ピンチランナー

自分がピンチの時、靴を代走させてその場をしのぐことができるひみつ道具がピンチランナーです。モニターとマイクがついているので会話もでき、一応その場にいたことにはなります。

靴が大活躍

遅刻しそうなのび太を見てドラえもんがピンチランナーをのび太の靴に取り付け、靴だけ先に出席させる手段をとります。

走る靴
そこそこのスピードが出るようだ

ドラえもんプラス2巻「ピンチランナー」P161:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

マイクがついているので会話もできて事なきを得たのですが、後日それがバレ、家庭訪問が実施されることになります。言葉たくみにママとドラえもんを家から追い出すことに成功し、先生が帰ろうとしたところ、ママもピンチランナーを使うのでした。

とりあえず存在だけアピール

ピンチランナーで靴だけ走らせることで一応その場にいたことにはなります。モニターとマイクがついているので会話もできますが、のび太のように出席したとは言い難い点もありますね。

どこでもドアを使って移動したほうが早い気もします。靴が移動するにも時間がかかりますし、ピンチランナーだけに頼っていてはいけませんね。

それでもピンチランナーには、妙に人間くさい便利さがあります。遅刻しそうな時に本人の代わりを完全に用意するのではなく、靴だけ先に走らせるという中途半端さが面白いのです。問題を根本から解決するのではなく、とりあえずその場をしのぐ。名前どおり、あくまでもピンチ用の応急処置なのです。

どこでもドアでいいのでは?

靴を走らせて自分が遅れて参加するぐらいならどこでもドアを使って移動したほうが早い気もします。靴が移動するにも時間がかかりますし、ピンチランナーだけに頼っていてはいけませんね。

ただし、ピンチランナーにはどこでもドアにはない「その場に靴という存在が先に行っている」という点が特徴です。本人が遅れて到着しても、すでに靴が存在しているため「ここにいましたよ」という証拠になるわけです。この発想はコピーロボットが自分の代わりに学校に行くのに似ていますが、コピーロボットより手軽で、かつバレやすいという欠点があります。

誰かに邪魔される恐れあり

のび太が調子に乗って靴の存在がバレてしまいました。そりゃそうですよね、靴が勝手に動いていたら目立ちますし、明らかに不自然です。人がたくさんいる場所では使いづらいひみつ道具ともいえます。

靴をつかまえるジャイアン
動体視力のいいジャイアン

ドラえもんプラス2巻「ピンチランナー」P164:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

そりゃそうですよね、靴が勝手に動いていたら目立ちますし、明らかに不自然です。

のび太の卑劣な一面も

ピンチランナーを使い、母ちゃんから逃げ回るジャイアンの居場所を告げ口し、スネ夫に後ろから飛びかかりを食らわせるなどなかなか卑劣な一面を見せるのび太。

スネ夫に飛びかかりするのび太
これはビックリするだろう

ドラえもんプラス2巻「ピンチランナー」P167:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

日頃のお返しとばかりにやりたい放題で、あまり推薦はされませんがこういう使い方もできますね。

ひみつ道具を悪用してしまうのは、ウソ800コピーロボットでも同様です。便利な道具ほど使い手の性格が出てしまうのは、ドラえもんシリーズの奥深いテーマの一つといえるでしょう。

代走できるのは靴だけという制限

ピンチランナーは便利ですが、本人そっくりの分身を作る道具ではありません。走るのはあくまで靴であり、見た目だけでごまかせる場面は限られます。教室の机の下に靴があれば出席しているように見えるかもしれませんが、体育や給食、顔を見て話す場面ではすぐに無理が出ます。

この制限があるからこそ、エピソードは面白くなります。完全な代用品なら便利すぎて話が終わってしまいますが、靴だけが先に行くから不自然さが残り、周囲に怪しまれ、最後にはトラブルが大きくなるのです。ドラえもんの道具は、少し欠点があるほうが物語を動かしやすいのだと感じます。

現代ならオンライン出席に近い?

モニターとマイクで会話できる点を考えると、ピンチランナーは現代のオンライン会議やリモート授業に少し似ています。本人の身体はその場になくても、声や映像で参加できれば、最低限のやり取りは成立します。ただし、ピンチランナーの場合は画面の向こうにいるのが本人ではなく、足元の靴というところが強烈です。

もし現代で使うなら、遅刻しそうな会議に靴だけ送り込むより、スマートフォンで連絡したほうが自然でしょう。それでも「物理的にそこへ向かっている」という証拠を作れる点では独自性があります。出席、順番待ち、場所取りなど、本人が少し遅れて到着するまでのつなぎとしては使い道がありそうです。

のび太らしい小さなずるさ

のび太は大きな悪事を企むタイプではありませんが、目の前の面倒から逃げるためならすぐ道具に頼ります。ピンチランナーは、そんなのび太の弱さと相性が良すぎる道具です。最初は遅刻対策だったはずが、だんだん他人をからかったり、自分に都合よく使ったりしてしまう。そこにいつもの失敗パターンがあります。

ただ、読者が笑ってしまうのは、そのずるさがどこか身近だからでしょう。誰でも一度くらい、面倒な場所に自分の代わりを送りたいと思ったことがあるはずです。ピンチランナーは、その小さな願望を靴という意外な形で実現してしまう、なんともドラえもんらしいひみつ道具です。

家庭訪問との相性が悪すぎる

ピンチランナーの嘘がバレた後、家庭訪問へつながる流れもよくできています。出席をごまかすための道具だったはずが、先生に疑われ、家の中の問題まで広がっていく。小さなごまかしが大きな騒動を呼ぶのは、のび太の典型的な失敗パターンです。

しかも家庭訪問では、本人の態度だけでなく家族との関係も見られます。靴だけを走らせてどうにかなる問題ではありません。ピンチランナーは「その場にいるふり」はできますが、「きちんと生活しているふり」まではできないのです。そこに、この道具の限界がはっきり出ています。

本当に役立つ使い方を考える

悪用するとすぐバレそうなピンチランナーですが、正しく使えば役立つ場面もあります。忘れ物を届ける、先に順番を取る、危険な場所に入る前に様子を確認するなど、靴だけで済む用事ならかなり便利です。モニターとマイクがあるので、遠隔操作ロボットの簡易版としても使えます。

ただし、靴を他人に捕まえられたら終わりです。ジャイアンのように反射神経のいい相手がいる場所では危険ですし、道路を走らせれば車にひかれる可能性もあります。ピンチを救う道具でありながら、使い方を間違えると新しいピンチを作る。そこがこの道具の面白いところです。

本人不在をごまかす難しさ

ピンチランナーは、出席や参加の意味を考えさせる道具でもあります。靴がそこにあって声が聞こえれば、形式上は参加しているように見えるかもしれません。しかし、先生の話を聞き、友達と顔を合わせ、その場の空気を感じることまではできません。本人がいないという事実は、どこかで必ず無理として表れます。

これは現代のリモート参加にも少し通じます。画面越しに話すことはできても、現地でしか分からないこともあります。ピンチランナーはその極端な例で、便利だけれど完全な代わりにはならない道具です。だからこそ、のび太のごまかしは長続きしません。

結局のところ、ピンチランナーは時間を稼ぐための道具です。遅刻をなかったことにするのではなく、本人が到着するまでの数分をしのぐものとして使うのが正しいのでしょう。ピンチを抜ける助けにはなっても、日頃のだらしなさまで解決してくれるわけではありません。

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