであることを忘れずに
普通の人間よりもちょっとだけ優れた能力を与えてくれるスーパーダンのふろしき。
あくまでおもちゃであることを忘れないでいれば、そこそこ楽しめるひみつ道具です。
子ども達の年代だと爆発的にヒットするかもしれませんね。
一方で、遊び道具としては刺激が強すぎます。空を飛ぶ、弾を受ける、ブロックを壊すといった行動は、少し失敗するだけで怪我につながります。未来の玩具として売られているなら、かなり細かい安全基準が必要です。
スーパーダンのふろしきの魅力は、完全な万能感ではなく、少しだけヒーローになれる物足りなさにあります。弱点が残っているから、のび太が苦労しながら戦う場面に味が出ます。
のび太が勝つことの意味
のび太がジャイアンに勝つ話は、それだけで読者にとって気持ちのよい展開です。普段は逃げることが多いのび太が、自分から勝負を挑み、最後まで戦い抜きます。道具の力を借りていても、立ち向かう姿にはいつもと違う勢いがあります。
ただ、完全な圧勝ではありません。スーパーダンのふろしきは本物のスーパーパワーを与えるわけではないため、のび太も痛い思いをします。だからこそ、勝利がただのズルに見えにくいです。弱い能力でなんとか勝った感じが残ります。
ジャイアンもまた、悪者を求めるあまり自分が乱暴な側へ寄っています。正義のヒーローに憧れているのに、やっていることは相手を痛めつける理由探しです。この矛盾が、スーパーダンごっこの滑稽さにつながっています。
ヒーロー願望をかなえる道具
スーパーダンのふろしきは、強くなりたい、空を飛びたい、悪を倒したいという子どもの願望をまとめてかなえます。性能が中途半端でも、ヒーロー気分を味わうには十分です。むしろ中途半端だから、遊び道具として成立しているとも考えられます。
本当にロケットより速く飛び、銃弾を完全に跳ね返し、悪を滅ぼせるなら、子どもが持つには危険すぎます。未来の玩具としては、少し物足りないくらいがちょうどいいのでしょう。
それでも、使う側が調子に乗れば危ない道具です。のび太とジャイアンの決闘のように、遊びの延長が本気のケンカになってしまいます。ヒーローごっこは楽しいですが、正義を名目に相手を殴るなら、ただの暴力と変わりません。
だからこそ、この道具は強さよりも節度を試す道具に見えます。ふろしきを首に巻いた瞬間から、何を悪と呼ぶのかまで本人に問われてしまいます。




