シャラガム

シャラガムを食べると何がなんでも決めたことをやり通す行動力が身につきます。宿題も勉強もやる気が出ない時、このガムを噛むだけで鋼の意志が備わるという夢のようなひみつ道具です。のび太のように何かを始めてもすぐに挫折してしまう人にとっては特に魅力的な道具に見えますが、その真相には驚くべき秘密が隠されています。

のび太の決心、岩をも通す

集中力がなく宿題1つやり通すことができないのび太はドラえもんからシャラガムをもらい、やる気を貫き通すのび太に生まれ変わります。

宿題をやる決心をするのび太
年に数回、発作的に決心する

ドラえもんプラス3巻「シャラガム」P168:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

しずかちゃんとの遊びの誘いを断り、果敢にジャイアンに立ち向かい、勉強のためなら他を捨ててまで行動し続けるのび太。その姿は普段の面影がなく、まるで別人のようです。シャラガムの効果が本物であれば、のび太の人生はこのガム1つで大きく変わりそうです。

でも実はこれ、ドラえもんが普通のガムをのび太に渡しただけで、のび太自身の決心と行動力で宿題をやり遂げることができたのでした。この結末は、ひみつ道具の力ではなく人間の意志の強さを称える、ドラえもんらしくない(しかし深い)教訓を含んでいます。

シャラガム
自らの意志で動いたのだ

ドラえもんプラス3巻「シャラガム」P175:小学館てんとう虫コミックス藤子F不二雄

シャラガムは存在するのか?

シャラガムを食べると心に誓ったことを必ずやり遂げる絶対的な行動力が備わります。ところがドラえもんがのび太に渡していたのは普通のガムであることが最後に判明します。

果たしてシャラガムというひみつ道具は本当に存在するのか?それともドラえもんが巧みにすり替えて普通のガムを渡しただけなのか?真相は不明です。

プラス3巻の話とコミック43巻のけっしんコンクリートは、のび太が冒頭から宿題に目覚めるという設定が共通しており、似たような効果を持つひみつ道具が重複しています。これは1本をコミック43巻に採用し、シャラガムをプラス3巻でまとめたものと思われます。アンキパンが勉強の成果を食べ物から直接得る道具なのに対し、シャラガムは勉強する意欲そのものを底上げするという点で、根本的なアプローチが異なります。

けっしんコンクリートの亜種

似たようなひみつ道具にけっしんコンクリートがあります。

のび太が冒頭から宿題に目覚めたシーンからストーリー展開がそっくりで、似たような効果を持つひみつ道具が重複していることから1本をコミック43巻に採用し、シャラガムをプラス3巻でまとめたものと思われます。どちらも宿題や目標に対する意志の強さを与えるという意味で同じカテゴリーの道具ですが、コンクリートとガムという素材の違いが面白い対比になっています。

たくさんあるよ、ガムシリーズ

ガムにまつわるひみつ道具はこれまでたくさん登場しました。その一例をあげると、

身近にあるものがひみつ道具に置き換わっていると考えるとよりリアルにイメージをふくらませることができますね。ガムという形状は手軽に持ち運べて誰でも使いやすいという点で、ひみつ道具のパッケージとして優れています。

ウソ800のように飲むタイプの道具も多い中で、噛むという行為を通じて効果が発揮されるガム系道具には独特のテンポがあります。意欲や行動力を変えるという心理的な効果を食べ物に凝縮した発想は、藤子先生の観察眼の鋭さを感じさせます。

シャラガムを手にしたのび太が、本当は自分の意志で宿題を完遂したというオチは、道具の力より人間の意志の方が強いというメッセージが込められているようでもあります。ドラえもんのひみつ道具の中で、これほど深い教訓を秘めたものは珍しく、シャラガムはその意味で特別な位置づけにある道具です。自分を信じることで乗り越えられる壁があるということを、笑いを交えながら伝えるのがドラえもんらしいやり方です。

やる気の仕組みを考える

シャラガムのエピソードを読んでいると、のび太のやる気スイッチがいかに入りにくいかがよくわかります。普段はどんなに周りが促しても動かないのび太が、シャラガムを信じた途端に驚くほどの行動力を発揮するのです。

これはプラシーボ効果(偽薬効果)と呼ばれる現象に近いものがあります。薬だと信じて飲むと実際に効果が現れるように、ひみつ道具だと信じることで本来持っていた力を引き出せるということです。のび太のポテンシャルは実はとても高く、それを引き出す何かがあれば驚くほどの成果を出せるということをドラえもんは知っていたのかもしれません。

ドラえもんがわざと普通のガムを渡したのか、シャラガム自体が存在するのに普通のガムと入れ替えたのかは不明ですが、いずれにしてもドラえもんのねらいはのび太自身の意志の力を試すことにあったのかもしれません。

宿題をやるロボットのように機械が代わりにやってくれる道具とは真逆の方向性で、シャラガムはあくまでも自分がやることを前提にしています。外部の力に頼るのではなく自分の内側の力を引き出すという意味で、シャラガムはドラえもんのひみつ道具の中でも最も人間的な道具のひとつだといえるかもしれません。

のび太がシャラガムを信じた途端に変わったように、信じる力の強さはどんなひみつ道具にも劣りません。これは道具の話を超えて、自己効力感という心理学的な概念にも通じます。自分はできると信じることで、実際にできるようになるという現象は、スポーツ選手や学者の研究でも証明されています。シャラガムはその効果を道具という形で具現化したものとも見ることができます。ドラえもんがなぜわざわざ普通のガムを渡したのか、その真意はのび太への深い信頼と期待の表れだったのかもしれません。

のび太のエピソードを通じて考えると、人間には本来乗り越えられる力が備わっているということが伝わってきます。問題はその力をどう引き出すかという点であり、シャラガムはその引き金を提供する役割を果たしています。ドラえもんのひみつ道具の多くは、使う人間の弱さや怠惰さをカバーするものですが、シャラガムだけは使う人間自身の可能性を信じさせるという真逆のアプローチをとっています。道具に頼ることを超えた先に人間の本当の成長があるということを、このエピソードは優しく示してくれています。

ガムシリーズは食べるという行為を通じて効果が発揮されるという共通点があります。口に入れるものへの信頼や期待感が、ひみつ道具の効果を引き出す上で重要な要素になっているのかもしれません。シャラガムがその典型で、本当は普通のガムであっても、シャラガムだという確信が本物の効果を生み出しました。これはまさに人間の信念の力を示す最良の例といえます。

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